第22話 ギャル先輩も義理の妹に……?

 幸せ過ぎる夜を迎えて俺は一晩中、瑠海を愛し続けた。

 時間を忘れ、夢中になって肌を重ね合わせ……気づけば朝を迎えていた。いつの間にか寝落ちしていたようだ。


 まずい、今日学校があるのに……。

 回り切っていない頭の中、俺は仕度を進めた。


 そうして時間を迎え、制服に着替えた俺は玄関へ。


「……隼くん、早いってばぁ」


 涙目で玄関へ走ってくる瑠海。時間ギリギリまで眠っていたせいで、慌てていた。瑠海は今日も仕事だ。


「ちゃんと待ってるよ」

「うん、ありがと」


 ようやく仕度を終えた瑠海と共に外へ。

 途中まで歩き、そこで別れることに。



「じゃ、俺は学校へ」

「了解。また夕方頃に迎えに行くよ」

「助かる! 瑠海、愛しているよ」

「うん、私も隼くんのことを愛してる」


 俺は最後まで瑠海を見送り、姿が見えなくなったところで歩きだした。



 * * *



 学校へ到着、教室へ向かい――授業を受け続けた。


 それにしても……。


 瑠海のいない学生生活はつまらないな。



 友達がいるわけでもないし、当然誰かと付き合っているわけでもない。俺の青春はもうあのアパートにしかない。


 しかし、昼休みに入ると事態は急変した。



「おーい、大島。お前を呼んでいる人がいるぞ」



 どこで昼を食べようかと模索していると、同じクラスの江藤が話しかけてきた。俺を呼んでいる人……? 誰だ?


 そんな人がいた覚えがないのだが、廊下へ向かうと見知った人物がいた。


「こんにちは、大島くん」

「井村屋先輩!」

「ちょっとお昼いいかな」

「ええ、まあ……」


 連絡先を交換した仲だし、それに先輩なら……いいか。


「良かった。じゃ、屋上へ行こっか」


 手を引っ張られ、俺は少し――いやかなり照れた。周囲の目があるっていうのに! けど、けれど……ドキドキした。


 屋上へ向かい到着早々、井村屋先輩は柵の方へ。外の世界を眺めるかのように先輩は風景を望んだ。



「用件はなんです?」

「この前、振られちゃったじゃん? あれが妙に納得できなくてね」

「……気にしていたんですね。ていうか、振った覚えはないですよ!?」

「だっておかしいじゃん」

「なにがです……?」

「自分で言うのもアレだけど、わたしってほら……可愛いじゃん。胸だって大きいよ」


「そ、それはそうですけどっ!」


 だからといって、自ら胸に触れて見せつけないで欲しいが……眼福である。


「でね、怪しいなって思ったんだ」

「はぁ……え? 別に俺には何もないですよ」

「ごめん、朝見ちゃったんだよね」

「え!?」


 井村屋先輩は、頬を掻き複雑そうに朝のことを言った。


「大島くん、千城のお母さんと一緒だったよね」

「……み、見ていたんですか!」

「たまたま通りかかって目撃しちゃった。ねえ、どういうことなの?」


 そりゃ、千城の元カノからすれば不思議すぎる光景だよな。

 けど詳しく説明しないと、いろいろ誤解を生みそうだ。

 そ、そうだ。

 俺と瑠海は別に“兄妹”なんだから、なんの問題もない。ただ、これをどう説明するかだ。……む、難しいな。


 ええい、ここは……そうだな。



「じ、実は……瑠海は“義理の妹”なんです」

「――へ? い、妹……? 義理の?」


 なんの冗談と井村屋先輩は、結構引き気味だった。当然の反応だ。だが、ウソは言っていない。


「細かいところは省きますが、俺の実年齢は21歳。瑠海は20歳なんですよ」

「うそ……」

「千城の件以来、俺と瑠海はそういう関係です」

「そ、そんなことあるの……!?」


 驚きのあまり腰を抜かす井村屋先輩。


「すみません。でも、本当なんです」

「その真剣な眼差しで分かるよ。ていうか、そっか……それで千城は……」

「ええ、あとは察しの通りです。千城はもう俺たちと別れ、独立しました」

「いや~、いろいろ驚いたわ。じゃあ、付き合ってはいないってこと?」

「それが……また別の話でして」

「あ~、なるほどね。でも、そう聞かされてちょっと燃えてきちゃったな」

「はい!?」


 まてまて、今ので諦めないつもりなのかよ。

 普通こんな話を聞かされたら、関わりたくなくなるはず。


「まさか千城の母親を妹にしちゃって付き合っているとは思わなかったよ。うん。でもね、わたしは諦めない! まだ結婚しているわけではないでしょ!?」


 なんちゅうポジティブな人なんだ!

 そこまでして俺を狙う理由はなんだ……?

 いや、そりゃ……井村屋先輩はキャピっとしていて可愛いけど。


「俺はそんな魅力のある男じゃないですよ」

「ううん、そんなことない。いっそ、わたしも妹にしてもらおうかな~。ほら、わたしも年下だし」


「なんでだよっ!?」


 これ以上、話しをややこしくしないでいただきたい!

 てか妹を増やしてたまるかってーの。12人とかいたら、そりゃもう大変ってレベルを超えちまう。そんなギャルゲーみたいな展開があってたまるか!


「じゃあ、そういうわけだから!」

「どういうわけだ!?」


 だめだ、井村屋先輩……俺のツッコミを完全スルーしてやがる。……いったい、これからどうなるんだ?

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