AR・アーマーズ【ゲーム嫌いは最強ゲーマーでした】

中一明

『僕はゲームが嫌いだ』


 小さい頃からずっとそう言い続けてきたし、きっとこれからもそう言い続けてくるのだろうが、それでも僕にそう言わせ続ける切っ掛けがあるとすれば、それはきっと彼女なのだろう。

 僕の幼馴染である『祈一一華きいちいちか』なのだとハッキリと言い切れる。

 小さい頃、僕は両親によって育てられ訳じゃ無く、親は俺に不自由すること無い金と不自由すること無い人を与えてくれたが、幼い頃の僕はそれよりも愛がきっと欲しかった。

 愛して欲しかったのだ。

 自分を見て欲しかったと何度も何度も言い続けてきたが、それでも両親が僕を見てくれることは一度も無かった。

 そんな時、親に会いに仕事先まで出向いた時、俺は彼女に出会ったのだ。


『面白いゲームがあるの』


 そう言って差し出された大戦ARゲームである『ARアーマーズ』を彼女は僕に教えてくれたのだが、ハッキリ言えば彼女はド下手くそだった。

 僕が上手すぎると言う事もあるが、それを差し引いてもな彼女は下手くそだったのだが、それを悪化させるほどに彼女は『負けず嫌い』なのだ。

 一度負けると彼女は勝てるまでしつこく食いかかってくるのだが、わざと負ける事に気がついたら数週間は拗ねてしまう。

 僕に楽しい事を教えてくれた彼女を奪ったゲームが嫌いだ。



 その『ARアーマーズ』を作ったのは三人の日本人だった。

 その内の一人が僕の祖父だったらしいが、祖父は当時のこと頑なに教えてはくれないのだが、今から五十年前に起きた『太平洋事変たいへいようじへん』と呼ばれている事件が切っ掛けだったと聞いている。

 今から百年前まで世界は大きく荒れており、二千年代前半では第三次世界大戦が起きたらしいが、歴史では子供が活躍した等と言われていたが、実際の所どうだか知らない。

 しかし、それ以降人々はとある兵器開発に勤しむようになり、そんな技術が究極になった時が今から五十年前の事だったそうだ。

 人と人の信頼が無くなってのが『太平洋事変』だったらしく、その原因を取り除いたのが祖父だったそうだが、細かい詳細は分からない。

 だが、今でも当時祖父が乗っていた第三次世界大戦で開発された『アトミック・アーム』という二足歩行機動兵器が今でも軍事基地を歩いている姿を見かける。

 時代は戦車や戦闘機の時代は終わったのだ。


『2133年』


 世界は三つの連合国によって分割管理されており、日本はアメリカやオーストラリアや東南アジア諸国が一緒になって作られた『環太平洋連合かんたいへいようれんごう』の傘下であり、主要国の一つでもある。

 環太平洋連合軍が今なお作り続けている最新式のタイプ開発に最も貢献しているゲームこそが『ARアーマーズ』なのだ。

 そして、それを可能にしているのが『記憶粒子』である。


記憶粒子記憶粒子


 一定の波長の電気信号と共に一定のイメージを入力することで周囲にある記憶粒子を集めて形にすることが出来る。

 第三次世界大戦が開戦した切っ掛けはこれがアフリカ大陸にある小さい国で発見されたことが切っ掛けだったそうだ。

 そして、それを巡っての大戦となった。

 今ではこの記憶粒子は世界中の都市でゲームの為にと使われている。

 というよりは粒子の特性上長期間の使用に向いていないのだ。

 祖父曰く、「使えないわけじゃ無い。実際五十年前にはアトミック・アームとの併用が実戦で行なわれている。ただしエネルギーの消耗が激しき五十年前では『実戦に投入されるのには百年かかる』と言われていた」とのこと。

 要するに現実向きじゃ無い。

 アトミック・アームの練習用にと開発されたARゲームを一般向けに改造して流した三つの企業の内一つが祖父の会社である。


『ビビアン・ゲームズ・コーポレーション』


 今ではゲームだけでは無くITから輸入出まで様々な分野で活動している大企業の一つ、昔は東京に本店を置いていたらしいが今は父親の意向でアメリカに移している。

 僕は馴染めないアメリカより日本の方が良いと地元に残ることにした。

 広島県に作られたARアーマーズ専用の都市として開発された『沖律市おきりつし』に僕は住んでいる。

 元々様々な店や公園などで何処でARアーマーズが出来るようにと記憶支柱と呼ばれている物が置かれており、それが各ゲーム機とゲーム機が繋がっている。

 つまりは何処でも戦場に出来、同時に自分で戦場をカスタマイズ出来ると言う利点がこのゲームが流行った理由である。

 例えば自分の机の上にお菓子の箱や缶などを置いて自由に戦う事が出来、そんな自分で作ったロボットで戦うという部分が人気になった。

 それでも僕はゲームが嫌いだ。

 どれだけ人々から愛されようとも、どれだけ人々がこのゲームをプレイし続けようとも、僕はゲームを愛さない。


 僕から大切なモノを奪うゲームだけは…絶対に。

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