閑話休題:夏休み

 秘密基地。子供の憧れ。

 対電波放送局、錦糸町発令所。

 彼女達の秘密基地。今日は御園生局長主催の女子会。

 秘密基地に集まった5人の局員。

 電波体バグに追われる日々も一区切り。

 城1曹がこうこぼしていた。

「学校はみんな夏休み、でも私たちは即時待機。夏休みが欲しい。」

 それを局長は聞き逃さなかった。

 女子が増えた、喜ばしい事実。

 長らく開催していなかった女子会をしよう。そう決意した。

 しばらく経ったある日、地下基地館内へ放送が響き渡る。

「えー、餘目遥陸曹長、城未来1等陸曹、噛崎熾織1等陸曹、鐘倉美空3等陸曹、以上4名は現在の職務を引き継ぎ速やかに局長室へ出頭すること。可及的速やかに。以上。」

 局員全員が戦慄した。局長からの呼び出しはもとより、なにより全員フルネームで呼び出されたのだ。さらには現在の職務を引き継いだ上可及的速やかに、発令所ではなく局長室へ。

 格納庫のベンチに腰掛けていた私たちは戦慄いた。

「餘目曹長、私たち出撃でやらかしたんでしょうか……?」

「わ……わからない、本当にわからない。」

「ボクの制服がそろそろ怒られる頃かなくらいしか思いつかないよ……フリル増やしたから……。」

 そこに駆け足で鐘倉さんがやってくる。

「あ、あの、私なにかやっちゃったんでしょうか……?」

 私と餘目曹長、噛崎1曹の3人は顔を見合せこう答えた。

「「「私(ボク)たちもわからない。」」」

 上官命令、それも局長命令である。4人は現在の仕事を引き継ぎ駆け足で局長室へと向かった。

 何かわからないけどまずい。急がなくては。

 無機質な通路に靴音を響かせ局長室へと急いだ。

 そうしてたどり着いた局長室。

 階級的に餘目曹長が局長室をノックする。

「はいりなさい。」

 声が聞こえた。冷や汗が止まらない。

 ドアを開け、局長室へと入る。

 御園生局長は椅子に座りこちらに背を向け壁を向き座っていた。

「あ、餘目遥曹長、城未来1曹、噛崎熾織1曹、鐘倉美空3曹、命令に従い出頭しました。」

 くるりと椅子を回し局長がこちらを向いた。

 両手を口の前で組む。にやりとした口元がのぞいていた。

 怖い。いつもと雰囲気が違う。

 そこでようやく局長が口を開いた。

「4人とも、何か忘れていませんか?とても大切な事です。よく考える様に。」

 だめだわからない。報告書は溜めず逐一提出している。

 鐘倉さんも滞りなく訓練機を整備している。

 青い顔をした餘目曹長が口を開く。

「も、申し訳ありません。なにも思い当たる事がありません。」

 バンっ!と机を叩き局長は立ち上がる。

「夏休みですよ、夏休み。女子会をしましょう!城1曹、噛崎1曹、鐘倉3曹の歓迎会を兼ねて女子会をしましょう!」

 どっと汗が噴き出した。緊張が解ける。

「じょ、女子会でありますか?」

「そうです。学生の2人は対電波放送局に詰めてもらっているので学生としての夏休みが満喫できないでいます。なのでここは私、御園生詩葉が一肌脱ごうじゃないですか。」

 驚いた。確かに私は夏休みが無いことを嘆いた。

 聞かれていたのか。恥ずかしい。でも学生である以上夏休みは欲しいと思っていた。(局員でもあるのだが)

 「流石に局長と整備士と、3人しかいない操縦者アクターが基地を開けるのは難儀です。本当は臨海公園とか海行きたかったんだけど。仕方ないので格納庫内でBBQをしましょう!」

 そうと決まればすることは決まっている。

 局長室から全館放送を入れる。

「あー、玄月2尉、これより我々女子5名は、オリナス錦糸町カスミへ買い出しに行ってきます。留守をよろしく。それから兼坂砲雷長。速やかに格納庫でBBQの準備をする事。それに補給課スイーツ作っておいてください。局長命令で最優先事項とします。以上。」

