レミニセント・アヴェルアンジェ。

猫野 尻尾

第1話:その後ろ姿はまるで美しい天使のよう。


現在の地球、主に日本は奇妙な生命体におびやかされていた。

そつらは銀河系のどこかからやってくるらしい。


ゾハールと名乗る存在のインディビジュアル個別の存在で、彼らなのか

彼女なのかは知らないが、それぞれ違うの形をしていて、どの個体も統一して

ベリアルと呼ばれた。


彼らがどの星からやって来て何の目的で現れるのかは定かではなく、

その容姿は人間よりはるかに巨大で醜いが戦闘能力が高く、自衛隊や防衛軍だけ

で阻止するのは難しかった。


ベリアルが現れはじめた頃はなすすべもなく街は破壊され人類の多くが

犠牲になった。


そこで政府はゾハールのベリアルに対抗すべく新たな組織を設立した。

その組織の名は「生物分子科学システム特殊処理施設・キューピット」

キューピットとかまた可愛い。

おそらくローマ神話のビーナスの子キューピットから来ているに違いなかった。


通称「BSQ」最後の文字はキューピットから来てるんだろうが、実際は

QじゃなくCになる。

わざとQにしてある・・・キューピットのキューなんだろうけど・・・。


保護する防衛するって意味が含まれているんだろう。


宇宙からバケモノが攻めてくるってそんな戦慄に満ちた世の中でも、

それでも人々の生活は続いて行く。


僕の住んでた地域もベリアルの攻撃で人が住めなくなってしまったから

否応なしに学校を転校しなくちゃならなくなった。

新しい学校は都心からは遠く離れていて以前の学校より綺麗な校舎で、制服も

野暮ったくなくて少しだけ新しい高校生活に期待を持った。


その学校は奇しくも政府機関「生物分子科学システム特殊処理施設・キューピット」」の目と鼻の先にあった。


以前の学校の友達とも別れたので、またこの学校で新しい友達を作らなきゃ

いけない・・・作れたらの話だけど・・・。

結局、そういうことの繰り返しな気がした。


転校当日、僕は担任からクラス全員に紹介された。


「本日、当校のこのクラスに転校してきた・・・

え〜と・・・神童 輝しんどう あきらくんだ・・・みんな仲良くするように」


「え〜神童くん、君からもひとこと・・・」


「神童 輝です、よろしくです」


「それじゃ〜と・・・君の席はと・・」

「ああ、式神 安羅しきがみ あら・・・の横の席だ・・・」


「はい・・・」


しきがみ?・・・あら・・・あらって?変わった名前だなって思った。

しかも俺たちの苗字、偶然神って文字が入ってるし・・・


僕はその式神 安羅さんの横の席になった。


最初、彼女を目にした時、僕は驚いた。

安羅の髪は、なぜか真っ白で肩より長く、肌の色も白くて、まるでアルピノ

って言う色素が欠乏した人みたいだった。


席につく時、安羅と目があったから僕は軽くお辞儀をした。

そしたら安羅は僕を無視するように目を逸らして顔を窓のほうに向けた。


(なんだよ・・・無視して・・・)


それを境に僕は安羅と一切、挨拶も言葉も交わさなくなった。


その後、数人の友達ができたが、ひとりだけ、やたら僕に興味を持った

やつがいた。

そいつの名前は「横地 公人よこち きみひと


横地とは趣味があったりして今のところ彼が一番仲のいい友人になった。


そして、数週間経っても学校内で安羅の声を一度も聞いたことがなかった。

クチが聞けないのかとさえ思った。

一言もしゃべらない・・・根暗・・・地味・・・ネガティブ。


それでも明るく振る舞ったらきっと、目立つし映える子だと僕は思った。

だから元気に身振り手振りで話す安羅を想像した。


(ぜったいイケるのに・・・可愛いのに・・・)


安羅の育ちや過去に彼女をここまで無口で無表情な女の子にした理由が

あるんじゃないかとさえ思った。

そこまで考えるって?


(え?僕って安羅に気があるのか?)

