11-2:次から次へと…。

 カーリカに手伝ってもらい着替えを済ますと客間へと足を運んだ。部屋でお話?絶対嫌。あんな男は客間で十分よ。部屋になんて通したくもない。私の中でハイネ・アドルネアという男の印象は頗る最低だ。


 コンコンコン。

 カーリカが扉を控えめにノックした後ドアを開けてくれた。そのまま私は室内に入り、アドルネアの向かいのソファの近くへと立つとスカートの両端をふわりと持ちカーテンシーを一度する。カーリカはドアの横の壁の前に立っている。すぐに追い返すから飲み物はいらないと拒否をした。それは必然と相手にも伝わる。早く帰れの意図だと。


「こちらこそ急に来てしまいすまない。手紙は出しておいたんだがどうやら君は補講を受けていたそうだしすれ違ったようだ」


 今遠回しに馬鹿にした?補講なんか受けてるのかと。馬鹿にしたわよね?良い度胸じゃない。

 にこりと微笑む。


「ええ。すぐに終わる予定でしたがリアラさんがご自身の属性を偽り続けて魔法を中々使ってくださらなかったので、無駄な時間を使わされました」


 オブラート?知るもんですか。失礼には失礼で返すわよ。当たり前でしょ。


「ああ、やはり偽っていたのか。彼女は僕にもよく魔法が使えないふりをしてくる」


 …ん?


「あの擦り寄るための演技もそろそろ周りにもバレてると思うんだが、何故皆はあそこまで構うんだろうな」


 んんん???


「何かされてないか?彼女はどうやら女性を利用して男性に擦り寄るのが上手なようだからな。君が利用されてるんじゃないかと昼は心配で仕方なかった。


 えーと。何この人。学校と随分違くない?学校では凄く冷たかったわよね?私に関わるなみたいな目で見て来てたじゃない?なんなの?どういうこと?


「まあそんなことはいい。僕は君に今回縁談を受けてくれたことを感謝したくてお礼に来ただけだ、無粋な話はやめよう」

「お礼?」

「ああ。前々から何度か手紙は送っていたが年齢的にまだ早いと断られ続けていたが、先日ついに色良い返事をくれたと聞いて居てもたってもいられなかった。本当に感謝する。そして必ず君を幸せにすると誓う」


 ごめんなさい。そもそもあの縁談は父が勝手に進めたことで私は昨日聞いたそうだし、むしろ今朝知ったし何度も申し込まれてたとかも知らないしこれではまるでこの男が私に恋心を抱いてるようじゃない?なんて思ったけど顔がどこか照れ臭く見えるのは気のせいではないということであってますでしょうか!…処理が追いつかなくて思わず早口になってしまった。危ない。一回落ち着きましょ。これではだめだ。


「カーリカ」

「お茶ですね、ご用意いたします」


 この男絶対早く帰らない。私の拒否モードをものともしないわ。私は諦めてカーリカにお茶を頼んだ。

 すぐに温かい紅茶を私の前に置いてくれる。手際の良さに惚れ惚れするくらいだ。本当によくできたメイドである。結婚するならカーリカがいい。

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