第79話

「アレンとは実力がかけ離れてしまったわね」

「アリアも修練を再開したらすぐ追いつくよ」

「そうだといいんだけど・・・」

アリアは何やら不安そうにしている。

アレンはアリアを元気づけたくて軽口をたたく。

「アリアもずっと頑張っていたじゃないか」

先輩達と何があったのかはわからないが全てが無駄だったとは思わない。

「アレン・・・。今夜、私の部屋に来て。何があったか話すから・・・」

「わかった・・・。」

アレンは真剣な顔をしているアリアを見て頷いた。

何があったのかはわからない。

だが、何があっても自分はアリアの味方だ。

アレンが修練に戻ってもアリアはただそれをずっと見ていた。




夕方となり修練を切り上げて母屋へと戻る。

アレンは汗を流すために井戸により、アリアには先に戻ってもらった。

考えてみれば以前は共に過ごす時間が当たり前だったのに先輩達と衝突してから2人で過ごす時間は少なくなっていた。

アリアが見ていてくれるだけで嬉しくて仕方なかった。

共にいられるだけで幸せだと思える。

顔に出せばユーリとクスにからかわれそうで心を落ち着ける。

何度か水を浴びて布で体を拭いて服を着て母屋へと向かう。

アレンが母屋に戻ると食事の準備は済んでいた。

「お任せしてしまってすみません」

「いいんだ。それより冷めないうちに食べよう」

「はい」

食事を取っているがアリアはどこか心あらずのようで話しかけられても曖昧な反応を返すだけ。

食事もあまり進んでいないようで心配になる。

クスとユーリはそんなアリアを労わるようにフォローしている。




食事を終え、ユーリとクスが食器の片づけを買って出てくれた。

アリアと共にアリアの部屋に移動する。

アリアは決心がつかないのか中々話そうとしない。

アレンは安心させるようにアリアの頭を撫でる。

アリアが深呼吸して何があったのか話しはじめた。

全てを話し終えた後、泣きながら謝ってきた。

「ごめんなさい。アレン・・・」

「ううん・・・。僕の方こそ気付いてあげられなくてごめん」

アレンはアリアに優しくする一方で怒っていた。

先輩達に対する苛立ちもある。

だが、一番に怒っているのは自分自身に対してだ。

自分がのんきに修練をしている間、ずっとアリアは耐えていたのだ。

今はクスが牽制してくれているがクスがいなくなればまた同じことが起きるかもしれない。

自分の弱さに腹が立つ。

アリアを抱きしめながらアレンは誓った。

大切な人を守れるようにもっと強くならなければ・・・。

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