第4話 初戦闘と検証
森の中では、戦闘音が響き渡っている。初心者達が狩りをしているってところかな。平原に人が全くいなかったのは、あそこが狩りとしては不十分な成果しか得られないからだと思う。実際、そこで何度か剣を振って、吸血もしてきたけど、スキルは、そこまで育っていない。
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ハク:【剣Lv2】【吸血Lv2】
控え:なし
SP:0
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たったの1レベル上がったくらいだ。それだけ得られる経験値が低いという事が分かる。
「強敵と戦えば戦う程、経験値が貰えるって感じかな」
スキルに関しては、少し調べたけど、他の情報はなるべく調べないようにしていた。自分で探りながらやるのもゲームの醍醐味だからね。
森を見回しながら歩いていると、林檎みたいな赤い実が成っているのを見つける。
「口直しになるかな」
ちょっと高いところになるので、木を登って実をもぎ取り、そのまま齧り付く。甘酸っぱい味と芳醇な香りが口の中に広がって、鼻を抜ける。
「ただの木の実が、ものすごく美味しく感じる……」
この木の実は、
私は、上から飛び降りて、ワイルドボアの首に剣を刺す。急所への一撃だと思ったけど、ワイルドボアのHPを削り切る事は出来なかった。この事から、急所を外している事が分かる。攻撃の正確性も問題だ。
ワイルドボアは、私の攻撃を受けた事で、暴れ始める。
「おぉ、ロデオみたい」
倒しきれなかったのは、ちょっと不本意だったけど、今は、これが有り難かったりもする。
「それじゃあ、いただきます」
ワイルドボアに乗りながら、その身体に噛み付く。
ホワイトラビットの味と匂いに加えて、もの凄い獣臭がする。ここだけ、ホワイトラビットと桁違いだ。でも、そのまま飲み続ける。かなり暴れていたけど、段々と動かなくなってきて、そのままポリゴンになった。
「うっ……」
吐き戻しそうになるのを、全身全霊で押しとどめて飲み込む。目の前に出て来るドロップアイテムのウィンドウに集中する。書いてあるのは、ワイルドボアの毛皮とワイルドボアの肉。獣系のモンスターを倒すと、肉と皮のドロップが確実に落ちるのかもしれない。もっと違う倒し方をしたら、他のアイテムも手に入るかもしれないけど、現状何か他の倒し方を思いつかないので、みず姉とかに会ったら訊いてみようかな。
「ふぅ……」
吐き戻す事なく受け入れる事が出来たので、口直しに甘酸林檎を齧る。獣系のモンスターで、この感じって事は、ゴブリンとかが出て来たら、どうなるんだろう。別の匂いとか味がするのかな。不人気の理由が、どんどんと出て来る。
「それにしても、本当にスキルは手に入らないなぁ。一割以下っていう話だけど、一パーセント以下なんじゃないの……」
さすがに、そんな頻度でスキル獲得させる気はないみたい。まぁ、スキル制ゲームで、安定してスキルを奪えるってなったら、かなり壊れスキルになるだろうから仕方ないのだけどね。
「よし。次は、吸血せずに倒そう」
次のモンスターを探して歩いていると、正面にワイルドボアが歩いてきた。ワイルドボアは、私を見つけると、一気に突進してきた。
「敵意あり過ぎでしょ!?」
横に飛んで避けた私は、その脇腹に剣を突き刺す。そのまま上に振り抜く。
「よいしょっと!!」
肉の重みと骨の硬さを感じる。これは、もっと強敵になったら、これ以上に硬いだろうから、【攻撃強化】は必須かな。
ワイルドボアは、大きなダメージエフェクトを撒き散らして倒れた。すると、ドロップアイテムに、ワイルドボアの血が追加された。
「吸血した時は、血を全部飲み干しているから、血がドロップしないのかな?」
念のため、もう一体のワイルドボアを倒して確かめると、血はドロップしなかった。
「血のドロップは、確率ドロップか。確定ドロップと確率ドロップがあって、全損したものはドロップしないという事か。確率ドロップか全損したのかの判別を付けられるようにならないとかな。これは、おいおい出来るようになればいいや」
剣を仕舞って、また森を歩く。そこらかしこで戦闘の音がするので、多分モンスターのリポップが追いついていないのだと思う。モンスターが湧く数よりも、倒される数の方が早いとこうなってしまう。私みたいに、遅れて始めた人が多いみたいだ。
ちょっと夜の森を散歩していると、目の前に私の胸くらいの二足歩行の狼が現れた。片手にボロボロのナイフを持っている。名前は、コボルトだった。
私を見つけたコボルトは、牙を剥き出しにして、すぐに襲い掛かってきた。振われるナイフを、剣の抜く過程で防いで、振り抜いてコボルトを弾き飛ばす。
NPCのおじさんを除いたら、武器持ちとの初めての戦いだ。あの人は防戦だけだったからね。
油断なく剣を構えて、相手の行動を見る。コボルトは、また飛びかかってきた。ワンパターンな攻撃なので、こっちも対応がしやすい。ナイフを弾いて、大振りでその首を刎ねる。クリティカル判定を与えられたので、一撃で倒す事が出来た。
ドロップアイテムは、コボルトの毛皮とボロのナイフ、コボルトの血だった。ボロのナイフは、本当にボロボロで使い物にならないようなナイフだった。鋳潰す用なのかも。
「また血だ。この血を飲んでも、スキル獲得出来るのかな? 今は、ダメージも受けてないし、効果の確認をするためには……スライム飲むか」
唯一安全にダメージを受けられる方法がスライムを触る事だったので、ついでにスライムを飲むために、平原に戻る事にした。途中で、またワイルドボアを見つけたので、剣で突き刺して上に乗ってから、吸血して倒す。これでもスキルは手に入らなかった。
平原に来た私は、スライムを持ち上げて、核を残しながら飲んでいく。手で持っているので、少しずつダメージを受ける。目に見えてHPが減ったところで、ワイルドボアの血を飲む。いつも通りの吐き気を伴うけど、我慢して飲み込んだ。
すると、HPが回復した。つまり、ドロップの血でも【吸血】の効果が発動する事が分かった。
「これでも【吸血】は使えるって事は、【吸血】持ちにとって、血は回復アイテムと同じ扱いに出来るって事か。それに戦いながら相手の血を飲めれば、回復を交えて戦えるって事かな。まぁ、コボルトと戦った感じ、結構難しそうだけど」
まだ戦いの中で吸血するのは、かなり難しい。相手が動ける状態なら、吸血している間に倒される可能性もあるから。ワイルドボアは、上に乗れば、ある程度安全だから出来たって感じだったし。ここら辺は、慣れてきてから考えた方が良いと思う。
「そろそろ夜明けか……ステータスダウンが心配だし、平原でホワイトラビットの血を吸いながら、口直しにスライム食べよ」
スキル獲得がどのくらいで出来るのかの検証も含めて、スキルレベルを上げるためにホワイトラビットから血を吸って、その味を誤魔化すためにスライムを食べるという行為を三十回程繰り返した。すると、私の目の前にウィンドウが現れた。
『【吸血】により、ホワイトラビットから【脚力強化】のスキルを獲得』
【吸血】によるスキル獲得のお知らせだった。
「やった! 大体三十回くらいやって一回だから、約三パーセントかな。後は、何度か繰り返して、平均値を出していかないと」
【吸血】のスキル検証は、まだまだ続きそうだ。
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