 職権濫用である。局長ともあろう人が、まさかの行為に驚きを隠せない。

「さぁ行きましょう。制服では楽しくないですね。城さん、鐘倉さんは一度寮へ戻り私服へ着替えて理事長室に集合しましょう。遥と噛崎さんら自室で着替えた後、私と理事長室へ行きましょう。じゃあ解散。」

 はい!と声をあげ城さんと鐘倉さんは急足で女子寮へと向かった。

 私はというと、遥と噛崎さんを連れ錦糸町基地内にある局員居住区へ向かっていた。

 私は局長という立場でありながら、可能な限り一般局員と同じ処遇を望んでいる。その為専用ではなく一般局員の居住区へ住んでいる。遥と2人同室である。

「そんな固くならないの。別に電波体バグが襲来しているわけじゃないのよ?女子会楽しまなくっちゃ。」

「は……。しかし私にはその様な事。」

「だからこそです。貴女に足りない物ですよ?」

 言葉を遮り私はそう言った。

 居住区へ足を踏み入れる。そうして部屋にたどり着く。

「それじゃあ噛崎さん、着替えたら局長室に入ってて。勝手に入っていいからね。」

「え〜っと、あは。困ったなぁ。流石に入りにくいから、着替えて外で待ってるよ〜、急ぐ!」

 隣の部屋に入っていった。私達も部屋に入る。

 私は制服を脱ぎ、ブラウスにミニスカート、黒のトレンカにサンダルを履き準備する。

 遥はというと、まぁそうだろうなと思った。

 リクルートスーツである。

「遥、貴女私服って言ったでしょ?」

 これが落ち着くんですと話す。

 こうなったら梃子でも動かない。パイロットスーツじゃないだけマシか。

「今度オリナスで可愛い服買いましょう。買ってあげます。着ましょうね。」

「それだけはご勘弁ください。本当似合いませんので。」

 私は絶対に買ってやる、そう決めたんだ。

 渋々ではあるがリクルートスーツで許そう。

 私たちは部屋を後にし先に待っていた噛崎さんと合流する。これはなかなかいい。たくさんのフリルにヘッドドレス。

「可愛いわね、噛崎さん。遥も見習って欲しいなぁ。」

「ご、ご勘弁を……。」

 談笑混じりに局長室を目指す。

「直接理事長室に上がりましょうか。」

 局長室から中央高校理事長室へは直通エレベーターがある。

 遥は軍属として従順忠実である。それはもちろん私だけでなく、上官全てに対して。それが彼女の長所であり短所でもある。

 途中発令所を通る。ドア越しでも発令所から声が漏れ出ていた。

 私達は気になりそのドアを開ける。

「それでははじめますよ。対電戦闘教練!」

 カーンカーンカーンと半鐘の音が響き渡る。

「池袋、サンシャイン60地区レーザー誘導座標確認!」

「秋葉原地対空迎撃システム起動。浸蝕短SAMサルボー!」

「戦闘効果……微弱!殆ど認められず!」

「兼坂、敵は層をなして、浸蝕弾を防いだ。抉ったのは最も表層の個体のみだ。」

「避難率95%を超えました!」

「よし、さらに広範囲に浸蝕弾を撃ち込む!1番から108番まで全て浸蝕弾頭に……サルボー!」

「なーにしてるのかしら?」

 局長席のコンソールから充電中のワイヤレスヘッドセット手に取り装着し話しかける。

 だれもここに局長が来ると予想しなかったのだろう。

 その声を聞いた局員が飛び上がり敬礼をする。対電波放送局独自の敬礼。

 左腕を折りたたみ、手を開き胸に当てる。その胸に宿る《魂魄を賭す》をあらわす敬礼である。

 おろしなさいと私は呟く。

 玄月2尉がマイクに指を添えこう答えた。

「局長、いらしたんですか。先の池袋事変。私達は貴重な操縦者アクターを危険に晒すばかりか、手も足も出ない状況でした。そうしたことを鑑み、この何も無い平和な日に教練として、事変再現を行っていました。」

「いい事ですね。しかし、せっかく何も起こらない平和な日なのです。いつ事変が起こるか分かりませんが、あまり根詰めないようにね。それじゃあ、先の命令忘れずにね。」

 コンソールにヘッドセットを戻し、私たちは発令所を後にした。

 歩く、さらに歩く。

 ようやく局長室へ到着する。

「失礼します!」

 遥が大声でそう言うからびっくりした。

「別に今日はいいのよ。普通にしてて。」

 そうはいきませんと、遥は局長室で直立不動だ。

「はいはい、わかりましたよ。ほら乗ってください。」

 そういい局長室最奥の扉を開ける。人4人が乗れるサイズのエレベーターだ。

 私たちは中に入り釦を押し、扉を閉める。

 ゆっくりとエレベーターは上昇していく。

 ほどなくして理事長室へとたどり着く。

 お掛けなさい。そう遥達を誘導する。

 理事長室のソファに3人して腰掛ける。

「あなた朝霞駐屯地時代と比べて少し変わったわよね?」

「そう、でしょうか。自分には何も。」

 部下を持って変わった。より命への執着が強くなっている。

 それに気づくのはもう少し後かもしれない。

 いまはまだいいでしょう。

 10分くらい待っただろうか。理事長室をノックされた。

「どうぞ。」

 そう答えると、失礼しますと城さんと鐘倉さんが入ってきた。

 うんかわいい。2人ともしっかり私服だ。

 ロングスカートにオーバーオール。遥も見習ってほしい。

「じゃあカスミへ行きましょうか。出発です。」

 理事長室を出る。校長室、職員室、エントランス。

 そうして校舎を出る。旧錦糸公園の桜はすでに散っている。

 4人で旧錦糸公園の歩道を歩く。

 オリナス前の信号でしばし休憩。

「やっぱ楽しいわね。女子4人で買い物。そうだ少しゲームしていかない?タイトーステーションがあったはずよね。」

 信号が青に変わる。オリナス正面入り口、ではなくその横エスカレーターを下っていく。

 下った先にはゲームセンターがある。

「さ、プリクラ取りましょう。……あら?コスプレですって!皆でやりましょう!」

 城さんと鐘倉さんはまぁまぁの反応だったが、遥は引き攣った顔をしていた。

「ご勘弁を!それだけはほんとに……。」

「だめ〜?詩葉見たいな〜?」

「んな!?……だ、ダメです!」

 硬いな。こうなればもう最終手段だ。

「対電波放送局トロイメライ局長、御園生詩葉が命令を下します。指示に従いなさい。」

 職権なんてこんな時じゃないと使えないんだ、効くかな。

「……………………はい……了解しました。」

 流石にこういう命令じゃ逆らえないんだ。まだまだだな。でもいいや。

「じゃあ遥これね。私アリス。城さんは……それは巫女さん?鐘倉さんはえ、そんなのあるの?ウエディングドレス?」

「局長、ちょっとこれは私には……。」

「命令無視します?」

「いえ、はい、着ます。」

 みんなはそれぞれ更衣室に入っていく。

 元からコスプレの様な噛崎さんは私服のまま撮るらしい。

 いってらっしゃ〜い。って手を振りながら笑ってた。

 ブラウスを脱ぎ、スカートを脱ぎ。アリスの水色のエプロンドレスを着る。

 コスプレって初めてだけどこんな感じなんだ。

 本気の人はウィッグもつけるんだろうな。

 私は化粧も最低限だし、次の機会があったら用意してみよう。

 更衣室を出ると私が1番だった。ぞくぞくと更衣室から出てくる。

 城さんは髪を後ろで結んでいるのでよく似合う。神社にいそうなそんな感じ。

 鐘倉さんはもう、素が出来上がっているから綺麗なお嫁さん。これは誰にも渡せない。

 そしてもう1人。

「遥〜まだ〜?」

 更衣室のカーテンから顔だけが出てくる。

「無理です!無理!着替え直していいですか!?」

