あの子に捧げる
@hitominotuyato_yasasiisitukann
ふくらはぎがいつもきれいだった
はじめての印象は完結で明瞭だった。
脚の形が美しい
この世から一つ理想の脚を選ぶとするならば、彼女の脚だと、中1のわたしは思った。
中1のわたしはうるさい人間だった。
人にあだ名をつけて、たいして仲良くのない大人しい子に話しかけるのが趣味だった。距離感の馴れ馴れしくなってきた子は、途端につれない返事をして突き放す行いを繰り返していた。いつも、つかず離れずの子だけとつるんでいた。それなりに満足していたとおもう。
彼女は、大人しい子だった。だからわたしの気軽に話しかける対象として、新学期そうそうに認定された。同じグループではないけど、同じクラスの女子として話した。彼女が近くにいるときは、英語の前置詞が難しいやら、お腹すいたやら、眠いやら、どうでもいい話題を振った。律儀に返事をしてくれる子だった。メールのやり取りもした。テスト期間に飽きて、暗号を送ったときに、数分後、正解が返ってきたときは、驚きとともに口角が上がった。
夏が来た。はじめてのテストが終わった。彼女の成績は張り出されるくらい優秀だった。
彼女の所属するグループには花形の運動部もいて、体育祭では活躍する部類の人間で占められていた。これからの学園生活で輝きの道を歩む(決して目立つ部類ではないが、存在感がある。そしてモテる)予感がした。彼女も、その一人だった。
わたしはクラスで彼女に話しかけるのをやめた。
彼女から話しかけられることはなかった。わたしは何とも思わなかった。
自分のグループに、それなりに、満足していたから。
コップの底が少し欠けたって、縁が欠けない限り気にならないもんだった。
部活が同じで仲良くなったらしい。中1の秋か冬くらいだった。彼女は彼氏をつくった。学年で一番偏差値の高いカップルだと囁かれた。
男子とまともに話せなかったわたしは、素直に、羨ましいなと思った。
高1
たまたまバスで、彼女と隣になった。近い距離なのに話さないのも気まずくて、内容は覚えてないけど会話を少しした。たぶん、中1の懺悔だった。
彼女は今は塾に行ってると話した。相変わらず頭はよくて、部活も部長として毎日頑張っていた。彼氏とも長く続いているらしい。
彼女は有名国公立大学へ進学した。誰もが認める順風満帆な人生だった。ひとえに彼女の努力の上に成り立っていた功績だった。わたしは羨望と憧れを嫉妬以上に感じていた。彼女は中1の頃から大人だった。周りから一目置かれる人だった。
彼女のことを好まない人はいないとおもう。
突如の魔の手が襲わない限り、彼女は大成する人物だった。
ひとかどの研究者として名を馳せるはずだった。
わたしは忘れないよ、憧れのきみ。
あの子に捧げる @hitominotuyato_yasasiisitukann
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
新米老後生活/みその ちい
★12 エッセイ・ノンフィクション 連載中 39話
不定期な雑記帳♪/麦柄けい
★15 エッセイ・ノンフィクション 連載中 144話
近況完全網羅備忘録/詩川
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 5話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます