第735話 不思議な食事代



「ごちそうさまでした! お料理ぜんぶ美味しかった!」



「いい食べっぷりだったよー」



 上層区にある高級レストラン『アリス・ボナペティート』でお腹いっぱい美味しいコース料理を食べた俺は、食後のジュースを飲みながら幸せを噛み締めていた。

食事マナーとかうるさくなかったし、一人分しか席が無いから高級レストランって言うのかどうかは分からないけど、出された料理はどれも今まで食べたことのないような味がして、新鮮で柔らかジューシー、安い魔物肉特有の臭みなども全然なかったのでかなり良い食材を使っている高級料理だと思った。



「えっと、お会計……」



 これだけ良い食材を使った美味しい料理を、俺に合わせて超大盛りにしてくれて、しかもお店貸切……これは結構お値段いっちゃうかもなあ。



「お代はもう貰ったから大丈夫だよー」



「えっ? 俺……じゃなかった、私まだ払ってないけど……」



「むしろ多すぎておつりが出るくらいー」



「ど、どういうこと……?」



 ごはんを食べ終わったのでお会計をしようとしたところ、店長のボーノさんから『お代はもう貰った』と言われてしまう。

しかも多すぎるって……一体どういうことだ?

俺が早食い大会の賞品で貰ったのはあくまで『予約紹介カード』で、食事が無料になる券ではない。

割引券もあるけど、それは今回使ってないし……もしかしてチュールさんが支払いもしれくれたとか……?



「シューコは人間と、魔物と、魔人と、それ以外の種族を知ってるかー?」



「えっと、もしかして魔血族のこと? 竜人族とかヴァンパイア族とかレプラノーム族とかの」



「おー、最近は魔血族って言うんだなー」



 そんなことを呟きながら、ボーノ店長がキッチンから金貨のようなものが入った大きな瓶を持ってくる。



「これがシューコから貰ったお代だよー」



「えっなにこのお金。こんなのあげてないよ」



「これはなー、シューコの初めての『美味しい』って気持ちがヤミーコインになったものだよー」



「私の美味しいって気持ち……?」



 ボーノ店長の話によると、ここで食事をした人がごはんを食べて『美味しい』と感じるとヤミーコインというものが生成させるらしい。

そしてこの生成されたコインが食事のお金代わり……な、なるほど?



「ちなみにこっちが前に来たお客さんのヤミーコインなー」



「小瓶だね」



 俺の美味しい気持ちで生成されたヤミーコインが大きな瓶にギッシリ詰まっているのに対し、前に来たというお客さんのコインはちっちゃい瓶にパッと見て数えられるくらいの量が入っていた。



「普通はこんくらいなんだよー」



「私の美味しいパワーが強いってこと?」



「そういうことー」



 なるほど……この小瓶に入ってるくらいの量が手に入れば黒字になるって感じなら、俺の美味しい気持ちで作り出された大量のヤミーコインはお代以上、100円のものに1万円出して『釣りは要らないぜ』ってなってる感じなのかも。



「それで、このヤミーコインと魔血族がどうのっていうのは関係があるの?」



「えっとねー、つまりウチは人間じゃなくて、この美味しい気持ちで出来たヤミーコインを食べて暮らす〝ミキュバス族〟っていう種族なんだよー」



「ええっ!?」



 美味しい気持ちを食べて暮らす、ミキュバス族……!?



「モンス〇ーズ・インクってこと?」



「なんだそれー?」

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