第80話
アリアが泣き疲れて眠ったのを確認してアリアの部屋を後にする。
アレンは木刀を持って庭に出る。
修練を開始したがどうにも集中力にかけている。
原因はわかっているがどうすることもできない。
苛立ちが剣に伝わる。
普段出来ていることが出来ない。
それがまた苛立ちとなり剣に現れる。
このままではいけないと落ち着くために深呼吸をする。
落ちついてきたところでユーリが見ているのに気が付いた。
「お疲れ様です」
「先ほどから見ていたけれどずいぶん荒れているね」
自覚があっただけに何も言い返せない。
「アリアちゃんから何があったか聞いたんだね。怒りは原動力になる。だけど、それだけではダメだよ」
ユーリはアレンに言い聞かせるように話を続ける。
「怒ってもいい。だけど、剣を振るう際には冷静にならないとね」
「そういう経験があるんですか?」
「これでも騎士だからね。同僚や部下が傷つくこともある。相手に怒りを覚えることはいくらでもあるさ」
「そうなんですね・・・」
「冷静差を欠いた剣では守るべきものは守れない」
リーリッド流の流儀は人を守ることだ。
アレンは初心に戻り素振りを開始する。
1振り1振りに集中する。
今まで何となく振るってきた剣ではあるが今のアレンの剣には信念が籠っている。
それが今までとは違う境地にアレンを導く。
まだまだ未完成ではある。
だが、それは紛れもないリーリッド流の剣だった。
集中するあまりかなりの時間が経っていた。
全身から汗が滴り落ちる。
程よい疲労感を覚え、井戸で汗を流し母屋へと戻った。
皆寝ているようで母屋の中は静かだった。
アレンも布団に横になりすぐに眠りに落ちていった。
眠気の残る中、アレンが目を覚ますと食卓の方からいい匂いがしてくる。
そちらへ向かえば3人が仲良く料理をしていた。
「おはようございます」
「おはよう。アレン」
「もう少しかかるから顔を洗っておいで」
「はい」
アレンは井戸へと向かい、水を汲んで顔を洗う。
母屋へと戻ると食卓には料理が並んでいた。
温かいスープに麦粥、さらにはサラダまで。
「冷めないうちに食べようか」
その言葉を皮切りに食事に手をつける。
どれも簡単な料理ではあるがお腹が空いていたアレンはバクバクと食べる。
「味はどうかな?」
「とても美味しいです」
「それはよかった」
女性陣は美味しそうに食べるアレンを見て嬉しそうに笑っていた。
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