第29話


 「ごはん作るから、洗濯物干しといてくれないか?」


 「わかった」



 お昼は焼きそばを作ってくれるらしい。


 お腹ペコペコだ。


 祐輔の体に入ってから、いつも以上に空腹感を感じる。


 食べても食べても、いくらでも入るんだよね。


 男の子の胃袋ってでかいんだなーって思った。


 この前病院の売店で買ったカップヌードルを、全種類制覇しながら。



 「あんま食べ過ぎんなよ?俺の体なんだから」


 「いいじゃん別に。多少ぽっちゃりしてても、誰も気にしないでしょ」


 「痩せてる方がモテるんだよ」


 「あんた彼女いんじゃん」


 「…ああ、まあ」



 彼女いんのにモテたいとか、ただのクズじゃん。


 せっかく出来たんなら、ちゃんと大事にしなきゃダメだよ?


 どんなズルしてゲットしたのか知らないが。



 「あのさ、その件なんだけど…」


 「ん?」


 「お前に頼み事があって」


 「何?」


 「…あとで言う」



 何よ…


 


 靴下を脱いで、網戸を開けて。


 縁側の廊下でスイカを食べてた。


 カランと氷が溶ける、グラスの中の麦茶。


 そっか。


 もうトンボが飛ぶ時期か。


 夏休みに入ったばかりだったのに、もう1週間も経たないうちに学校だ。


 宿題全然やってない。


 友達と遊ぶ約束をたくさんしてたのに、全部おじゃんだ。


 はぁ…


 何であんなことになったんだろう。


 空から何かが降ってきたって、…言うけど…


 …そんなことあるのかな…


 結局何だったんだろ


 ニュース見てても、ちっとも進展が無いんだ。


 人工衛星の破片だっていう噂が、立ってるには立ってるが。

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