人狼ゲーム 政府の陰謀?
@Hirobe-na
第1話 思わぬ再会
梅雨の時期に入り、蒸し暑い日々が続いていた。
新聞記者として働く里沙は4月から新しい部署である政治部に異動し四苦八苦していたところだった。昔から誰よりも正義感が強く、曲がったことが大嫌いだった。高校生の時も学級委員をずっと務めて、クラスに問題が起きればすぐに対応していた。もちろんそんな里沙を煙たがる人もいたが、それでも自分の正義を常に貫きたかったし、何よりも「正しく生きる」ことが彼女の人生のモットーである。高校生までは群馬県の片田舎で過ごし、大学から上京してきた。大学卒業後は、世の中の真実を人々に伝えたい、悪事を働く輩を暴いて更生させたいとの思いから新聞記者になった。それから5年の月日が経ち今年で27歳になる。
今日は里沙の心はウキウキしていた。高校時代からの親友である永田 由梨に会えるからである。由梨も同じく群馬から東京に上京してきて都内で勤務している。数日前に親友からSNSで「今度会おうよ!他の高校時代の友達にも会えるよ!」との連絡がきた。一体誰だろうと思いながらも身支度を済ませて家を出ることにした。
約束の駅に着くと、既に由梨は到着していた。由梨は里沙に気が付くと優しいそうな笑顔で、
由梨「元気?新しい部署は慣れたかな?」と聞いてきた。
里沙「んまあね・・・。色々大変だけど・・・。」。
父親が長らく国会議員である由梨は、里沙の大変さを何となく理解していた。そんな話をしながら、二人はある小さなカフェのようなバーのような一軒の店に着いた。
由梨「今日はここだよ。」と言い、中に入って行った。
里沙も由梨に続いて中に入ると、そこには店員の男性1人とカウンターのような席に1人で座る男性がおり、2人が入ると男性も2人もこちらを見てきた。里沙はすぐにその2人が誰なのか理解した。高校3年生の時のクラスメイトだった根岸 哲平と栗田 順である。
根岸は里沙と同じ中学で、高校3年生の時は同じ学級委員を務めた男である。普段から優しく、成績も常にクラスでトップであった根岸を里沙はしばし頼りにしていた。根岸はやや変わり者であり、あまり誰かと群れるのを好まず一匹狼のような男であったが、里沙は何かある度にこの男を頼っていた。そんな時、彼は「はいはい」と言って頼んだ事を常にやってくれる存在であった。一方の栗田は、根岸と同じサッカー部に所属しており、クラス内では悪グループ4人組の1人であった。比較的顔立ちも整っている方であるが、そのグループにいた事もあり里沙はそこまで良い印象を彼に持っていた訳ではなった。
栗田「おお!永田来たか。ってか宮野じゃん。」
さらに根岸の方を見て
栗田「宮野、綺麗になったね。高校の時は芋臭いって感じだったのにね。」と笑いながら言った。
一方の根岸は「宮野じゃん。」と言い、こちらに驚いている様子だった。
どうやらここは根岸の店であり、つい最近オープンしたばかりであるとのこと。栗田は頻繁に友人である根岸の店に通っていた。最近オープンしたばかりで、住宅地にポツンとある小さな店は常に混んでいる訳もなく栗田によっては良い場所であった。つい先日、偶然道端で栗田が由梨に会い、その栗田が由梨を店に呼び、さらに由梨が里沙を誘った流れだったようである。由梨もその店が根岸の店であるとは知らされていなかったため驚いていた。さらに根岸は栗田から事前に何も聞かされていなかったため、2人が来た事に一番驚いていた様子だった。
店に入って以降は、4人でたわいもない話をしながら酒を飲みながら楽しんでいた。
根岸「まあこれで俺もうざったい会社員生活とおさらばできた訳よ。今、ここで働いてるのは俺一人だし、特に何かに気を使わなくちゃいけない訳でもないし自分にあってるからね」と言っていた。根岸がみんなの酒を取りに行くと栗田は、
栗田「あいつはさ、能力も高いのにどっか内向的というかさ、そうゆう感じだよね。高校生の時も、クラスで一番頭良かったし、サッカー部でも一番うまかったのに。主役になれるだけの実力があるのに、主役になろうとしないタイプだよね」
