第333話 湖畔エリアの探索と【熾天使】
湖畔エリアの地上に降りた私は、エレクを召喚する。湖畔エリアは、森と湖と平原に分かれている。少し隆起している場所もあるけど、丘的な高さで坂も急じゃない。森も木々の間をエレクが駆け抜けられるくらいの密度しかないので、久しぶりにエレクを走らせてあげられる。
『ブルルッ!』
エレクが頭を私に押し付けてくる。
「どうしたの? 久しぶりに一緒に走れるから嬉しいの?」
『ブルル』
「そっか。私もエレクの背中に乗るのは楽しいから嬉しいよ」
エレクの首とか満遍なく撫でてあげる。ただ、撫ですぎてエレクに早く乗れと膝蹴りを受けた。エレクに謝りつつ、背中に乗る。
「さてと、適当に走って良いよ。速度は、抑えめでね」
『ヒヒーン!』
エレクが走り出す。最初は平原を走っていく。ここには、丘とかもあるので、エレクに負担が掛からないか心配だったけど、全く気にせずに走っている。ただスチールレイブンが襲ってきて面倒だったので、スノウも召喚した。
『ガァ!!』
スノウは器用に空を飛びながら撫でて要求をしてくるので、エレクの上から思いっきり撫で回してあげる。その途中でスチールレイブンが襲ってきたので、スノウはぶち切れてスチールレイブンを蹂躙しに行った。スチールレイブンが絶滅しないか心配になるくらいには、積極的に襲っている。おかげで、上からの襲撃はなくなったけど。
草原を気持ち良く走りながら、何か無いか調べて行く。こういうときの【心眼開放】は本当に助かる。エレクの速度でも見逃しがなくなるからね。
取り敢えず、平原にはダンジョンなどもなく、ただただ広い平原という感じだった。多分、ここはスチールレイブンとの戦闘をする場所という感じなのだと思う。そうじゃないと、私みたいな空を飛べるプレイヤーじゃないと狩りが出来ないだろうから。今はスノウが蹴散らしてくれているけど、さっきまでスチールレイブンがどんどん襲ってくるような感じだったし。
そこから、森の中に移動する。エレクは、森の中でも同じ速度で走り続けた。エレクにとっては、これくらいの隙間なんでもないみたい。
「湖畔の方が涼しいね」
『ブルル』
森の中も特に気になるものはない。やっぱり湖畔エリアという名称になっている分、湖が本番みたいだ。あの湖も、まだ全部調べられていないから、レインと一緒に調べないといけないかな。
それからエレクの走る速度で湖畔エリアを探索していったけど、特に何か変わったものがあるという事はなかった。ただ単にエレクと一緒に湖畔を走り回っただけになってしまったけど、一応ボスエリアの場所は発見したので、そこだけは収穫になるかな。
因みに、スノウが空で暴れ回ったため、大量のスチールレイブンの素材が手に入っていた。これはアカリへのお土産になった。
その日の夜。【熾天使】になった事を報告しに、闇霧の始祖の元に向かった。闇霧の始祖の部屋に来た時、闇霧の始祖は眉を寄せながら、こっちを見ていた。
『お前……何かが変わったようだな。別人かと思ったぞ』
「見て分かるの?」
『いや、この城に来た時から分かったぞ。光の因子が強すぎる。これまでとは比べものにならない程な。何があった?』
「天聖竜を倒して、天使の権限を手に入れたら、【熾天使】になった」
『ほう』
闇霧の始祖は、面白いもの見つけたみたいな表情でこっちを見てきた。
『それなら納得だな。身体に変調は?』
「特にないよ」
『光の因子の方が遙かに強くなっている筈だが、【魔聖融合】が働いているという事だな。翼にも変化があったはずだ』
「うん」
【熾天使翼】を広げる。三対の赤っぽい羽を見た闇霧の始祖は、興味深そうに私の周りをくるくると回っていった。
『ふむ。その状態で、他の翼は出せるか?』
「無理。これでいっぱいみたい」
『そうか。お前は、そのうち堕天するかもしれないな』
「堕天? 闇の因子も濃いから?」
『ああ。問題は、【熾天使】と同列の悪魔になる必要があるというところだな。【熾天使】は、最高位の天使だ。堕天するには、それと同等の悪魔の力があってこそだ。まぁ、俺も詳しくは知らないけどな』
十分詳しいと思うけど、闇霧の始祖からしたら、まだ足りないらしい。
「堕天は悪い事?」
『どうだろうな。天使からしたら、よくは思わんだろうさ。だが、悪魔からすれば、歓迎だろうな』
「ふ~ん……まぁ、その時になったら考えてみる」
『考える余裕があると良いな。他に【熾天使】に関する情報はあるか?』
「【神炎】ってスキルが手に入ったのと【熾火】ってスキルが手に入って、【無限火】になって、【支配(火)】になったかな。後、光と神聖と火に完全な耐性が付いたって」
全部説明すると、闇霧の始祖が呆れたような表情をしながらこっちを見てくる。
『キメラよりキメラだな。人型のキメラを作ったとしても、お前のようにはいかないぞ』
「まぁ、色々と混じってるしね。でも、堕天する人がいるなら、私みたいなのはいたんじゃないの?」
『人が天使になって堕天するならな。基本的に、天使が悪魔になるものだ。お前みたいなのは、あまり聞かん。一つ言っておくと、お前は現状天使という側面が強くなっている。吸血鬼と並ぶくらいにな』
「ん? 天使の方が強くないの?」
【熾天使】は最高位の天使のはず。だから、天使としての側面が一番大きくなっているのだと思っていた。でも、闇霧の始祖が言うには、吸血鬼と同等らしい。
『お前は、根源を手に入れた。血の根源は、吸血鬼としての側面を強めるものだ。二つ名を持っていないだけで、お前は十分に最高位の吸血鬼になっている』
「そうなんだ」
吸血鬼と言えば、始祖が一番上みたいな感じではあるし、最高位である事は間違いないのかも。ただ、吸血鬼は地道に成長していった。何で、天使の方は一気に成長したのだろう。
「急に最高位になったけど、これって何かあるの?」
『恐らく、試練の内容が原因だろうな。お前がどうやって天聖竜を倒したのかがキーになっているんだろう』
「なるほど。だから、試練って言っても、天聖竜を倒すだけとは限らないのか」
『そういう事だ。また何かあれば来い。俺が分かる範囲なら教えてやる。その方が面白いからな』
「取り敢えず、【熾天使】になっても、何かに大きな影響があるわけじゃないんだね」
『影響があるとすれば、お前の身体が真っ先に反応するだろう』
何かあれば、自分で分かるって事かな。確かに、光の因子を手に入れた時はダメージとして現れていた。それを考えると、私の方が真っ先に気付くのは当たり前か。
今日は、天聖竜を倒し【熾天使】に進化したのと湖畔エリアの地上部分の探索が終わった事と闇霧の始祖から有益な情報を手に入れる事が出来た。来週は、平日にバイトと土曜日にデートがある。ちょっと楽しみだ。
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