第88話

アレンはクスに言われた薬草をすり潰していく。

アリアも横で同じように作業していた。

クスは手際よくすり潰された薬草の量を図り調合していく。

部屋にはただごりごりと薬草をすり潰す音がしていた。

沈黙に耐えかねたわけではないがアレンはクスに質問をする。

「これは何を作ってるの?」

「回復薬よ」

どうやら健全な薬だったようだ。

「こんなに作って売れるのかしら?」

「需要はかなりあるわね」

街で生活していても怪我をすることはあるし街の外に出れば獣や盗賊に襲われることもある。

正規の薬師も作っているがそちらは高い。

クスは資格こそ持っていないが腕の方は確かだ。

少しでも経費を削減したい人々が買い求めてくるのだという。

渡された薬草は全てすり終わってしまった。

「2人共ありがとう。助かったわ」

クスはそう言って調合を続けている。

「こちらこそ貴重な体験をさせてもらってありがとう」

薬師の助手なんて早々できない体験だ。

「私、黙々と作業するの割と好きかも」

アリアはそんなことを言っている。

「僕は飲み物を取ってくるよ」

そう言ってアレンはその場を離れた。




井戸に行って冷えた水を汲む。

厨房に戻りそこに買っておいた檸檬を絞ってくわえる。

よくかき混ぜコップに注ぎ2人の元に戻った。

クスの作業も終わったところのようで片付けをはじめていた。

「アレン。ありがとう」

「どういたしまして」

「これは2人の分よ」

クスはそう言って回復薬を1本ずつ差し出してくる。

「いいの?」

「えぇ。何かあった時の保険になるからね」

街にいる限り危険は少ない。

でも、何が起こるかはわからない。

アレンとアリアはありがたく貰うことにした。

「それじゃ。そろそろ寝ましょうか」

「うん。お休み」




慣れない作業をしたせいかすぅっとアレンは眠りにつく。

夜中に尿意を覚え目が覚める。

トイレを済ませ少し離れた位置で眠っているはずのアリアとクスの方を見る。

だが、2人の姿はなかった。

どこに行ったのだろうか?

玄関に行って靴を確かめる。

靴はあるので母屋の中にはいるようだ。

眠ることもできずしばらく待っているとガチャっとアリアの部屋の方から扉が開く音がする。

「アレン。起きてたの?」

「うん・・・。トイレに起きたんだけど2人がいなかったから・・・」

「ごめんね。心配かけて」

「何事もなかったならいいんだ」

2人で何をしていたかは気になるが男である自分には言いにくいことなのかもしれない。

もやもやはするがアレンはそのまま眠りについた。

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