第3話 召喚時の説明は省いちゃだめだろ
俺たちの体育の授業中、事は起きた。クソ暑い日差しの中、先生が席を外したグラウンドで持久走の前の準備運動をしている時。妙な違和感を覚えた。地面の土が辺り一面、光っているように見えたからだと思う。気のせいか、とも思ったんだけど...
――パッ――――
突然光は明るさを増し、俺を含む、クラスメイト29人を包み込んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇
えっと.........俺たち1組の、クラスメイトで体育を受けてた29人、全員居るな。バラバラだと、大抵少ない陣営に強いスキル割り振られたりするからそれがないのはナイスだ。多分。
「「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「どこだよ、ここ!!」
クラスメイトは冷静さを失い、俺たちの集団は阿鼻叫喚としていた、のだが――
「皆!落ち着け!」
陽キャ(?)グループの中心的存在である...え〜っと.........誰だったっけ。まぁいいか。なんたら君って呼ぼっと。流石陽キャ、まとめるのが上手い。
「ひとまず状況を整理しよう。」
――1. 俺たちは授業中であったことから別世界へ飛ばされたと考えられる。
――2. 俺たちは恐らく異世界の森にいる。危険度は不明。
――3. 食糧が無く、このままだと飢え死にする。
「現状、こんなものでしょ」
オタクが言ったことをそれっぽくまとめて陽キャが言うとクラスメイトも最初よりは落ち着いてきたようだ。そこでふと疑問が――
――きっと、俺の異世界生活を大きく変えたであろう、
「あれ?スキル選んでなくね?」
この、何気ない呟きの後、1秒も経たないうちに、俺の意識は白く染まった。
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◇
目を、開いた。
「.........どこだ...?ここ...」
俺は戸惑った。辺りを見回すと大理石で作られたような、無機質極まりない殺風景な部屋にいることが分かったからだ。
「俺だけ……?」
すると、
『スキルを選ぶ、という選択を貴方達一行が誰一人としてしないので、スキップしようと考えていました。』
――頭に直接響いている?……どこだ?誰だ?
『私は、この世界に貴方達を招いた女神「諸悪の根源か」です...ってええ!?』
だってそうだろう…。
『しくしく.........私はそのように思われていたのでしょうか...全員に...』
「いや、俺だけ...だと思うよ、うん」
『まあいいです。本題に入りましょうか』
「ッッ!?」
――女神の身に纏う空気が、がらりと、いや、そんな言葉が生温く感じる程に、重く変わった。
『貴方達にはこの世界に来て頂きましたが、特段理由はありません。強いて言うなら神々の娯楽であったり、世界の魔力バランスを整えるため、と言えるでしょう。』
「……ええ……」
夢見ていた、魔王討伐のために立ち上がる主人公パーティーのメンバーになるという短く儚い俺の夢は、粉々に砕け散った。
『あ、魔王はいますよ?でも、人間に特に危害は加えていないので。魔物も今や人間にとって大事な収入源ですし。』
あ、居るっちゃ居るのね。.........……っっ!?
『時間もないので、スキルを選ぶのなら「聖騎士の誓い」や、「魔力爆発」等の容易に火力の出せるスキルがおすすめです』
「……」
『あら、どうかしましたか?』
――――――冷や汗が...体の震えが止まらない。
いや、だって、それがあることが指す意味って――――
『大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?』
「...既に、クラスメイトのスキルは選んだんですか?」
『はい♪ランダムに選んだ後の残りですので、自由に選んで頂いて構いませんよ?』
「…………」
――ああ、神よ。いや目の前にいるんだけどさ。
――なんで.........……
「なんで「言語理解」がここにあるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
―――【悲報】クラスメイト全員、異世界語を話せない。
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