修正によって生じる新たな不具合
不具合を望んで生み出す開発者はいない。不具合はないほうがいいに決まっている。品質管理が目標に掲げる最高到達点は「不具合ゼロ」だ。開発者と品質管理、おたがいが情報提供とコミュニケーションにより協力関係を築き、いかにして不具合をなくしていくかが、製品開発における重要課題といえる。開発途中で不具合は必ず見つかり、修正される。しかし、ここで奇妙なことが起こる。不具合の修正により、まったく別の、新たな不具合が生まれるのだ。
たとえばこうだ。電源ボタンON/OFFを押しても電源がオンにならない不具合があったとしよう。開発者の修正により、ボタンを押すと電源が入るようになった。ところが、今度はボタンを押しても電源が切れなくなってしまった。修正により、確かに機器の電源が入るようになった。製品の具合がよくなった。修正は「済み」である。しかし、今度は電源が切れないのだ。再び製品の具合がよくない状態になった。追加の修正がいる。ひょっとすると、追加の修正によりまた電源が入らなくなる、といった事態も起こりうる。不具合の修正とは、一筋縄ではいかない。
これに類する事象が本当に起こるのである。そして、実際に起こる事象は、たとえよりもはるかに複雑だ。一見するとまったくかかわりのないところで、人知れず新たな不具合が発生しているのだ。それらを見つけるのは容易ではない。仕組みを熟知し、論理的な思考で不具合を見つけられる人もいる。経験や嗅覚で不具合にたどり着く人もいる。たまたま通りがかった人によって見つかるかもしれない。いずれであっても、不具合を発見しているのだからすばらしい成果だ。
不具合が修正されたとき、「もう大丈夫だ」と安心せず、修正された部分以外の広い範囲に目を向けてほしい。あなたの思いもよらないところで、未知の不具合は見つけてもらえるときを今か今かと待っているかもしれないのだ。「こんなところにいたのか。待たせて悪かったね」と、不具合を迎えに行ってあげよう。
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