第2話『変形』のゴーレム 6

「ギンタ殿だ。悪いゴーレムじゃないよ」


 武装した村の若者達が12人程集まると、村長さんが俺を紹介してくれた。


「ほれ、お前達も挨拶せんか」


 村長さんに促されて村人が一人一人紹介してくれた。


 顔と名前を覚えるのが苦手なんだよな。サラリーマン時代はそれでかなり苦労した。顔は覚えてても名前が出て来なかったりして、もちろんその逆もある。せめて名刺をくれよ。


 とにかくリーダーのアルフレッドの名前と顔はなんとか覚える事は出来たが、他の人はちょっと怪しい感じだ。


 その後の作戦会議は、俺に気を使ってか引き続き村長さんの庭で行われた。


「カーレ湖付近で目撃されたのは狼型の魔物が3匹だ。この魔物は手強い人間が居ると知れば、その人間がいる村は襲撃しなくなる。討伐は兵士に依頼を出してはいるが、いつになるかわからない状態だ。なので村に被害が出ないうちに先手を打つ。傷を負わせることが出来れば充分な戦果だ。くれぐれも無理はするなよ」


 アルフレッドかっこいいな。仕事が出来る頼れる男だ。こいつだったら年下でも上司にしたい。


 それぞれの役割について話し合う。回復魔法を使えるのが2人、攻撃魔法が使えるのが4人、残りは武器で戦う。


 斥候役が2人で魔物の位置を確認。囮役はリーダーのアルフレッドが担い、みんなの所へ誘い出したところで一斉攻撃という流れになった。


 俺は何をしたら良いんだろう。聞きたいけど俺は話せないからな。


 リーダーのアルフレッドが俺の視線に気付く。何をしたら良い? アルフレッドに届けこの思い!


「俺の言葉の意味が解るなら頷け」


 俺は迷わず頷く。


「よし。ギンタは先行して空から魔物の居場所を探して教えてくれ。ギンタの姿を見たら、それだけでも逃げる可能性はあるけどな。なんなら倒してくれても構わない」


 おいおい。俺の実力を知らないだろ。倒せるなら既に1人で行ってるぜ! 偵察だけに専念させて貰う!

 

 俺はアルフレッドに作戦を理解した事と、やる気をアピールする為に翼を大きく広げた。途端に強風が吹き3人が吹き飛んだ。


 ……ごめん。ワザとじゃないんだ。


「村長……、こいつ一匹だけで全部討伐出来ると思いますよ!」


 アルフレッドが、こめかみを押さえながら怒鳴った。



 目的地は馬で3時間くらい掛かるらしく、今から出発しても到着した頃には日が暮れてしまう。なので出発は翌日の朝日が出る前の早朝となった。


 カーレ湖って俺が鏡の代わりに使おうと思った、あの湖だよな。俺は飛べるからあっという間に付いてしまい、今は湖の上空を旋回しながら、念願の自分の姿を眺めている。


 良かった、オカメインコじゃなかった。どちらかと言えば猛禽類だな。鷹か鷲の様な姿だった。


 それはそれとして、空から湖の周りを探してみるが木々が邪魔で魔物が何処に潜んでるのか、まったく分からない。

 

 レーダーを起動させてみたが生き物が多くて、どれが魔物かまったく分からない。


 うん。俺、役立たずだな。


 皆を待った方が良いのかな。いやダメだ。出来る男のアルフレッドに指示待ち人間、いや指示待ちゴーレムなんて思われるのも嫌だし、今出来る事はしておこう。


 レーダーで魔物だけを探せないかな?


『レーダー情報解析。魔物だけを表示します』


 これは出来るのか!


 頭の中の声はいつも後出しだからな。前もって教えて欲しいけど、文句言っても仕方ない。


 とりあえず湖の大きさに合わせて、レーダーを半径3キロに絞り探してみると10匹もいた。多すぎるだろ!


 どれが狼型の魔物だ?


『狼型だけを表示します』


 ちょうど3匹が表示された。なにこれ、レーダー凄い。万能過ぎて逆に怖い。


 とりあえず俺の攻撃方法を考えてみる。今の所は翼と足と嘴か。


 足の爪で引っ掻いたり、握り締めて倒すのも、口で突っつくのも却下だ。ゴーレムだから病気にはならないだろうけど、俺の精神衛生上良くない気がする。翼で起こした風で吹き飛ばすなんて魔物相手にダメージなんて与えられるのかな?


 倒せる気が全くしない。やはり偵察だけで充分か?

 

 俺は古代兵器なんだよね。頭の中の声の人、他に攻撃方法ないの?

 

『変形により武器の使用が可能になります。変形しますか?』


 ……だから遅いって。その情報もっと早く知りたかった。


 湖の上を飛んだ時、自分の姿見たけど、確かに人型へ変形出来そうではあった。だが考えて欲しい。変形だよ。身体があちこち折り曲がって収納されるんだよ。俺の体がどう変わるの?


 しかし、魔物を足で握り潰したり、口で突っつくよりかはマシか。


 よし! してやるよ! その変形ってやつをな!


『戦闘モードに移行』


 …………。


 一瞬だった。自分でも何処がどう動いて、どう収納されたのかは解らないけど、確かに人型になった。


 手があるし足もある。背中には翼がる。


 もしかしてと思い湖に移った自分をみると人型の整った顔がある。

 

 ロボだ。ロボがここにいるぞ。


「凄いな。これならその辺の木を武器の変わりに出来る」

 

 試しに木の枝を拾って振り回してみる。


「うん、コレなら魔物でもダメージを与えられそうだ」


 まてよ、戦闘モードとか言ってたよな。俺専用武器なんてあったりするのかな?


『専用武器の使用は司令官の許可が必要です』


 ここで司令官の許可が必要なのか。少年に呼びかけたが返事はない。腕輪外してるのかな。


 なんか無性に会いたくなってきた。早く村長の依頼達成して少年に会いに行くとするか。

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