第12話水に沈む木片

「シコルだけ」


 なにが展示されているのか分からなかった。


店先で後ろ手を組みキョロキョロしている魔法使いのお婆さんの様な女が立っていた。


 藍は、その女に店へ入れと促され思い切って店先に立った!

「面接の人かえ?なにやっちゅう?こじゃんと待っちゅうのにひょっと中に入りや?」


おずおずとドアを開け、闇が深い森の中へ脚を踏み入れた。


 バチン!


 何かが弾けたような音がして、一斉に店内が昼の様に展示品の埃や値札の一字一句まで読み取れる明るさに変貌した。


「欅、真言宗?」


「紫壇、黒壇?」


「そうなが、これは木やのに水に沈む木やきね。」


「そうですか、スゴイですね」


「い、イヤイヤ!仏壇屋さんじゃないですかここは?」


「そうながよ!」


「立派なデリバリーヘルスハートケアながよ?」


口をあんぐり開けたまま藍の顎は暫く元に戻らなかった。


 やっと思い直して「シコルダケのデリヘルじゃなかったんですか、ここは?」更に目が点になり店内を繁々と見渡してから改めて藍の置かれた立ち位置を見詰めきょうの日の出来事を朝からリフレインを始めた刹那。


「ワタシは徳永町子、アンタは藍ちゃんと呼ぶきね!?」

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