 私は更衣室に近づき遥にニコッと微笑んだ。

 気が緩んだ隙にカーテンを開いき切る。

 そこには黒と白、メイド姿の遥の姿があった。しっかりニーハイまで履いてる。あとはヘッドドレスか。

「いやぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」

 ふにゃふにゃとその場に座り込んでしまった。

 あった、ヘッドドレス。そっと頭に乗せて完成。

「ほらいくわよ!立って立って。」

 靴を履かせ、プリクラの機械に向かう。

 嫌がる遥を押し込んでいく。城さんと鐘倉さんはまぁまぁ乗ってくれている。

 お金を入れる。機械がポーズを選んでくれる。それに従い写真を撮る。

「遥固い!もっと笑って!」

「餘目曹長、諦めたほうがいいですよ、この場は楽しまなくちゃ。」

「えっへへ、プリクラ何年ぶりかなぁ。」

「ボク実は初めてなんだよね!楽しい!」

 パシャリ、パシャリと数枚撮影する。

「さ、落書きですよ~、あ!ほら遥笑ってない!猫みたいにしてやる!」

 スタンプを押し遥の顔にひげを描く。

「ほんと勘弁してください。自分には合いませんから……。」

 狭い落書きブースに5人の女子。とても狭い、でも楽しい。

 はたから見れば年も若い。遊びに来たお友達に見えるだろう。

「ほら城さん、こんなにかいちゃいますよ~。太陽のスタンプを押しちゃいます。私にとっての太陽だから。」

「ちょっと!やめなさいよ!恥ずかしい!」

「じゃあボクは鐘倉3曹に月のスタンプ!2人は専属という形で繋がってる。太陽あっての月だからね!」

 そうして落書きが終わり印刷されてきたプリクラを5人で分ける。

 鐘倉さんは生徒手帳に貼っていた。

 城さんは懐中時計を取り出し、蓋の裏に貼った。

 残りの2人はどうするか考えている。まぁあとでいいか。

 更衣室に戻り全員、私服に着替え直す。

 プリクラが終わり、別のゲームへと移動する。

 湾岸ミッドナイト。車の運転ゲームだ。

「これで勝負しましょう!」

「ボクは実は酔うからパス〜」

 その他4人はそれぞれの椅子に座りお金を入れる。

 例えゲームとはいえもちろん車の運転なんて初めてだ。

 ゲームが始まる。かなり白熱する。ドリフトなんかもあるらしい。

 さすが操縦科生徒、城さんと現職遥が1着2着であった。

「やっぱみんなでゲームは息抜きになるわね~。次来るときは景品とか取りましょう!さてカスミに行きますか。」

 ゲームセンターを後にする。地下駐車場を通りカスミ フードスクエア オリナス錦糸町店へ到着する。

 かごをカートに乗せ、店内へ入っていく。

「値段は気にしなくていいわ。局持ちで出します。必要経費です。いいもの食べましょう!」

 ここまでくるといよいよ暴走しかかっている。女子会は必要経費。かつ局の経費で落とすらしい。

 青果コーナー。目に映るフルーツをかごに入れる。苺、林檎、パインアップル。

 BBQに必要な野菜。トウモロコシ、葱、ピーマン等、目についたものからかごに放り込む。

 主役のお肉も大切だ。

「遥、一番いいやつとってきて、でかいステーキみたいなのとか。」

「了解しました。」

 そういうと遥は牛ロースステーキ。パックからはちきれんばかりの肉を人数分取ってくる。

「わかってるじゃない遥、ナイス!」

 他にも串焼き用の細かい鶏肉などを買い足す。

「スイーツは料理大好き補給課に任せてあるので大丈夫でしょう。」

 彼らも不憫である。大急ぎでBBQのセッティング。その上、女子会用のスイーツの作成。

 彼はきっと驚くことだろう。局員食堂の調理場、その冷蔵庫の中にはスイーツづくりに必要な生クリームやフルーツがあらかじめ用意されている。そう局長が事前に昨日買い込んだのだ。

