12:私、勉強します。
アドルネアを見送るなり私は即屋敷内の書物庫へと足を向けた。図書館ほどまではいかないがとても種類が豊富なのは記憶している。書物庫の鍵は確かかかっていなかった筈。奥にも扉がありそちらは気軽には閲覧できない為鍵がかかっていたと思うけど。
何故か今私は流花の記憶はあるのにルカとしての記憶が曖昧で、体が覚えていたり条件反射的になっていることに関しては自然と動くし話せるようだから完全に別人、てわけではないと思う。でも他の人物に対してやこの世界に関しての知識が欠如しすぎている。目にすれば順応できると思うけどそこに至るまでの材料がない。ルカが消えたとは思わないし、流花なのだとも思えない。
「多分どっちでもあって、合致しないだけなのよね」
カツカツとヒールの音を立てながら廊下を歩く。侍女のカーリカは少し後ろをついているが、私の言動を不思議そうによく見ている。気にしないけど。
書物庫に着くとドアノブに手をかけ開いてることを確認してからゆっくりと開ける。中に誰かいると面倒だと思ったのと、なんとなくこういう場はうるさくしてはいけない気がしてしまうからだ。中を確認し誰もいないことが分かると室内へと入り、ざっと並ぶ本棚を見た。書物庫のはずなのに2階があるってどういう作りしてるのよ…。梯子でいいでしょ。危ないか…。
端から端へと目をやると何がどこにあるのかもなんとなく分かる。てことは私は何度となくここに来ているのだろう。
「今日もこの後はこちらで過ごされますか?」
やっぱり。カーリカの言葉から察するに私は帰ると大抵はここに篭っているようだ。成績や魔法の能力的にも日頃から割と勤勉なのかしら。
「そうね、そうするわ。悪いけど一人にしてくれる?」
「畏まりました。では夕食のお時間になりましたらまた呼びに来ます」
「ええ、お願い」
カーリカが部屋を出るのを確認する。
さて…。やるか。
私は意気込むと奥から二番目の本棚へと向かった。そこに歴史から現代までの本が並んでいるからだ。ちなみにその手前には過去から今の貴族名簿がある。となれば歴史は一旦置いておいて、現代の世界へと目を通してから今の貴族名簿、それから魔法についてを簡単に読み返して自分の属性を調べましょ。それが一番効率が良い気がするわ。今がわかればある程度受け答えだってできるし名前だって呼べる。過去を追うのはそれからでも問題ない。
決めてからは早かった。私は速読を心得ている。仕事柄片っ端から目を通さなくてはならないためアルバイトの時から習得していた。更に言えばこの本は読んだことがある。読んだことがあればある程度目を通せば思い出せる。
「勤勉だった私に感謝ね、これは」
数冊に及ぶ現代についてを読みきって次は貴族名簿を手にした。こちらは一冊だが相当分厚い。本、と読ぶには厚みがあるし、名簿というよりもはや辞典だ。それもぱらぱらと一気に捲っていく。そこで気付く。
どうやら私は辺境伯で、王家の血筋らしい。とはいえ現王家の従兄弟の家系の娘だからそこまで近くはないのだろうけど。日本で言ったら分家みたいな感じ?ちょっと違うか。
なんだか複雑そうね…この世界のお貴族様ってやつは。私もその一人みたいだけど。
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