第27話


 「うまくやれば他の人も説得できるだろ」


 「どうかな…。紗良は天然なところがあるから」


 「このまま誰とも連絡しないつもりか?」


 「うーん…」



 連絡してもいいけど、するならするでちゃんと計画を練らなきゃダメだ。


 下手なことして不審がられてもめんどくさい。


 私の体はあんなだし、いつ戻れるのかもわかったもんじゃない。


 ある程度目処がついてからでも遅くないでしょ?


 いつだって連絡はできるんだから。



 「そうか…?」


 「そうだよ。余計な心配しすぎ」


 「へいへい」




 夏休みが終わって、学校が始まったら、しばらく「橘祐輔」として過ごすことを決めた。


 そのうちに何か改善されるかもしれない。


 自分の体に戻れるヒントが、転がり落ちてくるかもしれない。


 そんな淡い期待を胸に秘めながら、軽トラに乗って郊外を走った。


 田んぼが広がる田舎道の上でガタガタ揺らされ、祐輔に家に着いた。


 2年ぶりだった。


 小ぢんまりした三角屋根の、その家を見たのは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る