「さてあとは、飲み物ね。好きなの取りなさい。どうせなら2Lのペットボトルにしましょう。みんなでシェアするの。」

 炭酸に、紅茶。コーヒー。次々とかごに入れる。

 ショッピングカートは上下段ともにかごはいっぱいである。

 そうして会計。ゆうに3万円越えである。

 私は、局用のクレジットカードを使い会計を済ませる。

 その間3人はそれぞれレジ袋に食材を詰め込んでいく。

「5袋に分けていいよ~。」

 そう声を変えけたが遥から

「局長に持たせるなんて出来ません。」

 と返されてしまった。これも含めて女子会なんである。

 私も持つといい、5袋に分ける。

 私たちは重たい荷物を持ちながら帰路につく。

 さすがに5人じゃ理事長室のエレベーターは無理だ。がそれでも乗れるエレベーターがある。

 学校に帰り、一般用のエレベーターに乗る。私は鍵穴に鍵を差し込みまわす。押せないようになっているボタンが光る。

 それは地下基地行き。ゆっくりと下がっていく。

「このエレベーター繋がってたのね……。」

「いつも気にしてましたがまさかこんなことになってるなんておもいませんよね~。」

「普段は使わないだろうからな、知らないのも無理はないだろう。」

「まぁ、幹部クラスじゃないと鍵持ってないからね。」

 地下基地内へ到着する。

 荷物を持って格納庫へと向かう。

 途中何度も局員に荷物を持ちますと話しかけられたが、やんわり断る。

 これも女子会なんです。

 格納庫へ到着すると、そこでは玄月2尉がBBQ用のコンロで火を起こしていた。

「空調全開!火災警報鳴らすなよ!」

「了解、空調全開。いっそ火災警報切りますか?」

 うーんいい感じの非日常。こんな日があってもいいね。

 こちらに気づいた玄月2尉が近づいてくる。

「あの、局長。なぜBBQ用コンロが格納庫にあったのでしょうか。」

 ああそんなことか。

「私が買っといたのよ。アマゾンで。流石に基地に配送する訳にいかないから、理事長室からここまで運んだのよ。きつかったわ。」

 女子会には一切妥協しない。それが私。

 局員総出で女子会の準備を行っていた。

 それはそうだ、あんな放送入って上官の玄月2尉や兼坂砲雷長をほっておける士官はいないだろう。

 厨房では補給課、衛生課みんなでスイーツづくり。

 買ってきた荷物を下ろす。

「さぁ!女子会を始めましょう!」

 アツアツに熱された網の上に野菜や肉を並べていく。

 頃合いを見てトングでひっくり返す。

 食堂から持ってきた焼き肉のたれをつけて食す。

「ん~~~、おいしい~~。やっぱこれよね~。」

 女子会最高。さぁ、皆も食べてと促す。

 今日は無礼講である。出来れば身分も忘れて楽しんでほしい。

 普段は体中べとべとのオイルまみれになりながら、整備を頑張る鐘倉さん。

 3人しかいない操縦者アクター。互いを信頼し、この江都東京を守る遥と城さん、そして噛崎さん。

 男性ばかりの職場でやりにくいこともあっただろう。

 そんな労を労って今日は存分に楽しんでほしい。

 うーん女子会とは言ったけど、みんなが頑張ってくれている。みんなで楽しまなくちゃ。

「さぁ、調理場から食材を持って来なさい。皆で楽しみましょう。今日はトロイメライパーティです!交代で見張りを厳となせ。それ以外は楽しみなさい!」

 格納庫は煙が充満している。換気扇も全開である。

 局員はみな、コンロに向かい肉を焼き始める。

「あー、一応勤務中にはなるのでお酒は禁止ですからね。ほらそこ、なんでチャミスルなんてあるのよ禁止!」

 あー楽しいな。久しく忘れていた。この感じ。作戦行動に押しつぶされる日々。そんな日々を蹴散らして、今のこの女子会が楽しくて仕方ない。

 願わくばこんな日常が続きます様に。

 電波体バグに追われる日々の隙間。

 そんな隙間にあった輝かしい一瞬の思い出。

 興が乗り、自然と局員同士が肩を組む。

 そうして局員達は皆一様に歌い始める。

 「「「かたい絆に想いをよせて〜♪」」」

 左右に揺れながら歌い続ける。

 局員の年代とは違うと思う。名曲ではあると思うが。

 長渕剛の乾杯である。確かにそんな雰囲気ではあるが、なぜこのチョイスで、みんな歌えるの。

 そんなことは置いといて私達も肩を組み歌い始める。

 「「「君に幸せあれ〜♪」」」

 指笛が鳴り響く。ボルテージは最高潮だ。

 男子禁制で始まった女子会も終わりを告げる。

 最後に、手の空いた局員全員で写真を撮った。

 格納庫にあった3機の人型装機リンネにもピースをさせる。

 もちろん局長命令での遊びである。

 中央には女子5人。そう今回の主役。

 局長が用意した夏休み。私たちは煌めいた。

 ――――――――――――――――――――

 新兵器の運用が本格的に始まる。

 私たちはより効率的に電波体バグと対峙することが出来るようになっていた。

 そんなある日、対電波放送局に悲劇が襲い掛かる。

 次回、《ハルカカナタ》

 私はまた、奴らに憎悪した。

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