第27話 ナギの村

キルトはどこに行ってしまったんだろう…

しばらく会っていない。


ひとり旅なんてあこがれてもいないし、自分探しもしていない。

自分にご褒美を与えるとするなら、出かけるんじゃなくて、ひきこもりたい。



そんなことを考えながら歩いていると、「ナギの村こちら」という看板が目に入った。

しばらく行くと、村があった。


ナギの村に入るといきなり魔物が現れる。

剣をぬくと、魔物の側にいた人間にとめられた。


「勇者様、お待ちください!この魔物たちは人を襲ったりしません!」



そんなことがあるのか?



でも確かに、魔物は全く襲って来ない。



あの、「神の宿る祠」の近くにいた、チワワのような魔物もいたが、尻尾のようなものをちぎれんばかりに振っている。

尻尾を振るチワワもいるのか!

前足の毛も簡単にカットさせてくれるなんて!



「この村にいらっしゃる聖女様が、村の中だけ魔王の力を封じているのです。それでここにいる魔物たちは、人間と仲良く暮らしています。」

村人が教えてくれた。



やばい。

多分もう限界なんだ。

聖女まで使い始めた。

これはあきらかにネタ切れだ。

途中でどこで何をしたらいいのかわからなくなって、また最初の村や町の人から同じ話を順番に聞いていくのと同じくらい愚かだ。


もう鍵のかかった塔のこともどうでもいい。


もう、いいんじゃないか?


キルトと会えたら、魔王倒しに行こうか?


なんて誰かに向かって問いかけてしまった…



「勇者様が魔王を倒してくださったら、村の外にいる魔物もみんな、ここにいる魔物のように、人間と仲良く暮らしていけるはずです。」

村人が言った。



本当にそうなのか?



魔王を…倒す…か…



村人が言った。

「ちなみに、こちらにいらっしゃる聖女様は、「転生したら結婚式当日に妹に婚約者を奪われ、追放されたけどスローライフを満喫しながら辺境の地で王子様に溺愛される聖女」様でいらっしゃいます。」



村人はまだ話し続けていたが、ナギの村を後にした。

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