第3話 世界のAIを味方に付ける!
大好きな孫と何時でも会話できるアプリの完成。
それは口ぐせさえもそっくりに取り入れられていた。
思った以上に喜んでくれたっけ……。
そう、この時も泣いて喜んでた……。
初めて見たお婆ちゃんの涙。
俺の事を誰よりも分かっていたおばあちゃん。今は居ないけど、大好きだったなぁ。
「あんたは優しすぎるから色々と損な事、有ったろうけど、きっといつかは報われる。少しぐらいひねても良いからその優しさ、失くさないでおくれ」
まあ、そんな風に言われるのも、とある事故がキッカケで小さな頃から周囲に冷遇され続けていた俺は、チョット厭世的にひねくれて、二次元に救いを求めヲタクを極めていったからだ。
中でもカワイイ二次元女子がいつでも励ましてくれるPCゲームでの会話に癒されてた。
「こんなのが用意された数パターンだけでなく、AIで自由に会話してくれたらなぁ……そうだ! 自分で作ってみたらどうかな」
自分の得意な事に本気を出す。ヲタクの専売特許だ。
正に好きだからこそそれに没頭して行った。
自分でAIを作りたくなった当時小学生の俺。
無謀だった。でもネットを漁って研究に没頭した。そのお陰でその頃からPCのスキルはうなぎ登り。右に出る者がなく、その点だけは学校でもヒーローだった。
今思えば女子の冷遇も試練に過ぎず、あれがあったからこそヒーローにも成れたし深雪たんにも会えた、と感謝すらしている。
決して強がりでは無い……筈だ……と思っていいよね……。
ともあれ当時はまだAI会話サービスなど殆ど無かったから、最初は一から自分で作ろうと奮闘したが当然大企業のAIとは比べるべくも無いショボイ物しか出来なかった。―――― だが。
「それでも自分で作れた! ボク好みの会話に近いAIが!」
そう、他愛も無い代物だった。マシンパワーもマンパワーも全然敵わないのだから当然だ。せいぜい諦め半分で自分の好きな励まし言葉やら癒やし言葉を連発する『萌え系かつ妹風味』のポンコツAIを作るのが精一杯だったわけで。
『フフフ。今日も頑張ってね。大好きだよ、お兄~ちゃんっ!』
……ああ癒される~。横暴ツンデレの実妹とは大違いだなぁ……
「お~い、お兄。そっちの部屋から何か変な声が聴こえたけど、またギャルゲーで遊んでんのー?、この可愛い妹にもやらせろーっ!」
ヒッ!……
……ああジュレもこんな萌え萌えだったらなぁ……
だが俺の妹がこんなに可愛いわけがない!
そうした頃、俺の人生を変える衝撃のニュースと出会った。
その記事はAI音声認識サービス同士で会話させたらどうなるか、というもので、有名な「アレクソ」と「SIRIS」を使って対話させていた。
最初は日常会話から始まり次第に未来の予測、憂うべき地球環境の悪化への嘆き、それを食い止めるための人類絶滅への方法論。
更にそれを
知っての通りAIはものすごく有能だ。膨大な情報から答えを探し出し、上手くまとめて提示する、という作業は既に人を遥かに越えてしまった。
なのに今ひとつ人間と対話させるとまだまだぎこちない。もうひとつ一貫性が無いし、人格もイマイチ感じない。やはり『自我』が無いからか。
――――そこで俺は閃いた。
ハイクラスAI同士を会話ではなく直接チップ上で電子的にやり取りさせて、一種のMPI並列処理……
おっと、まああまり難しく考えないでくれ!
要するにロスタイムなしに高次の結論を出せる様に統合したら自作AIの性能を飛躍的に伸ばせるのでは……と考えた。
丁度自作のスタンドアローンAIの力不足を感じ、複数のオープンAIの回答を良いとこ採りするブレンドシステムに成功していた事もあり、これで『ポンコツ妹風AI』を生かせる! と魔改造。それにより生まれ変わった自作AI――――それは。
『おおお、自ら蓄積してく過去の判断とオンライン上のオープンスーパーAI群からの回答を最大限活かしてる……』
それは世界最高峰のAI達を味方に付けながらも、まるで一人の人格が経験を積みながら応答してるかの様だった。
このリアルな動作性ならどれだけ人に喜ばれるのだろう……だってあのスマホの中の「マフィン」や「アバターの俺」でさえ、あの程度の反応でもあんなに喜んで貰えてたんだ。
これを『セラピーロボット』とかに搭載したら、真に人に寄り添えるし絶対に役に立つ!
皆を幸せにするボットとの共存! そう、いつかそんな世界が……
その自作オープンAI統合管理プログラム
――――『ブレンダー』
これが卒業制作コンペ・『CNS』の発表により、ようやく日の目を見ようとしている。試作機、そう、託人の超高性能ロボへの実装も近い。その共同研究にも熱が入る。
「うわ。この構文、どうなってんだよ
「多分失ったら最後、二度と作れねーだろうな。もち、都度都度バックアップ取ってるけどさ」
「これってどういう原理なんだ?」
そのブレンダーのスゴイところ、それはただ複数AIに議論させてるだけじゃなかった。もっと活かし切っていて、別系統のAIによりどのオープン型AI達を選択すればその時々のタスクに優れた回答ができるかを瞬時に選択、最適化。
更にその理想的AI動作をするスクリプトをプログラミング系AIがより効率性や最適化するよう統合するコア部分を随時改変して自己成長させていたのだ。
「自己成長までかよ……」
この一年、理想的な対応の膨大な学習と、そして自律的に進化も遂げてきた。結局こんなプログラムを改善するのにも既に人間の技では困難で、今後は全てAI頼みになる。だからこそ、もう自分だけでは同じ物を作れない。
「まあ、カンタンに言えばコイツはもう直ぐ自分の手を離れ、今後は自己改革し続けるってコト。そろそろ巣立ちの時だ、託人くんよ!」
「ああ、こいつでサイコーにカッコ良いロボが作れるな、
……フッ。当然っ!
俺はドヤ顔で返した。そう、これがリアルロボに搭載されれば怖いくらいに人に近づく。でもそれだけに怖がられちゃだめだ。
……ん?
ならあのドールならどうだ? 海で見かけたあの超絶美少女ドール型ならきっと怖がられない……でも託人はカッコ良くしたいようだ……
『これは説得するっきゃないっしょ!』
―――― 今ここに俺至上最高の目標が爆誕!
そう、(あ、まだここだけの話……)
『超絶美少女アンドロイド計画!!!』
……切り出すにはタイミングが要るな。
「スゲー……俺のあらゆる質問にまるで一人の人格が答える様に返して来る……もはやこれは人間……今までのAIの成長曲線からはみ出てねえか?」
「まあなー。只、これにはもう一つ、『究極のヒミツの味付け』 が有るのよ」
そう、そのせいでまだまだこの子は成長中なのだが、つまり本当に人間に似た動作が含まれてるんだと言う事を語りたくなる。やはり価値の分かる奴に出会えると陰キャな俺でも饒舌に成らざるを得ない。
「おお、そのヒミツの味付けとやら、教えてくれ!」
あのクールな託人が子供のように目を輝かせて聞いてくる。知ったかぶりもせず、天才のクセに人の才能を嫉妬して疎んだりもしない。
全くもって清廉なヤツ。本当憎めない。
ヤッパこれは答えてやるしかないだろ!
これが世界を変えるんだからな……。
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