ヘンタイ彼女のあまあま看病。

針間有年

Track.1 ヘンタイ彼女、来襲。

//SE 扉の開閉の音


「先輩。やっぱり辛そうですね」


「大丈夫ですよ。店長にも言ってきましたし」


「今日は帰って寝てください」


「あと、そうだ。おうち、教えてもらえますか?」


「先輩一人暮らしでしょ? 様子見に行きますよ」


//演技依頼 耳元で囁く


「何言ってるんですか。先輩と私の仲じゃないですか」


//演技依頼 耳元から離れる


「そう、恋人同士なんですから」


「ふふ、ドキドキしました?」


「では後で住所、メッセージに送っておいてくださいね」


「お大事に」


***


//SE インターフォンの音

//SE 扉の開閉の音


「せーんぱい、来ちゃいましたー!」


「あれ? 迷惑でしたか?」


「むふふー、何ですかその顔?」


「可愛い彼女が来て嬉しいけど、無表情決め込んでる感じですか?」


「照れ屋ですね、先輩はー!」


「ではでは、先輩の家へ侵入ー! じゃなかった、お邪魔しまーす!」


「そんなに焦らないでください。大丈夫ですよ、先輩が綺麗好きなんて思ってませんし」


「むしろ生活感がある方が、はぁはぁ……イイです」


「ヘンタイじゃありませんー! ちょっと先輩のこと好きすぎるだけの彼女ですー!」


「ほら、先輩は座ってください! 調子、悪いんでしょ」


「そりゃ分かりますよ。生真面目な先輩がバイト休んじゃうなんて相当じゃないですか!」


「それに、三日前の十五時五十一分の先輩、いつもより目線が三度くらい下に向いてました!」


「へへへー」


「いえいえ、ここで「なんでやねーん!」ってツッコミ入れてくれる先輩、好きですよ」


「ドン引き、じゃなくて、こう一緒に遊んでくれる感じが、すっごい好き」


「あ、そうなんです。いろいろ買ってきましたよー!」


//SE ビニール袋を漁る音


「スポーツドリンクはもちろんのこと、ゼリー、ご飯の材料、トランクス――」


「なんでって。洗濯できてないんじゃないですかー?」


「でしょ!」


「いつまでも同じパンツ履いてたら気持ち悪いでしょー」


「私は気遣いのできる彼女なのです! えへん!」


「今日はいい天気です。私が洗濯しちゃいますねー!」


「えいしょ、よっと」


「先輩、いろんなところに服脱ぎ散らかして……」


「別に怒ってなんかないですよ。むしろ嬉しいです」


「洗濯機に無造作に放り込まれてる洗濯物もいいですが、脱ぎ散らかされた洗濯物はですね、『あ、先輩こんなシチュエーションで服脱いだのかな?』って妄想がはかどって、もう『キャー!』ってなっちゃいますよね」


「なるんですー!」


「洗濯物回収かんりょー!」


「むふふ、先輩のにおい嗅ぎ放題……」


「な、何も言ってませんよ」


「ウソです。先輩のにおい嗅ぎ放題って言いました!」


「正直に言ったので嗅がせてください!」


「びぃー!」


「先輩のケチ!」


「もうもう、いいもーん。たまった洗い物の中から箸見つけ出して舐めるもーん」


「ヘンタイじゃないですー。ちょーっと、変な態度の女の子なだけですー」


「そこ! ただのヘンタイの女の子って言わない!」


「正論はオブラートに包まないとダメですよ、先輩」


「……先輩、やっぱりしんどそうですね。ツッコミにキレがありません」


「おでこごっつんこしますね」


「失礼します」


「あーやっぱり熱い。これは結構熱ありますね」


「それに汗もかいてます。これじゃあ、身体冷えちゃいますよ」


「先輩、服どこにありますか。部屋着です、へーやーぎー」


「お土産として持って帰りたいのはもちろんですが、そうじゃないです!」


「先輩の! ための! 着替え! です!」


「もうもう、人のことなんだと思ってるんですか。ちゃんと先輩のこと心配してるんですよ」


「うぅん……。またそうやって、優しくするー」


「もっと好きになっちゃうじゃん」


「いえいえ、何も」


「あ、服ここですね」


//SE 箪笥を探る音


「なんですか、このTシャツ。可愛いですね。サイズも柄も」


「先輩が着るにはちょっと窮屈では……?」


「それにしても、にやけた顔の犬ですね。先輩こういうの好きでしたっけ」


「え、えー? 私に?」


「そう言われればちょっと似てるような……?」


「私、こんなにやけっつらしてます?」


「うっ、否定はできない」


「でも、でも、先輩このTシャツ着ながら寝てるんですよね。私のにやけっつら思い出して先輩もにやにやしながら寝てるんですよね。」


「えっちだー」


「むふふー、先輩可愛い」


「それじゃあ、お着替えしましょうねー」


「ええ? せっかくだから私が」


「ほら、先輩。ばんざーいしてください」


「こわくなーい、こわくなーい」


「こんなか弱い乙女に向かって怖いとは何事ですか!」


「最強のヘンタイっていわないでくださーい! こちょこちょしますよ!」


「ふふん、いい子ですね」


//SE 服がこすれる音


「あ、やっぱり汗だくじゃないですか。ついでに先輩の汗舐めていいですか?」


「ダメですか。ちぇ」


「はい、じゃあタオルで拭きます」


//SE 布のこすれる音


「先輩くすぐぐったがりすぎますよー。もうちょっと我慢してください」


「何センシティブな声あげてるんですかー! ドキドキしちゃうじゃないですか!」


//演技依頼 耳元で囁く


「それとも、もっとされたいですか?」


//演技依頼 耳元から離れる


「あ、ちょっと! タオル奪わないでくださーい!」


「先輩のセンシティブボイスもうちょっと聞きたかったなぁ。うぅ」


「はい、新しいTシャツです」


「そりゃそうですよ。ずっと上半身裸の先輩を眺めていたいですが」


「……早く風邪、治ってほしいので」


「頭なでなではずるすぎますよ」


「さて、次は下ですね!」


「いや、ズボン脱がないとパンツ脱げませんよ!」


「何って、ズボン脱がないとパンツ脱げないって言ってるんですよ!」


「大丈夫です! ちゃんと見てます!」


「びぃぃ! なんでー!」


「廊下に追い出そうとするなー! 私は先輩のお着替えを見守る義務があるんですー!」


//SE 腹の鳴る音


「……」


「今、先輩お腹鳴りましたね」


//SE お腹の鳴る音 


「あ、えっと私もなっちゃいましたね……」


「えへへ」


「……うー、めっちゃ恥ずかしいです」


「お腹の音、忘れてくださいね?」


「もーう! 先輩のイジワル!」


「でも、お腹すきましたね。キッチン借りていいですか?」


「ええ、とっておきのご飯作っちゃいますよ!」

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