第4話『東京ダンジョン』(2/2)
知らないで成り行きに任せるのと、知った上で行動しどうにかしていく側とでは、まるで生き方や視点も変わる。
ヒロはなんとしても生き延びたいと考え、どうしたら良いのか悩んでしまう。
反面、全てを知った上で行動する側でよかったとも思う。
ヒロが悩んでいるところ、ラピスは秘策を述べる。
「そこでね、あたしとヒロは別の方法で対策するわ」
すぐには思いつかず、ヒロはそのまま聞いてみた。
「どうするんだ?」
あっけらかんとしてラピスはいう。
「シンプルにヒロを超! 強化するの」
たしかに強いのは良しとして、相手が多数である以上、数でないかと疑問に思い言う。
「たった一人じゃどうにもならないだろ? 戦争は数だというし」
そこで意外なことをラピスはいう。
「そうね。ただね、例外もあるのよ?」
そこでヒロは、彼らだってすべてが順風満帆にいったとは思えなかった。
何か過去にうまくいかず成功へ至るまで、幾度も失敗し今を築き上げたと思っていた。
そこで、彼らの失敗談があればと思いラピスに尋ねてみた。
「そのセトラーが過去失敗したことなんてあるのか?」
するとラピスは自信満々にいう。
「ええ、あるわ。その相手は魔人よ」
気なるキーワードが出てきてもそれは後回しにし、ヒロは核心を聞いてみる。
「どうやって、うまくいかなかったんだ?」
ラピスは顎に手をやり、唸るように考えると口を開く。
「いくつか予測はできるけど、魔人の力ね」
ヒロはどうしても確認したく再度尋ねる。
「その力で完全に防げていたのか?」
それについてラピスは答えてくれた。
「ええ。完膚なきまでにね。セトラーたちの完全敗北で撤退よ」
魔人種が彼らを駆逐したのだろうか、疑問は尽きない……。
過去、一定の方法で各地を制覇してきたのでパターン化しているという。
ただし魔人に対してはうまくいかなく、完全撤退したことがあるという。
魔人についてラピスは研究をつづけており、未だ解明していないことの方が多いという。
そこでヒロはふと思い出したかのようにいう。
「そういえば葉に触れる前、気になることがあったんだよな」
ラピスは単に予想つかなく、何があるのか質問した。
「どんなこと?」
ヒロはあの時の様子を思い浮かべながら話をした。
「黄金の人型が見えて、一言だけいって俺の体に入ったんだよな」
ラピスはもしやと思い目を細めていう。
「なんて……言ったの?」
ヒロははっきりと、聞き覚えのある一つの単語を伝えた。
「『ゲボア』に気をつけろと……」
ラピスは思わず口を大きく開けるという。
「それって……。間違いなく『ゲボア』と言ったの?」
ヒロは間違いないと真顔でラピスに伝えた。
「ああ、それは間違いない。かなりはっきりと聞こえた」
そこで一瞬間をおき、ラピスはいう。
「ヒロ……。あなた……。多分、魔人種と同化しているわ」
今度はヒロが驚く番だった。
「え? 俺が?」
この同化がうまく行っていれば、かなり有利に運ぶことをラピスから聞き出す。
そのため、今後経過観察が必要だと言う。
そこで改めて、これまでとこれからをかいつまんでラピスは説明をしてくれた。
今まで話した内容のおさらいの意味でもあるんだろう。
ラピスたちの存在のことと、ラピスたちの目的のこと。
そしてそれらの着地は、見た目上はセトラーたちの入植のためのお膳立てであること。
――第一段階完了は、魔法ウイルスに全員感染すること。
何よりもこれが最優先されている。
なぜなら、これは是が非でも成功させないと、この時点で人類の敗北が決まってしまう。
感染させるためには、魔法ウイルス感染を広げる『青ノ太陽』を打ち上げる必要があり、それを作るための作業が必要になってくる。
この作業は、リナ助教授とゴダード教授に感染したウイルスも行っているという。
ヒロも含めた3体の内、誰かが成功すればいいという物らしい。
魔法ウイルスに罹患し、魔法が使え体内を魔力により熟成させることが次に優先されている。
より早く、魔力の質をあげ熟成させるにはダンジョンを生成または召喚して、そこでの狩りを通うじてより高みを目指してもらうことが重要だ。
この魔力を高めることで、人を熟成したうまさを引き出す物になるという。
――第二段階完了は、『勇者ウイルス』発症者を保護することだ。
『青ノ太陽』を打ち上げ後、感染が広がれば有能な因子が出るという。それが『勇者ウイルス』だ。
セトラーたちは『勇者ウイルス』の罹患者を最優先で排除する計画がある。
なぜなら、『勇者ウイルス』はセトラーたちを圧倒する力を秘めているためだ。
そのため、セトラーとしは最初の段階でいかに排除できるかがセトラーたちの計画成功の鍵でもあるという。
だからこそ彼らを保護し匿うことで、セトラーたちの計画を失敗させる確率を高めていくわけだ。
それと同時にダンジョンでの狩りも並行して促し、体を魔力に合う体質へと変化させる必要がある。
彼らの保護や匿うことへの中核となる受け入れ組織がリナの教団であり、ゴダードの王国だ。
ただし魔力強化を繰り返すと、今の人の柔軟な性質だとセトラーを超えてしまうため、全感染者は抑制ワクチンを打つことで抑えようとセトラーは目論んでいる。
それを妨害するために、『偽のワクチン』を使い逆に強化させてしまうのが人類側の計画だ。
――第三段階では、食人品評会で地域でのランクが決まる。
ワクチン使用後、空間を割いて第一陣のセトラーたちが訪れ、試食が行われる。
それは人が食われるのだ……。
その者たちは、セトラーの中でも尖兵扱いの者たちだ。
ただしそこで成功すれば、さらなる地位の向上があるため、彼らも必死なのだ。
この時にいかに人類を洗脳し、品質を高められるかが彼らの成功に影響する要素である。
――第四段階では、基準より品質が低ければ、一度手を入れる。
そのあと、再度品評会が行われてそれでも基準が低い場合、即座に加工食品にしてしまう。
クリアすれば今度は安定供給のための準備が行われ、さらなる統治が行われる。
その統治が円滑だと判断されたとき、いよいよ観察官が現れる。
功績を査定し、地位向上の場合はここの統治者となる。
そうでない場合は新たな統治者が訪れ、さらなる統治が行われる。
――第五段階では、査定はされずに第二陣がやってくる。
さらなる安定供給のため、第二陣以降の受け入れは一時中止される。
高品質な者が増えたら受け入れ、減ったらまた増えるまで待つを繰り返していく。
そしてそれが植民地化の完了を意味する壮大な計画を聞かされた……。
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