ネット図鑑

月簡

1話 図鑑を見つけたんだけど……?!

「あ゙ぁ……」

 なんでこんなことに。そう、柳は思った。

 暇つぶしにと、ネットサーフィンを初めてはや数時間。ウイルスファイルをダウンロードしてしまった。

 柳はパソコンに強い方ではあったが、ウイルス対策ソフトでメモリが占領されることを嫌っていた。案の定、ファイルの多くが破損していた。

「クソが……」

 柳はネット掲示板を開き、スレッドを建てようとした。だが、つい数秒前に建てられたスレッドが目に止まった。

「俺たちで『ネット図鑑』作ろうぜwww」

 というスレッド。

 柳は興味を持って開く。まだレスはなく、そこにはスレ主が貼ったURLがあった。

 サイトには、大きく「ネット図鑑」と書いてある。サイドバーに「お問い合わせ」や「ネット図鑑とは」ともある。

 何だこの、面白そうなところは……。ブックマークしておこう。柳はそう思い、ブックマークした。


 後日、柳はそのことを家に呼び出した、友人である水川に話した。

「へー、面白そうやん。俺にもそのURL教えてくれよ」

「ああ」

 柳はメッセージアプリを開くと、ネット図鑑のURLをペーストして送った。

「おお、サンキュ……あ、アクセスできないってよ。柳、タイプミスした?」

「いや、ペーストしたから間違いないはずなんだが」

 水川は不思議そうな顔をしている。

「じゃあいいや、柳、お前のスマホで見してくれよ」

 柳はスマホからそのサイトのURLを入力し、アクセスした。相変わらず大きくネット図鑑と書かれている。

「これだよ」

「…………おい、なんで真っ暗な画面見せるんだよ。はあ。つまんねーな」

 水原は厄介そうな顔をした後、帰り支度を始めた。

「あ、おい、これが見えないのかよ」

「つまんねーからな、それ。……まあいいわ。また連絡してくれ」

 なんで水原に見えないんだ……。


 水原が帰った後、柳はネット図鑑を眺めていた。

 「お問い合わせ」の欄が消えていた。それどころか、掲示板でのそのスレッドも消えていた。

 何段だ、このサイト。柳は思った。

 サイトを眺めていたとき、不意に更新された。サイドバーに「目標」と書いてある。不審に思いつつ、柳はアクセ視する。

 そこにはこう書いてあった。

 「ネット図鑑をご利用の皆様、私、当管理人です。このサイトの謎に、たどり着きつつありますか?

 あなた方にはこの図鑑をお埋めていただきます。私が埋めても良いのですが、エンターテイメント性にかけるのでね。

 まずはこのサイトに登録していただきます。メールアドレスを入力するだけです。不審に思うなら結構です。後で痛い目を見るだけですからね」

 そのしたにはメールアドレスを入力する欄がある。

 柳は不審に思ったが、謎のサイトから登録を迫られるという、この面白そうな状況と、管理人の言う「痛い目」の不安があったため、自身のアドレスを入力した。そうすると、メールが届いていた。

「登録ありがとうございます。ちなみに登録しなかった方は死んでいます。

 ネット図鑑を埋めると、一つ願いが叶います。ですが志半ばで挫折した場合、という罰が与えられます。

 まずは明日の朝、ニュースを見ればいいでしょう。複数の怪死体が発見されることです」

 柳は思わず言った。

「何だよ、これ」


 画面の奥……世界の何処かで管理人を名乗るピエロの面が笑っていることも知らずに。

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