午前0時のバーテンダー
草陰の射手
第1話 非日常の日常①
――それは、いつもと同じ日常の風景。
事件は、とあるお客の来店から始まった。
鎌倉の由比ガ浜近く。老舗のパティスリー『プチ・エトワール』に来客を告げるドアベルの音が響いた。
「いらっしゃいませ」
パティシエ見習いの櫻井
お客はまだ小さな赤ん坊を抱きかかえた若い母親だ。
ケーキ用の冷蔵ケースの方ではなく、棚に乗せられたカゴの中の様々なパンを物色しながら他の客と同じように店内を歩いていく。
それだけなら何の問題もない、いつもの光景だった。
突然、子供の泣き声が響いた。
「ああ、はいはい…もう、やっと寝たと思ったのに」
母親がよしよしと宥めているが一向に落ち着く気配はない。
(随分、必死な泣き方だなぁ)
火が付いたような、とは子供の泣き声の表現のひとつだが、本当にそんな感じの泣き方だ。その声に何かを感じて、尊はもう一度そちらへ視線を送る。
泣き出す赤ん坊。
またかというような表情を見せる母親。
それも、よくある日常の一コマだろう。
だが尊には、非日常的なモノが視えてしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます