第51話あなたを愛しています。結婚してください。
個室にレイモンドと一緒に入ると、思っても見なかったお2人が待っていた。
「レイモンド王太子殿下にレナード・アーデンがお目にかかります。」
そこにいたのは天界の王子様レナード・アーデン侯爵と最強の魅了の力使いのミリア・アーデン侯爵夫人だった。
おとぎ話から飛び出してきたような光を放つお2人だ。
私の恩人のエレナ・アーデン侯爵令嬢を育んでくださったご両親だ。
「私の魅了の力も消えたから、あなたが飲んでも大丈夫よ。とても辛かったわね。」
アーデン侯爵夫人とは一度しか顔を合わせたことがないのに、遠いサム国まで人を使わずわざわざ薬を届けてくれた。
きっと私が安心して薬を飲めるように、魅了の力を持つ当事者である自分が届けようと思って届けてくれたのだ。
「う、ううっ。」
涙が込み上げてきてまえが見えなくなる。
この力を持ったが為にあった辛かったことがたくさん蘇ってきた。
「私、もう、魅了の力で人を殺してしまっています。精神を破壊してしまったのです。」
私はひったくり犯の精神を咄嗟に破壊してしまったことを思い出し告白した。
「魅了の力にかかった人を治す薬もあるから大丈夫よ。」
アーデン侯爵夫人の言葉に思わず隣にいるレイモンドを見るが涙で視界がぼやけてほとんど見えない。
「王宮であのひったくり犯はまだ保護しています。だから、大丈夫ですよ、エレノア。」
レイモンドはよく私に大丈夫だと言ってくれたが、その時は本当に大丈夫だった。
だから、彼がそういうのならば大丈夫だと心から安心できた。
薬を入れてくれたというグラスを掴もうとしても、手が震えてしまう。
「エレノア、良かったら口移しで飲まして差し上げましょうか?」
レイモンドが言った言葉に震えが止まった。
そのような恥ずかしい真似ができるわけがない自分で飲もう。
私は一気にグラスに入った薬を飲み干した。
「即効性があるから何が変わったか分からないかもしれないけれど、もうこの瞬間からあなたの魅了の力は消えているわ。」
アーデン侯爵夫人が優しく私に語り掛ける。
「わかります。私の魅了の力が消えたということが。」
私の言葉にアーデン侯爵夫妻は驚いたように顔を見合わせた。
会ったこともない天才の男の子が薬を作り、長い時間かけて治験をし、遠いところから私を安心せるために最強の魅了使いがわざわざ持ってきてくれた薬が効かないはずがない。
「レイモンド、あなたを愛しています。私と結婚してください。」
私はそういうと、隣にいた彼の唇に軽く口づけをした。
レイモンドが驚いたような顔で私を見ている。
彼の自分の感情に正直すぎる驚いた顔を見るのを楽しみにしていた。
「遠いところから、わざわざ私の為にいらっしゃって頂きありがとうございました。アーデン侯爵令嬢が歳月にご結婚されるということでおめでとうございます。諸事情でお伺いできないことをお許しください。アーデン侯爵令嬢に12年前私を誘拐してくれたことのお礼を言いたいです。落ち着いたら必ず改めてお礼に伺わせていただければと思います。」
私は衝動的にレイモンドに口づけをしてしまったが、まずはアーデン侯爵夫妻にお礼を言うのが先だったと思い彼らの方に向き直した。
薬を作ってくれた男の子にもお礼を言いたいし、アラン皇帝陛下にもお礼を言ったほうが良いだろう。
おそらく彼ほど優秀な人ならばカルマン公爵家の特徴に気が付きあそこを刑務所にし、司法取引をすることで獄中出産する妊婦に協力を依頼したはずだ。
国がばたついている時でエレナ・アーデン皇后の誕生の瞬間にお祝いに伺えないから、遠くから彼女の幸せを祈ろうと思った。
遠くから来てくれた2人をお見送りすると、レイモンドが突然誘拐犯のように私を抱き上げてきた。
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