第251話 アカリとの時間

 荒れ地の半分を探索した私は、一旦ログアウトして、夕飯などを済ませてから、再びログインする。現れるモンスターを倒し、走り回りながら探索を進めていくと、壁に大きな穴が空いているのを見つけた。その中にモンスターの気配はない。


「ダンジョンでもないみたい。奥に灯りが見えるし……このエリアの街かな?」


 ここで調べないという選択肢はない。警戒しながら中に入っていくと、予想通り大きな街に出た。これまでの街よりも規模が違い、かなり大きい。ファーストタウンが五つくらい入りそうだ。エリアの五分の一を占めている。


「うわぁ……ここの探索は時間掛かりそう……天井はくり抜かれてるんだ。建築は、くり抜きじゃなくて、普通に建てられたもの……いや、あの一番でかい建物は地面と同じ素材で出来ていそう。新しく建てられたものが、別の素材で出来ている感じかな」


 ここを調べるのは、後日に回す事にする。この街は、アークサンクチュアリという名前だった。何だか神聖な何かがありそうな名前だ。取り敢えずは、転移出来るようにはしておく。

 そして、荒れ地の探索を再開した。一箇所だけアークサンクチュアリに着く洞窟とは違う洞窟を見つけた。そこは、『死霊術士の墓場』というダンジョンの入口だった。それは、また今度行く事にする。

 ボスエリアへの転移場所も見つける事が出来たので、ボスに挑む事も出来る。今日は、ここまでにしてログアウトして寝る。

 翌日。街の探索をする前に、ギルドエリアで家畜の世話をしていた。そこに、アカリがやってくる。


「おはよう、ハクちゃん」

「おはよう、アカリ」

「ハクちゃんは、アイテムボックス開けた?」


 アカリが訊いているのは、この前のイベントの優勝賞品の話だ。


「ううん。まだ。すぐに開けても良いけど、今回はちょっと寝かせてみようかなって」

「乱数調整的な?」

「そういう事。私が開けると、血瓶が出る確率が高いしね。ちょっと困った時とかに開けようかなって思ってる。普通の方は、すぐに開けても良いと思うけど、何となくレアの方と同じ時に開けようかなって思ってる」


 また血瓶が出て来てくれたら嬉しいけど、それが精霊女王の血瓶みたいに、既に飲んでいる血瓶が出る可能性もあるから、すぐに開けるのは止めようと考えていた。これから先、ちょっと躓く何かがあったら、開けてみるつもりだ。装備の強化や新しい装備で解決する事もあるかもだし。


「アカリは、今、どこを攻略してるの?」


 話題を変えて、アカリに訊いてみた。


「新しい砂漠エリアだね。ある程度戦えるけど、レアモンスターが強かったよ」

「へぇ~、レアモンスターに会えたんだ。私は、見つけられなかった。まぁ、レアモンスター自体、見つけられない事の方が多いけど」

「あの砂漠のボスって、あのサンドワームでしょ? 正直、まだ勝てる気がしないよ……」

「勝てるでしょ。アカリの作っているアイテムって、結構な威力があるし」


 アカリの爆薬も結構使えるし、状態異常に出来る薬とかもあるみたいだから、サンドワーム相手でも割と戦えると思う。


「ここら辺からボスが強くなるから気を付けないとね」

「いや、雨男ら辺から強かったけど……」

「まぁ、そうか。私もスノウをテイムした時に、雪原の氷炎竜と戦っていたら、何度か負けていただろうし」


 スノウとしてテイム出来たから、ボスとして戦わずに済んでいたけど、実際に戦うとなれば、羽を持っていなかったあの時では、かなり苦戦したと思う。


「本当に強かったよ。空飛ぶし、ブレスはヤバいし」

「でも、【空力】か【空歩】は持ってるでしょ? アカリのスキルと装備なら収得出来るだろうし」


 羽はなくても、【空力】や【空歩】なら、ギリギリ対応出来なくはないと思う。本当にギリギリだけど。私みたいに、脚力が異常強いとかなら、もっと対応出来ると思うけど。


「一応あるけど、MP管理がね。ハクちゃんみたいに空を飛べたらなぁ」

「現状、羽を手に入れるには、【吸血】で鳥とかから翼系スキルを手に入れるとかかな。後は、冥界の炎と守護天使の羽根の羽根だけど、そもそもどこで手に入れるのか分からないしね」


 私が持つ翼系スキルは、そういう風に手に入れたので、他の入手方法は分からない。もう一人持っている人はいるけど、それは運良く冥界の炎があの現場に残っていたから手に入れる事が出来たって事だから、収得方法は私とそう変わらない。


「それに、空を自由に飛ぶにも【飛翔】のスキルが必要だから。そうじゃないと、MP消費で空を飛ぶのは変わらないし」


 【飛翔】があるから、私は空を自由に動ける。だから、翼系スキルを取っても、【空力】と【空歩】そして【浮遊】とそう変わらない。結局MP管理が重要になってくる。


「そういえば、そうだったね。後は、MPを伸ばすしかないかぁ。何か良い方法があれば良いんだけど」

「そこは分からないなぁ。確かに、MP関連は結構難しいよね。別に魔法を使うわけじゃないから、魔法系スキルを育てられるわけじゃないし、そもそも装備出来ないし」


 MPが重要になってくるのは、魔法職だ。だから、魔法系スキルの中に、MPに関するスキルが多い。それを考えると、MPを重視するなら、魔法系スキルを取って育てないといけない。でも、現在の私の戦闘スタイルでは、魔法系スキルを一緒に装備する事は厳しい。


「それはハクちゃんだからじゃない?」

「……そういえば、物理系の人達は、割と空いてるんだっけ。良いなぁ。武装系スキルで圧迫されるし。これから光と闇の武装系スキルが手に入ったら、もうヤバいよ」


 これまで五属性の武装系スキルを手に入れたけど、まだ二種類の属性が残っている。それが、光と闇だ。他にも種類はあるけど、最低でもこの二つは、まだ残っているとみている。


「それまでに、スキルが統合出来ると良いね」

「本当にね。他にも色々と装備したいスキルがいっぱいだし」

「私としては、早くプリセット登録出来るようにして欲しいよ。生産用と戦闘用で分けるのが大変だし」


 アカリの場合、生産系スキルと戦闘系スキルで装備を入れ替える必要があるから、余計に欲しいと思っているらしい。私も、色々なプリセットを作って、状況に合ったスキル構成で戦いたいとかはある。


「こればかりは、運営の反応を待つしかないでしょ」


 運営に要望を出している人はいると思うので、運営が整えてくれるのを待つだけしか出来ない。次のアップデートで来てくれたら、結構嬉しい。


「まぁ、そうだね。早く来てくれると良いなぁ」


 アカリは、本当に楽しみにしていた。ただ、実際にアップデートで追加されるかなんて事は分からないけど。そもそも次のアップデート予定すら出ていないし。次のアップデート予定が、早く発表される事を祈るばかりだ。

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