第736話 ミキュバス族
「なるほど、それで子供たちの美味しいっていう気持ちを集めるために料理屋さんをやってるんだ」
「そういうことだなー」
上層区にある不思議なレストラン『アリス・ボナペティート』の店主、ボーノ。
彼は通常の食事の代わりに美味しいという感情をエネルギーとする『ミキュバス族』という種族で、人間族でも魔物でもなく、キャンディやフロランタたちと同じく大昔に滅びた魔人族の血を継ぐ魔血族だった。
「夢を食べる悪魔とかは聞いたことあるけど、美味しい気持ちを食べるのは初めて聞いたかも。でもなんでお店に招待するのは貴族の女の子ばっかりなの?」
「んー? そうだなー」
アリス・ボナペティートは招待状が届いた人が来ることの出来る、上層区にある高級レストランの中でも珍しいシステムのお店だ。
招待状が届きやすい条件はいくつかあって、子供であること、どちらかというと庶民より貴族の子、どちらかというと男の子より女の子……要するに貴族のお嬢様が多いらしい。
「子供の方がいっぱい作れてー、しかもお嬢様のヤミーコインが一番甘くて美味しいからなー」
「そういうものなんだ」
ボーノ店長によると、この美味しい気持ちをコインにした『ヤミーコイン』を生成すること自体は子供でも大人でも出来るらしい。
しかし、大人は生成量が少なくて味も子供のものより悪いのだとか。
更に初めての料理を食べた時の美味しい気持ちが質も良くて量も多いということで、ボーノ店長のお店に来られるのは子供の間、一生に一度の出会いという感じになる場合が多いとのこと。
ってかこのコイン食べられるんだ……
「シューコのヤミーコインは、不思議な味がするな―」
「もしかして、あんまし美味しくない?」
「いんや、美味しいけどお嬢様の味でも男の子の味でもないなー。甘じょっぱくてクセになる感じー」
「あ、甘じょっぱいんだ……なんか和風だね」
みたらし団子みたいな味がするのかな……まあ、前世は和の心を大切にするタイプの国民だったしね。
「ミキュバス族って、ボーノ店長以外にもこの辺にいるの?」
「おー、他にもいるぞー。質より量派のヤツは下層区に多いなー。お店もオールウェルカムでやってるぞー」
「そうなんだ。じゃあ私も行ったことあるかもね」
意外と王都の中には人間族以外の人っぽい人たち(?)が暮らしてるのかもしれない。
「それにしても、このヤミーコインの味は初めてだなー。地元のみんなにも配りたいなー」
「ボーノ店長の地元?」
「そうだよー。ミキュバス族の国だよー」
「へ~! なんか面白そう!」
ミキュバス族の国かあ……茶々丸くんたちブラック・ラクーンの里みたいな所があるのかな?
「シューコ、行ってみたいかー?」
「えっ? 私も行っていいの?」
「シューコのヤミーコインが入った瓶、デカすぎてウチじゃ運べないからなー」
「荷物持ち要員なんだね」
でも、行けるというのなら行ってみたいかも。
美味しい気持ちをエネルギーにするなら、もしかしたらミキュバス族の国で色々ご馳走されるかもしれないし……じゅるり。
「ボーノ店長! 私もミキュバス族の国に連れてって!」
「よーし、それじゃあ行くかー。はいこの瓶持ってー、ちょっとここ立ってー」
「わーい! それで、どうやって行くの? てかどこにあるの?」
ボーノ店長の指示に従ってヤミーコインが入った大きな瓶を抱え、キッチンの真ん中に移動する。
「ミキュバス族の国の行き方はなー、ここのキッチンの上で足をこうやってなー」
コンコン・コココン・コココン・コン。コンコン・コココン・コココン・コン。
「あ、それお店に入るときにやったドアを……」
バコンッ!! シュポッ!!
「叩く、やつ……っ!?」
ボーノ店長が一定のリズムで足元をコツコツと叩くと、キッチンの底が左右に開いて穴が開く。
で、その上にいた俺とボーノ店長は……
「うわあああああああああああっ落ちるうううううううううっ!?」
「いざしゅっぱーつ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます