第61話
準備運動を終えたアレンの元にユーリがよってくる。
「道主から歩法を教えて貰ったんだって?」
「はい。でも、まだうまく出来ないんです」
「見せてみて」
「わかりました」
アレンは歩法、牛雷をしてみせる。
「ふむふむ。なるほどね」
ユーリがその動きを見て何かを考えている。
「問題となっているのはゆっくりした動作から切り替える際の負荷で間違いない?」
見ただけでそこまでわかるのかとアレンはユーリを尊敬の目で見る。
「そうです。負荷にいつも耐えられなくて」
「アレン君は成長期前だし体がまだまだ発展途上だものね」
「どうしたらうまく出来ますかね?」
「う~ん。時間が解決してくれると言っても納得はしないのでしょうね」
「少しでも強くなりたいんです」
「そうね。ならジャンプを1時間ぐらいしてみてはどうかしら」
「ジャンプをですか?」
「ジャンプをすることで骨に負荷が関わるわ。骨がその負荷でより強靭になるから牛雷の負荷に耐えられるようになるはずよ」
「わかりました」
アレンは言われた通りにジャンプをしてみる。
それを見届けてユーリはアリアの方に向かっていった。
アレンは1時間ジャンプをして休憩を取る。
思っていた以上に疲れたのを実感した。
アリアはユーリの指導の元、素振りをしていた。
「よし。そろそろ休憩しよう」
ユーリがそう声をかけると周囲で素振りをしていた先輩達は次々と座り込む。
「アレン君。アリアちゃんと一緒に飲み物を買ってきてくれないかしら」
「それなら僕1人で行ってきますけど?」
ユーリはアレンの耳元に口を寄せていってくる。
「好きな人はちゃんと一緒にいて守らないとね」
ユーリの言葉の意味を理解してアレンは頷く。
確かに大切なアリアを先輩達に任せすぎていた気がする。
「アリア。一緒に行こうか」
「うん」
ユーリが指定した飲み物屋は道場からかなり離れていた。
道すがら自然と手を繋いで歩いていく。
こうして2人だけで出かけるのははじめてかもしれない。
デートのようでアリアも嬉しそうだった。
指定された飲み物を買って道場に戻る。
アリアも持とうとしてくれたのだがアレンは重い物を持たせられないと意地を貫き通した。
道場の前に着いたがユーリと先輩達の姿はなかった。
「アレンはここで待ってて」
「うん」
アリアは迷うことなく先輩達の溜まり場の方に歩いて行った。
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