インターハイ

7月25日 インターハイ展望

 7月25日を過ぎると、いよいよ高校全体にインターハイというムードが高まってくる。


 実際、多くのチームは開催地に集まり、練習に励むことになるのだが、サッカーは少し事情が異なってくる。開催地も日程も異なっているから、だ。


 男子サッカーの開催地は今年から恒常的に福島・Jヴィレッジ周辺での開催となる。また、U17の大会に何人かの選手が出場していたことで、他の競技に比べて開催が一週間弱遅れている。



 完全に独立した存在となっているサッカーのインターハイ。


 元々、夏の全国高校野球という強大なライバルがインターハイには存在している。他の競技全部を合わせても勝てない状況である中、サッカーが単独となってどこまでの注目度を集めるのか。


 幸いにして、今年はまあまあ注目度が高い。


 昨年冬、公立の進学校としてまさかの全国大会出場を果たして高踏高校が、今回は優勝候補として乗り込んでくる。得点王ランキングの1位、2位瑞江達樹と戸狩真治に加えて、日本代表となった立神翔馬と陸平怜喜がいる。


 稲城希仁、園口耀太、林崎大地といったサブ組にも代表候補になれそうな選手が出て来ている。


 チームを率いるのは、現役高校生という天宮陽人だ。先日、U17の新監督に就任した峰木敏雄も名前を出した気鋭の指揮官。


 県内のライバルである深戸学院を7-0で沈めたという衝撃もあり、注目度は俄然高い。



 正の注目を集めるのが高踏であるならば、負の面で注目を集めるのが今原学園だ。


 3月に自殺した2年生部員を巡るイザコザはこの春、継続的に話題となっている。週刊誌が顧問を務める監督と部長によるパワハラがあったと記事を書きはじめたこともあり、悪い意味で注目度を独占している状態だ。


 20年前なら間違いなく出場停止だっただろうが、近年は「連帯責任が行き過ぎている」という批判が多くなっていることから、監督と部長の交代を条件にギリギリ出場を認められた。


 しかし、今回は部員が死んでいるという事実もあるので「連帯責任を適用すべきでは」という声も大きい。


 こうした余波は各校にも及んでおり、高踏も含めた他校にも「どう思いますか?」という質問が飛んでくる。


 答えようがない。


「……僕達には詳しいことは分からないので」


 という以上の回答にしようがない。



 優勝候補の軸は高踏高校と目されているが、その他で有力候補を探す場合、対抗馬となってくるのは選手権で優勝した北日本短大付属だ。


 選手権優勝に貢献したメンバーの多くがチームに残った。エースFWの七瀬と、万能レフティーの佃に、守ることだけなら高校一と称されるようなになったGK新条の存在も大きい。


 この両校、高踏と北日本短大付属は福島入りした翌日の7月29日に練習試合を行う予定である。優勝候補同士の試合、更には「峰木監督が本当に天宮陽人を誘うのか?」という部分を含めて、関係者の注目を集めている。



 この両校を除いた最有力は武州総合だ。


 いや、本来なら高踏に次ぐ二番手評価だったのであるが、残念なことに中心選手である10番の高幡昇が先だっての代表戦で骨折してしまい、大会自体を欠場となることが早々に確定してしまった。高幡のいないチームを、さすがに北日本の上には置けないので三番手、あるいは五番手前後という評価まで下がってしまっている。


 それでも、頭脳派として評価の高いMF楠原に、キャプテンの紺谷、重量級のスーパーサブ源平と要所にタレントが揃っているし、存在感抜群の強面指揮官仁紫権太もいる。


 更には気合も違う。他チームが大体27日頃から福島入りすることになるが、それより一足も二足も早い20日から福島で合宿を張っている。


 順当に行けば三回戦で高踏と当たる。このことを尋ねられた仁紫は。

「熊谷は日本で一番暑い街なんですわ。暑さでもサッカーでも、東海に負けたくはありませんなぁ」と本気なのだか煙に巻いたのかよく分からない返事をして記事になった。


 更にこのボケとも言えるコメントには「東海で暑いのは浜松とか多治見、つまり岐阜と静岡だ。愛知は記録だけ見るとそこまで暑くないようだが」というツッコミも多数あったようである。



 選手権準優勝だった洛東平安は、前年度のメンバーと180度雰囲気を変えて攻撃的なチームとなっている。昨年、圧倒的に評価されたディフェンス力の高い一軍相手に紅白戦で鍛えられた下級生メンバーが成長してきたから、だ。


 攻撃力ナンバーワン予想は高踏であるが、二番手が洛東平安ではないか、という声は高い。



 もちろん、その他のチームも伏兵として虎視眈々と上位進出から、あわよくば優勝を狙っている。


 52チームが一同に会するのは開幕式の2日、その翌日の3日から8日間に渡って開催されることとなる。

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