第25話 猫獣人ラーニャの楽しみ

「そういえば、昨日からノウィルって名前が流行ってるみたいだにゃ」


「旅人さん達から聞いたの? ラーニャは遠くまで声が聞こえるものね」


「そうにゃ!」


 ラーニャは猫の獣人にゃ! 看板娘の名にふさわしい可愛い容姿をしてるって褒められるのが好きにゃ。


 旅人さん達は違う世界から来てるみたいで、ラーニャの知らない話をよくするにゃ。だから、ノウィルって子も旅人さん達に関係するんだと思うにゃ。


「会ってみたいにゃー」


「ふふっ、会ってみたら良いじゃない? 旅人さんなら、会うことができるかもしれないわよ」


「確かにそうにゃ! だらけてる姿を見られるのは嫌にゃ。頑張って働くにゃ!」


「頑張ってね、ラーニャ」


 頑張って仕事をしたら、お母さんに一時間の休憩時間を貰えたにゃ。その時間でノウィルって子を探しても良いって、お母さんが言ってくれたにゃ!


「ふふふっん! にゃー、にゃにゃ!」


 ルンルンの気分で街を歩いていたら、なにかが燃える音が聞こえてきたにゃ。燃えてるものなんてどこにもないのに、不思議だにゃ。


「にゃにゃっ!」


「どうしたのかい? 私になにか用でもあるのかね?」


「も、燃えてるにゃ! 大丈夫かにゃ?」


 真っ赤な髪と瞳の女の人が私の隣を通ろうとした瞬間だったにゃ。メラメラと燃える音が聞こえたにゃ。


 人が燃えるはずないのになんでかにゃ? 瞳が合うと少し怖い感じがするにゃ。


「そうかい、耳が良いんだねぇ。お前さんはなにか探し物でも、してるのかい?」


「ノウィルって子を探してるにゃ。旅人さん達から名前を聞いたにゃ。理由はわからないけど、仲良くなりたいと思ってるにゃ」


「旅人って旅をしている人だろう? なぜ宵闇の図書館にいるホーラの主さんのことを知っているんだい?」


 宵闇の図書館ってなにかにゃ? どこかで聞いたことがある気がするにゃ。確か、確かにゃ…? 考えてもわかんないにゃ。


「ホーラって人の主様がノウィルって子なのかにゃ?」


「そうだよ。ホーラの主さんのことは教えてあげるから、旅人さん達のことを教えてくれるかい?」


「わかったにゃ! 教えるから、ノウィルって子の話も教えてにゃ! 旅人さん達は神様の導きで来た違う世界の人にゃ。ここ十年ぐらいで旅人さん達は増えたらしいにゃ」


 メラメラの女の人はなんか考えてるにゃ。時間が経ちすぎてイライラしそうになってたときに、やっと考えるのを終わらせてくれたにゃ。


「そういうことかいな。私はホーラの主さんってことしか知らないんだよねぇ。お母さんに許可を取れるなら、一緒にホーラの主さんのところへ行くかい?」


「行くにゃ! お母さんのところに行くから、着いてくるにゃ」


「強引だねぇ。そういえば、自己紹介をしないといけないね。私はフェニックス。幻獣と呼ばれる者だ」


「酒場の看板娘のラーニャにゃ。よろしくにゃ!」


「よろしくね、ラーニャ。私のことは、そうだね。フェニとでも呼んでくれれば良いよ」


 フェニックスだから、フェニなのかにゃ? フェニックスよりも、可愛くて好きにゃ! 今もルンルンの気分でフェニと歩いているにゃ。


「ふふふっん! にゃー、にゃにゃ!」


「変わった鼻歌だねぇ。可愛くて、癒される」


「にゃ?」


「なんでもないよ、ラーニャ」


 ルンルンの気分のまま歩いていたら、いつの間にか酒場に戻ってきちゃったにゃ。


 中に入ると、がやがやとした酒場特有の話し声が聞こえてくるにゃ。


 フェニが入ってきた瞬間に静まり返ったけどにゃ! フェニは綺麗なんだから、当たり前にゃ。


「あら、ラーニャじゃないの。お姉さんに送ってもらったの?」


「違うにゃ。お母さんにお願いがあって来たのにゃ」


「私から言うのかい? 良いけどねぇ。ラーニャのお母様にお願いがあってねぇ。この子をホーラの主さん、ノウィル様のところに連れて行きたいから、許可をお願いしたいんだ」


「そういうことなのね。ラーニャにはいつも酒場を盛り上げて貰ってるから、ご褒美ということにしましょうね」


 ほんとかにゃ? お母さんの瞳をじっと見つめると、頷いてくれたにゃ。ほんとに、ほんとかにゃ?


 嬉しいにゃ! ノウィルって子になんでかわからないけど、会いたかったんだにゃ。すっごく嬉しいにゃ!


「はしゃいで可愛いわねぇ」


「お母様もそう思うのかい? ラーニャは愛嬌があるよねぇ」


「そうよね! フェニさん、だったかしら? 良かったら、いつでも遊びに来てちょうだい。ラーニャを可愛いと思う人に悪い人はいないもの!」


「じゃあ、お言葉に甘えて遊びに来るよ。今日はお酒を頼めるかい? そうだねぇ、エールを頼むよ」


 ノウィルって子に会える嬉しさで、ラーニャはお母さんとフェニがそんな話をしてたことを聞いてなかったのにゃ。


 聞いてたら恥ずかしくて、隠れちゃってた気がするけどにゃ!


「そうだ、旅人さんはいるかい?」


「違う世界からの旅人さん達だったら、あの席にいるわよ」


「ありがとう。私が頼んだものはあそこに届けてくれるか?」


「ラーニャが届けるにゃ! 待っててにゃ」


「お願いするよ」


 フェニが旅人さん達のほうへ行ったのを見届けてから、仕事に戻ったにゃ。忙しいけど、やりがいを感じる大好きな仕事にゃ。


「お待たせしたにゃ! エールですにゃ」


「ありがとう、ラーニャ。ホーラの主さんのことは誰も知らないようだけど、ほかにも聞くことは残ってるからね。お酒がなくなったら、追加を頼めるかい?」


「普段はそういうサービスやらないけど、フェニだから特別にゃ!」


「そうだったのかい。今度からは注文するね」


「それが良いにゃ!」


 やっぱり仕事は楽しいにゃ。息抜きも楽しいけど、仕事が一番楽しい気がするにゃ! そう言ったら友達に変人だと思われたけど良いんだにゃ!


「エール二つ!」


「はいにゃ!」

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