第75話

夕食も食べ終わりアレンは落ち着かず木刀を持って庭に出た。

出掛けにちらっとみたクスは何やら本を読んでいた。

アリアとユーリがどうしてああなったのかはわからない。

クスも関係していたようだが自分に出来ることは何もない。

雑念を払い木刀を構える。

今は少しでも自分の実力を伸ばすべきだ。

自分がもっと強ければ2人を守れた。

自分に出来ることは剣を振るうことだけだ。




かなりの時間が経ち、アレンは荒い息をつく。

汗を流し母屋へと戻る。

クスは蝋燭の灯りの元でまだ本を読んでいた。

こちらをちらりと見てまた視線を元に戻す。

「何の本を読んでいるの?」

「試験に向けて知識の確認をね」

「難しそうだね」

「大の大人でも試験に落ちるのが普通だからね」

クスの話では薬師の試験では40を超えても試験に合格できない人がいるのだとか。

アレンが横になるとクスは蝋燭の灯を消して横になった。




アレンが目を覚ますと横にクスの姿はなかった。

厨房の方から何やら音がしている。

そちらを覗いてみればクスが料理をしていた。

「おはよう」

「起こしちゃったかしら?」

「ううん。顔を洗ってくるね」

アレンはそう言い残して井戸に向かう。

顔を洗い終わり戻ってきたときには料理が並べられていた。

「薬膳料理を作ってみたの。口にあうといいんだけど」

湯気の立っているスープに口をつけてみる。

独特な味ではあるけれど悪くない。

「美味しいよ」

「そう。よかった・・・」

食事を食べ終えると体がポカポカしていることに気づいた。

「なんだか、体が熱いんだけど・・・」

「薬膳料理の効果で血行が良くなっているのよ」

「そうなんだ。今なら何でもできそうな気がする」

「大袈裟ね。無理をしない程度に頑張ってね」

クスはそれだけ言って2人の寝ている場所に向かっていった。

2人はクスに任せてアレンは修練の為に木刀を持って道場の前に向かった。




軽く準備運動を済ませ素振りを行う。

普段よりスムーズに体が動く。

一通り動きを確認してから剣舞に入る。

自然と無の境地に入り、全てがゆっくり流れている気がする。

剣を振るうのが楽しくて限界まで試してみたくなる。

アレンは息が続かずはぁはぁと息をつきながら座り込む。

そこを先輩がアレンから隠れるように通り過ぎていった。

クスが先輩達に制裁を与えたと言っていたがそのことと関係があるのだろうか。

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