雨宿り

雨が振りはじめた。学校帰りの夕方頃、ポツリポツリと、雨が振りはじめた中を、少し駆け足で走る。ピチャ、ピチャと、溜まりはじめた水たまりを革靴で踏む音、あそこで雨宿りしよう。そう言って、数年前からシャッターが閉められたままのタバコ屋の屋根の中で、濡れた髪をハンカチで拭こうとブレザーのポケットからハンカチを取り出した。黄色の水玉模様のハンカチ。

 ハンカチの柄で思い出した。小学校の時もここで雨宿りしたっけな。このタバコ屋のおばちゃんが

「ここで休んで行きなさい」と、手招きをしながら言ってきたから、手招きに引っ張られ、おばちゃんの所に向かった。

おばちゃんからタオルをカウンターから受け取り髪を拭いている時、おばちゃんが

「運が悪かったね。これでも食べな」と、言って紙に包まれた飴玉を2個受け取った。

 ニャーと、鳴き声が雨が降ってる霞の中から聞こえた。三毛猫が家の塀から飛び降り、辺りをキョロキョロしていた。

「こっちにおいで」と、言って私はヒョイ、ヒョイと、手招きをした。

猫はサッ、サッと、駆け足で私の所に向かってきた。

私の足元で猫がブル、ブルと、体を振るい体に付いた水を払ってた。

「お前も運が悪かったな、これで吹いてあげる」

自分のハンカチで猫の頭を拭く、わたし。

「お前も運が悪かったな」

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