第82話 霊峰の支配竜の最期
霊峰の支配竜の全体攻撃が止んだ。それと同時に、霊峰の支配竜のHPも全て削れ、身体がポリゴンに変わって砕け散った。霊峰の支配竜と私の勝負は、私の勝ちだ。
「あ痛っ……!」
さっきまでしがみついていたものが無くなったので、地面に真っ逆さまに落ち、顔面で着地する事になった。
「痛つつ……【夜霧】が間に合う時間で良かった」
攻撃を無効化出来る【夜霧】を発動出来る時間になっていたので、最後の攻撃も避ける事が出来た。皆のHPゲージも残っているので、皆、生きている。攻撃を防いでいたトモエさんは瀕死の状態だったけど。
「ハクちゃん!」
戦闘が終わったという事もあって、アク姉が駆け寄ってきた。
「大丈夫!? 怪我は!?」
「大丈夫だよ。HPも減ってないでしょ。あの攻撃は無効化したから」
「はぁ……良かったぁ……」
アク姉は安堵しながら、私を抱きしめてきた。おかげで、勝利した後に出て来たウィンドウが見えない。
「アク姉、ドロップとかの確認は?」
「あっ、忘れてた」
霊峰の支配竜が倒れて、すぐにウィンドウも即消しして来たみたい。アク姉に放して貰って、ログの確認をする。
「えっと……」
『霊峰レイドボス『霊峰の支配竜』を討伐しました。称号として【霊峰の恩恵を賜りし者】を獲得しました。レイド参加報酬、MVP報酬、ラストアタックボーナス報酬を獲得』
『【吸血鬼】により、霊峰の支配竜から【竜血】のスキルを獲得』
吸血で半分近くHPを削ったからか、私がMVPに選抜された。ドロップアイテムは、霊峰竜鱗×60、霊峰竜の角、霊峰竜の爪×4、霊峰竜の心臓、霊峰竜の目、霊峰竜の核。この内、霊峰竜の心臓と霊峰竜の核が、MVP報酬とラスアタボーナスだった。
ついでに、【竜血】の確認もする。
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【竜血】:竜の血液が、身体に混じる。身体能力が上昇する。
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何か凄い。私の血液の中に竜の血が混じっているらしい。竜には、特別な血が流れていたという事だと思う。私の身体を内側から焼いたのは、この【竜血】だろう。聖属性かもって思っていたけど、感覚的には、エルフのものとは違った。
荒々しい竜の血液が、身体に合わなかったから、ダメージを受けていたって考えると、それっぽい。
「中々に良い素材みたいだな。ハク、無事か?」
「うん。大丈夫」
フレ姉が近づいて来て、頭を撫でてくる。直後に、アカリが飛びついてきた。
「無事で良かったぁ!」
「吸血出来たら、そう簡単には死なないよ」
「吸血もあるだろうけど、他にも何かありそうね」
ゲルダさんにそう言われて、私は一つ思い出した事があった。
「あっ、これもありますね」
私は、霊峰のブレスレットをゲルダさんに見せる。これには、【闇属性耐性+】と【火属性耐性+】が付いている。この内、【火属性耐性+】が効果を発揮してくれたのだと考えられる。
「なるほど。確かに、あれは火属性の攻撃みたいだったもんね。ハクちゃんのブレスレットは、【火属性耐性+】が付いているから、ダメージも少なかったんだね」
「そういう事。これのおかげで、炎によるダメージが、大幅に減って助かったのかもしれないです」
「そういう事ね。直前に、そんな装備を手に入れるなんて、運が良かったわね」
「はい」
ゲルダさんは、私とアカリの頭を撫でてからフレ姉の方に向かう。
「何か変わったところはある?」
「奴が最初にいた場所の奥に通路が出来上がっているな。それ以外に変化はねぇ」
「トモエ。あなたはどんな感じかしら?」
「問題ありません。メイティのおかげで、HPも完全に回復しましたので」
「それなら、先に行きましょう。フレイ、先頭を歩いて。ハクは、私とアカリの傍にいなさい」
「は~い」
フレ姉を先頭にして、先に進んで行く。私がアカリとゲルダさんの傍に配置されたのは、私の安全確保のためだと思う。過保護なのは、アク姉達と変わらない。
