十二月二十五日

「はい、ロウソク。上手くさせるかな?」

小袋からロウソク一本を小さな手のひらに乗せた。

「うん!」

ロウソクをギュッと握りながら任せてと頷きながら娘は答えた。

 ロウソクの上部を持ちながら塗りたくったクリームの上を上下左右に移動しながら「ここ!」と、言ったときにはクリームに挿していた。

「はい、もう一本」 

私はもう一度ロウソクを娘の手のひらに乗せた。

「ここじゃない、ここが良い」

ロウソクを五本挿した辺りで、娘は挿したロウソクをぬき取り、別の所に指し直した。

「出来た!!」

大きな声で明るく叫んだと思ったらソファの上で飛び跳ねながら子猿の様に舞っていた。

「ただいま、ちょっと来てくれ〜」

赤いリボンを着けられた白い箱を幾つか抱きかかえた父がSOSを唱えていた。

母が荷物をいくつか持ち、父は靴を脱いでいると

「パパー、ケーキ、ケーキ!!」

そんな父の疲れも気にせず、廊下をペタペタと駆け走りながら自分がデコレーションしたケーキを持ちながら、娘は持ってきたケーキを父に見せた。

 ケーキは無数の穴が開いており、父は苦笑をしたが、いつかその穴にもロウソクが挿さる事を思うと、父は白い付け髭を生やし、少し老けた。

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短編集 古月蘭 (ふるつきらん) @HIIRAGIRAN

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