ミラーレスカメラ

 婚約指輪の礼に、妻からミラーレスカメラをもらった。妻の名前を呼び、妻が振り返り、微笑み、ポーズを決めて、シャッターを切り、パシャりという音がする。シャッターを切るとは、それ自体が「僕は今かけがえのない時間にいて、幸せだよ。」というメッセージである。写真に映る人たちは、主役のようで、実はあくまで撮り手が放った愛の受け手なのだろう。

 妻からもらったカメラを通して、妻に愛していると伝える。いずれ、伝える相手は二人に増えていくのかもしれない。

 カメラは、日々の瞬間を切り取るのではなく、日々に新たな幸せの瞬間を創造する物なのだと、シャッターの音を聞くたびにその感懐を抱いた。

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