ひかりのメロディ:自らの歩み、町の語り部へ

みっちゃん87

第1話 不完全な日常

冬の寒さが町にしっかりと根付いていたある日、小さな家の中で、ひかりちゃんは彼女の部屋の窓辺に座り、外の雪景色をじっと見つめていた。彼女の目には、過去のトラウマと現在の孤独が混じり合って光っていた。

窓から見える子供たちの雪合戦の声が、遠くの記憶を思い起こさせる。小学校時代、ひかりちゃんは同級生から冷酷なイジメを受けていた。そのトラウマが彼女を内向的にし、人との関わりを避けるようになっていた。

その日の午後、ひかりちゃんは家の物置を整理することになった。埃を被った古い箱を開けると、中から父親の古いギターと、何枚ものフォークソングのレコードが現れた。彼女はギターを手に取り、弾いてみようと試みたが、上手く音は出せなかった。しかし、ギターの弦が奏でる音は彼女の心に柔らかな温もりを届けていた。

レコードをかけると、フォークソングのメロディが部屋中に響き渡った。彼女は、そのメロディに身を委ねて、心の中で歌い始めた。

「これは、私の父が聴いていた音楽なんだ」と、彼女は思い、涙を流した。このギターとレコードが、彼女の新しい人生の始まりを予感させるものとなることを、その時のひかりちゃんはまだ知らなかった。

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