第27話 エメラルドに一生仕えたいアーバンーその2
「アーバン、今日は魚の塩焼きが食べたいわ。大根おろしは皆ですります。あとは当然、お味噌汁もね! もちろん今日はお米を魔石炊飯聖器で炊いてちょうだい」
お米はこの国からかなり遠く離れた異国から輸入している。エメラルド奥様がアドリオン男爵家の財力と人脈を駆使してやっと見つけた物だ。エメラルド奥様は魔石を使った炊飯聖器まで発明し、今では誰でも白米を食べることができる。
「かしこまりました。ですが、魚はめちゃくちゃ濃い味で煮込まないと生臭さが残るかもしれません。このあたりで手に入る魚って臭みがあるのが多いです」
エメラルド奥様は、私の作り方を見て顔をしかめた。取り出した魚にすぐ塩を振り、オーブンに放り込もうとしたからだ。
「まず、ウロコとエラは取りましょう。それからお腹のほうに包丁をいれて内臓をとります。血合いはその魚の口から歯ブラシを突っ込んで、綺麗に全部取り除かないと生臭いからね。ゼイゴも取り除く。よく水気を拭き取ったら塩を両面に振って10分放置。でてきた水分、これが臭みよ! 流水でさっと洗えば、かなり生臭さがとれます。あとは塩を振ってオーブンで焼く。魚を内臓もとらないで調理するから臭みが残るのよ」
このように言われてしまい少しばかり凹んでしまった。もともと、この世界ではこってりソースが主流で、なんにでもそれをかけることが多かった。複雑な味のソースをつくることがシェフの腕として要求されてきたのだが、最近は奥様の影響でこの世界自体の食生活も変わった。
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どの雑誌もこぞって掲載した味噌・醤油を使ったお料理レシピはたちまち大人気となった。世の中はこれからきっと、エメラルド印の調味料でいっぱいになるよ。すごいよなぁ。私はエメラルド奥様に一生お仕えできたらいいな、と思っている。
今日のランチは魚の塩焼きの大根おろし添え。青菜のお浸しに味噌汁だ。味噌汁はわかめとトーフとネギ。肉じゃがも小皿で添えた。これも奥様に教えてもらったレシピ。ちなみにトーフもエメラルド奥様考案の、大豆を使った食べ物だ。
全てが整ったら実食。まずは塩焼き魚をそのまま食べる。こんがりと焼けた香ばしい魚には、生臭さは微塵も感じない。皮はカリッと中はしっとりと焼かれた魚の身は、かすかな甘みまであり臭みは全くなかった。
次にレモン汁につけて食べるがこれもさっぱりと美味しくて、最後は大根に少し醤油をたらして一緒に口に放り込む。なんと、1尾の塩焼きで、三度おいしい食べ方がここにはある。
肉じゃがは甘辛く味がしみたジャガイモがほくほくで、サヤエンドウの緑とニンジンの赤も引き立ち、肉はあくまで添え物で野菜が主役の一品になっている。
また、この味噌汁がいいよなぁ。なんだろう、このホッとする味わい。わかめとネギとトーフはもはや味噌汁のなかでは神に近い!
やっぱり、私の主人はオーガスタム様じゃないな・・・・・・うん、エメラルド奥様だ!
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