第338話 鉱山の岩炎竜

 採掘を終えたところで、今度は探索に移る。


『行き止まり……いっぱい……』

「ここ以外にも?」

『うん……』

「じゃあ、ここら辺の行き止まりを調べていこう。何かあるかもしれないし」

『うん……』


 いくつもあるような最奥から調べて行く事に決めた。こういう坑道なら、一番奥の部分が怪しいからね。後は、広い空間とかも怪しいから、そこら辺も調べていかないと。

 そうして、別の行き止まりへと着いた。


『ここは……さっきと……採れる石が……違うみたい……』

「採掘ポイントごとに採れるものが違うって事ね。それって、ソイルも同じなの?」

『ううん……私なら……どこでも……』


 採りにくい採りやすいはあっても、ソイルには関係ないみたい。プレイヤーが採掘するときは運任せになるのかな。そう考えると、レア鉱石を採り放題なソイルはズルいと言えるかもしれない。

 そこからいくつか最奥に行き、色々と調べていくけど、特に何も発見は出来なかった。崩落している場所がいくつもあって、ソイルに退かして貰って奥を調べたけど、それでも採掘ポイントがあるだけで、特に何かがあるわけじゃなかった。

 そう思ってしまうのは、私がソイルと一緒にいるからで、普通のプレイヤーは採掘ポイントごとに喜んでいるとは思うけど。


「基本的に採掘できるものが異なるってだけっぽいね」

『そうみたい……』

「それじゃあ、坑道の出入口は分かる?」

『十一箇所……あるよ……』

「十一? 微妙な数だね」

『北に十……南に一……』

「じゃあ、南かな。そっちがボスエリアだろうし」


 南に一つだけしか出入口がないというのなら、それがボスエリアであることは明白。マッピングは済んでいないから、一応ボスエリアへの道までは開通しておきたい。蝙蝠達が頑張っているから、マッピングが済むのも時間の問題ではあるけどね。

 ソイルと一緒に南にある出入口に向かうと、やっぱりボスエリアへの転移場所があった。道中、採掘を頑張っているプレイヤーが結構いた。生産職の人もいるみたいで、護衛っぽいプレイヤーと一緒にいるプレイヤーもいた。


「まぁ、ここは生産職にとって重要な場所だし、護衛を雇ってでも来る人はいるか。マッピングの方は……ほとんど終わってる。このままボスエリアを覗いちゃおうか」


 蝙蝠達の働きでマッピングは八割方終わっている。後は、外を飛び回って、ソイルとエアリーで坑道内を把握して、怪しい場所を調べていけば終わりだ。その前にボスを倒してしまうのも有りだ。先に道を確保しておけば、後々が楽になるしね。

 ソイルと一緒にボスエリアへと転移した。ボスエリアは広い空間で、かなり熱い。周囲の壁や地面の一部が赤熱しているからだと、すぐに分かる。まぁ、【熾天使】を持っているから、特にダメージとかにはならないのだけど。

 そんな場所の中央で岩の鱗と赤熱した身体を持つ鉱山の岩炎竜がいた。ここで火精霊がいれば、喚び出しているのだけど、今は仲間にいない。


「【召喚・レイン】」


 取り敢えず、火とは真逆の属性であるレインを喚び出す。


『暑い……』

「あ、ごめん。大丈夫?」

『大丈夫。全部冷やして良い?』

「うん。大丈夫だよ」


 私が許可すると、レインが水を大量に出す。その水が広がっていき、周囲の赤熱した地面が冷えていく。それを感じたのか岩炎竜が起き上がった。


「レインは、ソイルを守ってあげて。ソイルは出来るだけ拘束をお願い」

『任せて!』

『うん……!』


 こちらに向かってくる岩炎竜の顎を下から突き出てきた岩が打ち上げる。そこで動きが止まったところで、さらに地面が割れて、岩炎竜の足を飲み込んで拘束した。そこに突っ込んで背中に飛び乗る。身体が赤熱しているから、普通は炎上ダメージを受けるのだと思うけど、【熾天使】のおかげでダメージは一切ない。そのまま吸血すると、血液にしてはかなり熱いものが入ってきた。マグマでも流れているのかな。まぁ、ダメージにはならないから、構わず飲み続ける。ついでに、岩炎竜が纏っている熱を【支配(火)】で奪っていく。

 すると、岩炎竜が急速に弱り始めた。岩炎竜は、この熱がなくなると弱っていくって設定みたいだ。さらに、ソイルが拘束を強めていき、レインが周囲の熱も冷ましていったので、岩炎竜は動けなくなり、そのままHPがなくなった。【岩炎息吹】のスキルを手に入れた。


「ふぅ……取り敢えず、クリアっと。これなら、私一人でも倒せそうかな。二人とも無事?」

『うん。大丈夫』

『私も……』

「それじゃあ、まだ時間あるし、エアリーも喚んで探索をしていこうか」

『うん!』

『うん……!』


 二人とも元気に返事をするので、エアリーも喚んで探索をしていった。怪しいと思われる広い空間を中心に調べていったけど、特に怪しい場所はなかった。後は、まだ行っていない行き止まり部分だけだけど、それは夜に回す。

 皆をギルドエリアに帰してから、その場でログアウトし、夕食とお風呂などを終わらせて、再びログインする。そして、再びソイルとエアリーを喚び出す。


「さてと、坑道のマッピングは終わった事だし、怪しい行き止まりを全部調べようか。二人ともよろしくね」

『はい。お任せください』

『うん……!』


 最奥の行き止まりは全て行っているので、浅い部分の行き止まりを調べ回る。すると、その内の一箇所で、ソイルが止まって壁を触り始めた。


「どうしたの? 下にあったのみたいな部屋?」

『ううん……何か……通路……? 下に……伸びてる……』

『風が通る道はありませんので、通常の通路ではないかと』

「なるほど。じゃあ、入口が、ここじゃないって可能性が高いわけだ」

『はい』

『うん……向こう側に伸びてる』


 壁の奥の方に向かって縦に走る通路が伸びているらしい。今いる位置を山全体で考えてみると、東側の端の方になる。そして、深さは地上よりも少し下くらいってところかな。


「それじゃあ、外からなら入口があるかな。無理矢理入る事は出来そう?」

『う~ん……何か無理……土が……固定……されてる……?』

「近道は出来ないって事ね。気になるし、その通路のところに行こうか」


 一度坑道の外に出て、山の外側を回ってさっき見つけた通路に近づく。


「ここら辺?」

『うん……あの山の……斜面……』

『風の通り道はありませんので、完全に塞がっているものかと』

「なるほどね……ソイル、正確な場所を教えてくれる?」

『うん……!』


 ソイルの案内に従って行くと、木が生い茂っている山の斜面で止まった。斜面は草が生い茂っているので、何があるか分からない。


『ん? かなり少しですが、風が通っています。ちょうど、ソイルがいる辺りです』

「近づかないと分からないくらい微弱って事?」

『はい』

「なるほどね」


 ソイルがいる場所に一歩踏み出すと、急に足元が抜けた。


「へっ?」


 普通に【浮遊】を使えば浮けるけど、元々通路に入る事が目的だったので、このまま落ちる事にした。正直、こんな垂直な方向だとは思わなかったけど。上を見てみると、ソイルとエアリーも降りてきていた。迷わず追い掛けてくれるとは嬉しいけど、自分達がスカートだという事を、もっと意識して欲しい。まぁ、下着は見えないのだけど。

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