07


夜風が身にしみる季節になってきた。

薄いコートを羽織り外に出ると、オフィス街の冷たいコンクリートの歩道に無機質な街灯が足下を照らす。


少し歩けば定食屋だ。


大きなガラス窓からは煌々と光が漏れ、昼間ほどではないにしろ待っている人がいる。

少しばかり中を覗けば、満席のお客さんに朝子さんといつからか入ったのかアルバイトの女の子が忙しそうに働いていた。


「混んでますねぇ」


「だな。どうする? 今日はやめとくか?」


俺は空を見上げる。

いつもより暗いと思っていたが、どうやら天気が悪いらしい。


「雨降りそうですもんね。雨の中待つのは嫌ですね」


「んじゃまた明日リベンジだな」


「そうしましょう」


残念な気持ちで定食屋を後にする。

お気に入りが人気店になって嬉しいけれど、初めて訪れたあの雰囲気もよかったよなぁなんて贅沢なことを思いながら帰路についた。


明日リベンジと言っておきながら、仕事に追われた俺たちはしばらく残業続きで定食屋に行くことができなかった。


当然昼も自席でカロリーメイトやカップ麺で過ごし、アホみたいに働く。

小金井は忙しくてもランチは欠かさない女らしく、「今日も定食屋は行列だった」と頬を膨らませながら俺に報告する。


前回食べ損ねた記憶と小金井からの定食屋情報により俺の中の定食屋熱が上がってしまう。


あー、定食屋のアジフライ定食が食いてぇ。


「んじゃ、今日こそ行きましょうよ」


どうやら心の声が漏れていたようだ。

小金井がグッと親指を突き立てた。

小金井も定食屋に飢えているらしい。

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