第74話

スラム街から抜け出てクスが次に向かったのは正規の薬屋だった。

クスは迷うことなく高価な薬を次々に手に取っている。

店員は心配そうにそんなクスを見ている。

こんな少女が代金を支払えるか心配しているのだろう。

クスはそんな店員を気にもせずに手を動かしていた。

「アレン。お金」

「うん・・・」

アレンは先ほど預かっていた袋をクスに渡す。

「これで足りるかしら」

「はい。十分でございます」

無事、代金を支払い薬屋を出る。

「それ、どうするの?」

「まだ、食事は難しいから2人に飲ませるのよ」

クスがお金を必要としていたのはアリアとユーリの為だったようだ。

「さて、用事も終わったし帰りましょうか」

「色々ありがとう」




道場に戻るとクスは早速、買ってきた薬剤で薬を作り始めた。

アレンはその様子を眺めている。

クスは迷うことなく手を動かしている。

「出来たわ。後は5滴ぐらいを水に溶かして完成よ」

クスは1個のコップをアレンに渡してくる。

「アリアちゃんに飲ませてあげて」

「うん」




2人の寝ている場所に行くとアリアとユーリは体は動かせないようだが目を覚ましていた。

「気分はどう?」

クスが話しかけるとユーリが答えた。

「中々に最悪の気分ね」

「起こったことを考えるとそうなるわよね。栄養剤を作ったからゆっくり飲んで」

クスは慣れた感じでユーリに栄養剤を飲ませる。

アレンもアリアの元に行って話しかける。

「大丈夫?」

「うん・・・。心配かけてごめんね」

「無事ならいいんだ。飲めそうかな?」

「うん」

アレンは頭を支えながら栄養剤を少しずつアリアに飲ませる。

全部飲みきったのを見届けてアリアの頭を撫でる。

「頑張ったね」

「ふふ。アレンに看病される日がくるなんてね」

「軽口が言えるなら大丈夫ね」

「貴方もありがとうね」

「いいのよ。元々は私にも責任があるからね」

「あいつらはどうなったの?」

「隙をついてある薬を飲ませたわ」

「ある薬?」

「一定期間、私の作った解毒剤を飲まないと体の一部がダメになる薬よ」

「貴方ってかわいい顔をして怖いのね」

「あの獣達には相応しい罰よ。水晶も全部回収したから安心して」

ユーリさんはそれを聞いて安心したようだった。

「そうか・・・。迷惑をかけてすまないな」

「いいのよ。そろそろ寝るといいわ」

「それじゃ。僕も行くね」

アレンとクスはそう言って2人の傍を離れた。

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