(そんなことない、あんな不愛想な女・・・)

(放っていけばいいし、関わらないほうがいいんだ・・・)


で、横地に聞いてみた・・・安羅のこと。

やっぱり気になってるんじゃないかよ、僕は・・・。


「ああ、根暗女のことか?」

「そう、その根暗女にこと」


式神 安羅しきがみ あらのことだろ?」

「俺もよくは知らないけど、あいつキューピットって移設から来てるらしいな」

「あんな怪しげな施設で暮らしてるから根暗女になるんだよ」」

「おまえ、あまり式神に関わんないほうがいいぞ・・・」

「ツンデレに興味があるならいざ知らず」

「あんな愛想もこそもない根暗女と一緒にいたってつまんないだけだからな」


キュピーット・・・。

例の政府機関、生物分子科学システム特殊処理施設・・・そんなところから?

一般家庭に育ったんじゃなかったのか?


そんなこと聞くとますます彼女のことが気になってしょうがなくなった。

彼女に本当のことを聞いてみたかった。


でもたぶん今のままじゃ、何もしゃべってくれないだろうな。


その夜もテレビでベリアルが出現したって模様をニュースでやっていた。

そのたびキューピットから何かが、出現してベリアルを撃退したって

キャスターのおっさんが、がなりたてていた。


キューピットから現れた何かって?・・・なに?

前からそれは気になっていた。

でもその何かについて政府はなにも発表しない。


その何かはカメラに何度も捉えられていたけど、動きが早くて映像がブレていて

ハッキリとは分からなかった。

その何かが両腕を前に出したかと思うと背中から発した光が肩から腕に伝わって、

前に出した人差し指まで到達すると指先から細いビームを発射した。


そのビームを食らったベリアルはマグロのブツ切りみたいに数え切れないくらい

のブロックに切断されたあげく粉々に粉砕されて空中に飛散した。


ただ最初に映っていた、その何かの体は白かったはずなのにベリアルを

倒したあとの映像では体が真っ赤になっていた。

定かじゃないけどきっと体が変色したんだ。


ベリアルを粉々に粉砕する何かって?、いったいなに者?


幸いにも僕の学校までゾハールのベリアルの影響はまだなかった。

と安心していたのに・・・でもその日がついにやってきた。

二時限目の授業の最中だった、


いきなり飛行機が墜落したような轟音が鳴り響いた。

地震が来たみたいに校舎が揺れて窓ガラスが震えた。

だからみんな机の下に一時的に潜り込んだ。


少し待ってそっと机から顔を覗かせると学校の窓から、町中に広がる土煙が見えた。

なにかが落ちたか、落ちてきたんだ。


俺はすぐにゾハールのベリアルだって思った。

ついにこの街まで来たか・・・。


窓越しに見ると真っ黒な物体が街を徘徊していた。


そいつは二本足で歩いて、腕が左右5本ずつ生えていて、頭からツノらしきものが

生えていて顔の部分は目もなく鼻もなく横まで裂けた口に細かいギザギザの歯らしきにものが生えていた。

そして背中から飛び出した数本の尖った槍のようなモノが奇妙にうごめいて

やたら目立っていた。

そして一声、学校のな窓ガラスが割れそうなくらいの咆哮を上げた。


もしかしたら、こいつらは昔、神に逆らって地獄に落とされた堕天使で

やがて悪魔になった暗黒神なんじゃないかって僕は思った。

伝承では地獄に落とされた天使は全天使の3分の2もいたそうだ。

もしそれが事実だとしたらベリアルはいったい何体現れるんだ?


学校に危害が及ぶのは時間の問題と言うことで、クラス全員避難することに

なってほぼ全員が教室から出ていく中で、安羅あらだけが窓にしがみついて

黒いベリアルを見ていた。

その安羅を見た僕は彼女に向かって叫んでいた。


「式神・・・なにしてる、逃げなきゃ・・・」


僕の声に振り向いた安羅の顔は真っ白だった。

やがて安羅は髪を振り乱し頭から奇妙なツノが生え始め、体の筋肉がもりあがり

制服は破れて背中から鳥の羽のようなものまで生え始め異様な姿に変貌しつつ

あった。

体まで白くなって、あのニュースの中で見た、何かとそっくりだった。


安羅はベリアル同様、気高い咆哮をあげると、そのまま窓ガラスを破って、

外に飛び出した。

地上には落ちずにそのまま一気に空中へと舞い上がって行った。

両腕をかかえるようにして・・・そして背中から生えた真っ白な翼で羽ばたいた。


その後ろ姿はまるで美しい天使「エンジェル」のようだった。


つづく。



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