通路を進んで行くと、少し広めの空間に出た。その空間には、一つの宝箱が置いてあった。その宝箱は、人二人分くらいの大きさがある。
「また宝箱か。下り階段だったりしねぇよな」
「ここに来て、連続でボス戦になるとしたら、強気の設定過ぎると思うわ。大丈夫よ」
「それもそうか。ハク、開けるか?」
「ううん。今回は、アク姉達で良いよ」
「だとさ。アクア」
「オッケー」
アク姉が宝箱に手を掛ける。そして、一気に蓋を開けた。
「おぉ……」
アク姉が声を出すので、アク姉の横から覗きこむ。そこに入っていたのは、フレ姉、アク姉、アメスさん、サツキさん、メイティさん、カティさん、アカリの武器が一つずつとトモエさんの盾、そして、血の瓶と丸いものが入った瓶が一つずつだった。
アク姉が、それぞれに渡していく。私も血の瓶を受け取る。丸いものが入った瓶は、ゲルダさんが受け取った。消去法で、ゲルダさんのものとしか考えられないしね。
「ハクちゃん」
「分かってるよ」
アカリから釘を刺された。まぁ、あんなに苦しんだのだから、刺されるのも無理は無い。
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???の血瓶:保存状態の良い血が入った瓶。何の血かは不明。
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またもや何の血か分からない。でも、私にとって得にはなるはずだ。安地に戻ったら飲んでみよう。それなら怒られない。
「ゲルダさんのそれ何ですか?」
一番気になっていた事を訊く。ただただ丸いものだから、何か予想も付かない。
「???の丸薬ね」
「私と同じで、???何ですね。経験値が多く入ったので、ゲルダさんも何かしらのレベルが上がると思いますよ」
「ええ。これを飲めばね……」
ゲルダさんの丸薬は、ピンポン球くらいの大きさがある。これを飲めと言われたら、私でも嫌だと答えたくなるだろう。
「アカリはどう?」
「今回は細剣だけど、今の装備より、ちょっと良いくらいかな。追加効果に【霊峰竜の一撃】ってのあってね。あの羽が固まったやつあったでしょ? あれが、出来るみたい」
「ああ、なるほどね。私の硬質化に似ているやつって事?」
「どうだろう? どちらかと言うと、硬質化したものを飛ばす方だと思うよ」
「まぁ、範囲攻撃が出来るのは便利かもね」
喉から手が出る程欲しいとは言わないけど、あったら便利だなとは思った。
「アク姉のも?」
「うん。私の杖にも【霊峰竜の一撃】があるよ。私は、あまり使わないかな。魔法攻撃力のサポートに関しては、いつものやつの方が上だから」
「ふ~ん、後衛からすると、あまりな感じなんだね」
確かに、魔法を使う側にとっては、そこまで有用な追加効果ではないのかもしれない。普通に遠距離攻撃を主として使うから。
「一番使いにくいのは、サツキかもしれねぇな。大剣で使うには、振りが遅いだろう」
「確かに、あまり使えないかもしれませんね」
フレ姉の分析に、サツキさんは頷いた。一番使い勝手の良いのは、片手剣かもしれない。
「さてと、そろそろ戻るか。そこの魔法陣から、どこかしらに転移出来るだろう」
フレ姉はそう言って、部屋の片隅を指さした。そこには、さっきまでなかった魔法陣があった。宝箱を開けた事で出て来た脱出用の魔法陣ってところだと思う。
「よし。取り敢えず、私から行く。安全を確保してから、ゲルダにメッセージを送る」
「分かったわ」
フレ姉は、先に一人で魔法陣に乗った。すぐに、姿が消えて転移する。そして、一分もせずに、ゲルダさんのところにメッセージ飛んできた。
「大丈夫そうよ。順々に行きなさい」
私達は一人一人、魔法陣を踏む。どんどんと転移をしていった。皆での洞窟探索も、一段落かな。
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