第69話
ご飯も食べ終わりクスがお茶を出してくれる。
「お前、何か混ぜてないだろうな」
「ひど~い。善意で入れてあげたのに」
「そう言って何人犠牲になったと思ってるんだよ」
「薬学の進歩には犠牲はつきものなのだ」
アレンはせっかく入れてくれたのだからとお茶に手を伸ばす。
「あっ。すっきりしていて美味しいですよ」
「まったく。あんたと比べてアレンは可愛いわね」
「おい。アレン。すぐに吐き出せ」
先輩はそう言うが半分ぐらい飲んだところだった。
「あれ・・・?眠気が・・・」
アレンの意識はそこで途切れた。
アレンは鳥の声で目が覚める。
昨夜の意識が曖昧だ。
確か、夕飯を食べてクスの出してくれたお茶を飲んだら急に眠気が襲ってきたのだったか・・・。
「おう。起きたか」
そう言って先輩が顔を出す。
「すみません。先輩が運んでくれたんですか?」
「あぁ・・・。まぁ、警戒してても引っ掛かるやつはいるからな」
「ご迷惑をおかけしてしまって」
「そんなことより朝食出来てるから食べてくれ」
「あっ。はい」
アレンは慌てて起きて食卓に向かう。
席にはクスが座って待っていた。
「おはよう。気分はどうかな?」
「えっと・・・。いつもより体が軽いような」
「うんうん。実験は大成功だね」
そう言ってクスは笑っている。
「はぁ・・・。アレン。気をつけろよ。こいつの実験台にならないようにな」
「はい」
アレンは先輩の作ってくれた料理に手を伸ばす。
料理を食べ終わるぐらいに先輩がお茶を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「いいって。さてと、最初は俺がついて薬草を教えてやるから薬草を集めるぞ」
「はい」
「ふ~ん。私もついていっていい?」
「お前の自由だが調剤はいいのか?」
「予定分はもう終わってるからね。今はアレン君が気になるかな」
「お前もアレン狙いかよ・・・」
小屋を出て薬草を集め始める。
「ふふ~ん」
ご機嫌なクスも一緒だ。
「薬草って結構、いろんな種類があるんですね」
「そうそう。と言ってもここのは植生に合わせてお婆ちゃんが種を蒔いたからなんだけどね」
「そうなんですか?」
「元々、お婆ちゃんは正規の薬師だったんだけど組合の方針に異議を唱えて追放に近い処分を受けてね。薬草とかも手に入りにくくなったから自分で育てはじめたんだよね」
「立派な方だったんですね」
「尊敬はしてるけど、あぁはなりたくないかな」
クスの言葉には苦労してきたであろう言葉の重みがあった。
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