と言った。里沙にも何となくその意味が理解できた。
根岸が酒をもってきて、そこからまた近況の話や高校時代の話が盛り上がり、途中で学生時代の恋愛の話にもなった。
栗田「そういえば根岸さ、高校生の時ラブレターもらってたよね。」と笑いながら言った。根岸は黙りこみ、由梨も沈黙のまま根岸を見ていた。
栗田「やっべえ。この話は禁句だったな。ごめんごめん。そういえば、宮野は他校の男と付き合ってたっけ?」
里沙「んまあ。すぐに別れたけど。」
由梨「変な男だったしね。むしろ別れて正解だったでしょ。」
栗田「そうなの?どんな?」
由梨「捜索しないの。」
里沙「まあ2股されてたみたいな?」
根岸「そうだったんだ・・・。知らなかったわ。てっきり長く続いていたのかと。」
里沙「全ぜーん。付き合ってたのも2カ月もなかったんじゃない。」
根岸「ってかさ、今ふと思ったんだけど、この4人って高3の遠足同じ班じゃなかったっけ?」
由梨「確かに。言われてみればそうだ!うちらは1班だったよね、里沙?」
里沙「そうだ。遠足とかめっちゃ懐かしい・・・・。」
根岸「宮野がリーダーで、副リーダーが俺。栗田が時計係で、永野が保健係だっけ?」
栗田「冷静に考えて時計係はマジでいらないよな。みんな携帯とかスマホ持ってるんだし」
根岸「いらんいらん」笑
里沙と由梨も笑っていた。昔話は予想以上に盛り上がり、あっという間に時間が過ぎた。栗田が外にたばこを吸いに行き、由梨がトイレに行った。里沙は、飲み終わったグラスや食べ終わったお皿を一人片づける根岸に近づいた。
里沙「改めて久々だね~。高校生の時以来だね。何してるかなって気になってたんだよね。」
根岸「そう。まあ今日いきなり入ってきた時は驚いたよ。新聞記者なんて相変わらず昔のままって感じやね。政治部の記者ってことは、マイク持って政治家にインタビューするってこと?」
里沙「そうだよ。まあ政治家だけじゃないけど、こんな感じにね」
と言いながら、実際にマイクを当てるしぐさを根岸にやって見せた。
里沙「オレンジジュースは好きですか?」
根岸「はあ?」
里沙は根岸が飲んでいたオレンジジュースのグラスに目をやった。
根岸「そうですけど」
里沙「それではもう一つ質問です。今、彼女はいますか?」
根岸は一瞬驚いた様子をしながら里沙の目を見て言った。
根岸「いませんけど、何か?」
里沙はマイクを当てるしぐさを辞めながら言った。
里沙「やっぱりね~。そうだと思ったよ。」
根岸「記者のくせに失礼やな。自分から聞いたくせに」とあきれ気味に言った。
里沙「そうじゃなくて。あの事を今でも気にしてるんじゃないかなって思ったの」
数秒の沈黙と一度深呼吸した後、
根岸「別に気にしてないよ。」
里沙「そうか。それならよかった。まああんたは悪くないからね。昔から変に真面目なところあったからさ」
里沙と根岸は視線を感じ目をやると、トイレから戻ってきた由梨が2人をじっと見ていた。
里沙「由梨戻ったんだ。」
由梨「うん。」
するとたばこを吸い終えた栗田も戻ってきた。
お開きの時間になり、みんな帰る支度を終えた。
根岸「みんな元気そうでよかったよ。」
里沙「あのさ、また来ていい?」
根岸「良いけど。記者さんの愚痴を吐く場所にする気?」
里沙「別に良いでしょ。お客さんとして来るんだから。ちゃんともてなしてね。」
根岸「あ、でも政治家とか連れてくるのなしね。俺あいつら嫌いだから。」
里沙は由梨の事を気遣いながら言った。
里沙「ちょっとそうゆう言い方はないでしょ。」
由梨「まあ別に大丈夫だよ。みんなそれぞれ意見はある訳だし。」
栗田「政治家に対してみんな良い印象持ってないのは事実でしょ。それと永田の父さんを悪く言ってるのとは別だし。」
由梨「そうだね。私は本当大丈夫だよ。そろそろ時間だし行こうか。今日は楽しかったよ。みんなありがとう」
その日、一同は店の前で解散することになった。この時、再び再会することになるとは知らずに・・・・。
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