Restart
めいき~
第1話
先週暑さの余り、二人で血迷って始めた彼氏と彼女の関係。
最初の日曜日相変わらず、和弥の部屋で二人で天井を見ながら言った。
「そういえば、俺達は先週彼氏と彼女に親友からジョブチェンジしたわけだが。一体休日に何すりゃいいんだ」
「普通の男女は、休日二人で過ごすらしいよ」
「それは、暇な時ほぼ毎週やってるよな」
「だよねぇ…、そういう意味では何も変わってないわよね」
二人して、考えた末に。
「そうだ、飯でも食いに行くか」
和弥がそう言って、真琴もそうねここに居てもいつもの休日で終わりそうだしと苦笑した。
「そういえば、普通の女子はラーメン屋とか行くとオシャレしてきて服が汚れるからって怒るらしいぞ」
「ねぇ、和弥君。私がそんなお洒落してくる女に見えてる?」
「いや、全く」
「清潔には気を使ってるけど、あんたんちに来るのにお洒落はしないわよね」
「そうだな…、じゃいつものファミレスでいいか」
そうして、部屋を出ていこうとすると凄まじくタイミングよく和弥の母親が出てきて和弥の顔を両手で挟む。
「和弥ちゃん!」
真琴に見えない角度で般若のツラ構えでエプロンから諭吉をだすして和弥の胸ポケットにつっこむと、顔をズームアップさせながらド迫力のオーラを放ちながら言った。
「もっといいとこ行きなさい、いいわね?」
その迫力に、はいとしか言えずはいと言わなければそのまま顔を潰されそうな力で挟まれた和弥が答える。
素早く家の中に母親が消えると、丁度階段から降りて来た真琴と眼が合う。
「何してんの、和弥」
「いや、母さんがもっといいとこ行けってこれ」
指で挟んだ諭吉をひらひらさせ、思わずそれをみた真琴が笑った。
「ラッキーじゃん」
そういって、札を持ってない方の手で二人でパンとハイタッチを決めた。
(いや、ラッキーとかじゃなくお前が来てるからだと思うぞ)
そう言って、二人で歩いて最初の角を曲がった際に真琴は思った。
(あれ、そういえば。私達いいとこの店なんて知ってたっけ?)
「ねぇ、和弥くん。質問があるのだけど」
「奇遇だな、俺もだ」
「「俺達(私達)は良いとこでご飯を食べたことない(わよね)。何処に行けばいいんだろ。(のよ)」」
二人して、声がはもって思わず変な顔になって顔を見合わせた。
「仕方ない、こういう時はスマホで検索だ!」
ぱっと和弥がポケットからスマホを取り出し、検索しようとして気づく。
画面にでっかく、バッテリーのマークに斜線が入って……。
「和弥君、充電忘れましたね」
真琴が、和弥の右肩を叩きながらため息交じりにいった。
「すまねぇ、すまねぇ……」
そういって、素早く自分のスマホを取り出す真琴。
「こういう時に頼れるのは、やっぱ女友達よね。普段、煩いだけだけど」
そういって、素早くショートメッセージアプリで友人に近くのお食事処を尋ねると直ぐに返事が返ってきた。
(求、彼氏といく初デートのお食事処。予算諭吉)
ぺっと、地図と大まかな値段表とメニューの写真や店内が表示されるアドレスの返信が帰ってきた。
(求、初デートの感想。情報料としてきっちり聞かされたし)
そういって、ここから歩いて五分位の所にある創作パスタ&ピザの店(ただし看板がない小さい店舗)を紹介された。
それを、和弥に見せながら真琴が笑った。
「これもんでどうでしょう、おいしそうだと私は思います」
「はぇー、なんでこんな店がこんな直ぐ出てくんの検索より速いじゃん」
そういって、二人でパスタの店に歩いていく。
そして、ついた二人の感想というか二人して台詞が揃った。
「「店ちっちゃ!」」
何でこんな店知ってるんですか、友人の香織さんは。
「いらっしゃいませ~」
優しそうな老人夫婦が、そういって迎え入れてくれる。
和弥は若干居心地悪そうに、ギリギリ壁にくっついた二人席の奥側に座った。
手前に真琴が座って、小声で話す。
「これ、机が小さすぎて壁にくっつかないと廊下の方にでちゃうわよね」
「これ、料理置いたら結構ギリギリな気がするよな」
二人してメニューを見ながら、お互いに食べたいものを注文ししばし待つ。
「ちなみに、この店教えてくれたお前の友達って?」
「山岸さんよ、あの眼鏡とそばかすの」
二人の頭に、口を三日月にして笑うクラスメイトのイメージが思い出された。
「あぁ、あいつかぁ」
「それよりも、はいこれ。これで、充電しなさいよ」
ハンドバックから、口紅サイズのバッテリーとケーブルが出てくることに和弥が驚いた。
「今時、バッテリー持ってるなんてありがてぇけど驚きだわ」
「お父さんに持たされたのよ、母さんとの初デートの時浮かれ過ぎて色んなものを忘れてったんだ~って言って」
真琴が、思い出して苦笑した。
「確か初デートの時に財布忘れて、真琴の母さんに驕って貰ったんだっけか」
「よくそれで母さんと結婚できたよねって…、娘の私でもそう思うわ」
真琴の父親は、どちらかというと俺の若い頃は~っていうタイプじゃなく。
俺はこれだけ失敗したんだ、真琴は気をつけるんだぞ。みたいな事を口癖の様にいうのだ。
その度に、真琴はあなたじゃないんですから大丈夫ですよというのを事あるごとに聞きながら育った。
「私、幼稚園の頃から何でこれと結婚したのって父親指さしてたもの」
「それは、なんかきつい環境だな」
そんな事を話していると、料理がやってきたので話を止める。
「盛り付けが、可愛くて美味しそう~」
「あぁ、凄く良い香りがする」
老夫婦が優しい笑顔で「うちは写真OKですよ」と言って引っ込んでいく。
「じゃ、記念に一枚二人で食べた料理と二人が入った写真撮っておくわよ」
「了解、俺のは。今回は諦めるしかないか」
真琴は苦笑しながら、後で送っとくわよと笑った。
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