インモラルanother world

YOUTHCAKE

第1話 waves

明翫の海は、海が泡立ち、白く波が立っていた。俺は、この海が大好きだ。今日も、自身で車を運転し、ルーフに乗せたサーフボードを片脇に抱えて、凪いだ海を見ている。


水面に歩み出し、俺は手で海を掻いて沖に出て行く。水音が俺を呼ぶ。「ザパー」と唸る波が、俺を急き立てる。


立ち上がった濁流が、俺を焚きつける。俺は立ち向うようにボードの上で立ちあがり、波に背を向ける。対峙した相手を、まるで味方につけるように。


高く盛り上がった海の山に、俺は乗っている。そして、やがて砂浜にいる数名の野次馬の歓声を浴びながらも、俺は波に乗り続けた。


「ふう。」俺は、波と戯れた数時間を過ごした後、海から身体を揚げた。白い砂浜を歩くと、両生類だったころを思い出すようだ。ヤドカリが、俺に従うようについて歩く。


「ねえ。」と声がする。俺は、声のする方に振り向いた。「素敵ね。私にも教えてくれない?」と女が言った。


返事を待たずに女は言った。「どのくらいやっているの?」と言って、右肩に担いだボードに目を向ける。「10年くらいかな。地元だからね。」と俺は言った。女は、「すごいね。」と言った。


真っ黒く肌を焼いた女は、沖へ歩いていく。「どうやるの?」と振り向きざまに言った。「まず、足が着くか着かないかのところまで歩いて。」と僕は答えた。


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「結構、見ているよりもやるのって大変なのね。」と女は言った。1時間ほど練習して、女はボードの上で立ち、見事に波に乗って見せた。呑み込みが早い女だ。


「まだまだだけど、センスはあるな。」と俺は言った。女は、「そう。ありがと。お礼に奢らせてよ。今夜開いてる?」と言った。俺は、「19時からなら。」と言った。別に予定はなかったが、暇人であることを悟られたくはない。


「わかった。AveNueBarっていう店があるから、その時間になったら来て。gongleで調べたら場所すぐ出るから。わかると思う。」と女は言った。俺は、「分かった。じゃあ。」と言って、その場を去った。


ミニクーパーのルーフにサーフボードを乗せた後、俺は車を西に走らせた。夕日が眩しい。

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