第70話
「アレン君は好きな人とかいるの?」
「いますよ」
「即答だねぇ」
「はは。本当に僕なんかでいいのかとか考えたりしますけどね」
「ふ~ん。その子が困ってたら助けたいとか思う?」
「僕の何を差し出してでも助けたいですね」
「そうかそうか。ちょっと妬けちゃうね」
「クスはそういう人はいないんですか?」
「こんなところで暮らしてるからね。来るのは獣ばかりだし・・・」
「それは大変ですね。どうやって自衛してるんですか?」
「危なそうなときは薬使ったりだね」
「薬って便利なんですね」
「便利だけど使い方を間違うと大変なことになるからね」
「そういうものですか?」
「その為の薬師だからね」
籠いっぱいになるまで薬草を集めて小屋に戻ってきた。
「やっと戻って来たか」
「先輩は慣れてますね」
「何回も来てるからな」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
そう言ってクスは先輩と奥に入っていく。
しばらくするとクスの怒声が聞こえてくる。
「あんた達、馬鹿なの?」
「そんなに怒るなって」
「怒るに決まってるでしょ。用量と時間はちゃんと守りなさいって説明したでしょ」
「そうは言ってもなぁ・・・」
アレンは気になって奥に向かう。
「どうしたんですか?」
「あんまり時間ないわね・・・」
「いや、今から街に向かうのは無理だぞ」
今は夕暮れだ。
夜に森の中を突っ切るのは危険すぎる。
「あぁ。もう・・・」
そう言ってクスは作業スペースで何かをはじめてしまった。
「先輩何があったんですか?」
「あぁ。ちょっとな。とにかく明日は朝一で街に戻るぞ」
「はい」
食事をとり早々に眠りにつく。
翌日、持てるだけの薬剤を持ち小屋を出発した。
クスは相当焦っているようで何度もせかしてくる。
昼頃に街につき、真っ直ぐ道場に向かった。
まだ修練の時間のはずだが誰もいなかった。
「アレンはこないほうがいいわ」
クスはそう言って先輩と共に去って行った。
アレンはここにいても仕方ないので母屋へと向かった。
夕方となりクスと先輩達に背負われたアリアとユーリが運ばれてきた。
アレンは状況がわからないなりに寝床の準備をする。
先輩達が2人を布団の上に寝かせる。
2人共顔は赤く時折体を震わせている。
「あんた達はもういいわ」
クスが冷たく言い放ち先輩達は何かを恐れるように去って行った。
「僕に出来ることは?」
「とにかく安静にさせるのが一番よ」
出合ってまだ数日だが、アレンはクスを信用することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます