第14話

...なかなか見つからないな


すでにオークに似た大型の魔物を倒してから、十分ぐらいは経ったはず

ずっと、探してはいるんだが...


ちょっと待てよ? 俺に聞こえたのは声だけ

なんなら、その声すらも聞き間違いの可能性がある

うーん...対処に困る

ただ、俺は今どちらかというと好奇心が勝っているというか...


「あと少しだけ探して見つからなかったら、もう諦めよう」

と、考えをまとめ再び辺りを見回しながら歩くことに


常に魔力探知は発動中

もし、探している相手が魔力を隠しているとか、特殊な場合だったとしても一瞬ぐらいは隙があるはず

一瞬でも探知できればこっちの勝ちなんだけど...


それはさっきからずっとやってるしなぁ

「────ッ!?」

いきなり、後方から足を引っ張られる


「ぐえっ...」

不意打ちでバランスがとれなくなった俺は、顔を思いっきり地面にぶつけ...


どうなってんだよ...魔力探知に引っかかったわけでもないし、石とか...でもないか

明らかに誰かが引っ張ってたよな

「おい、誰かいるのか?」

倒れ込みながら大きく声をあげる


反応は....なしか

「でも、近くにいるはずだよな」

と、立ち上がり...もう何度目か、辺りを見回す


「あっ!」

そこで一瞬だけ、人の髪の毛のようなものが見えた


「逃がさねぇぞ、とりあえず足引っ張ったことだけは謝ってもらわないとなっ!」

勢いよく走り出し、追いかける

まだ、視界内になんとか髪が残っている

それに、足跡も残してる

これを追っていけば...


「見えたっ!」

ようやく体全体、頭から足まで視界に収める

そして、さらにスピードをあげ...だんだんと距離が縮まっていく


「はぁ...やっと捕まえた」

「あ、あの...ごめんなさいっ!」


今、俺は逃げていた人の肩を押さえているんだが...

その人はこっちを向くと頭を下げ始めた



「あの...そろそろ、頭上げてもらっても?」

「は、はい...」


ようやくしっかりと顔を見ることが出来た

俺が追いかけていた人の正体は、俺と同じ年ぐらいの女の子(十六歳ぐらいかな)

銀髪に群青色の目、素人目ではあるがかなりの美人ではないかと思う


てか、そんなことより...確認すべきは魔力の件だ


「あの、一つ聞いてもいいですか? あ、俺はレオンハルトといいます」

「あ、えっと...私はナタリアといいます 何を聞きたいんですか?」

少し動揺しつつも、ナタリアさんは名乗る


「ナタリアさんは、魔力を隠す事が出来るんですか?」

「え...?」


あれ...?

なんか、予想していたリアクションと違うんだけど

え、もしかして本当に何もしてないのか?


「あー、ちゃんと説明します。 俺はさっきからずっと魔力探知っていうのを使ってて」

「魔力探知...?」

おそらく聞き覚えのないであろう単語をナタリアさんは繰り返す


「はい、近くにいる人たちの魔力や殺気とかを感知できるものなんですけど...ナタリアさんは感知することが出来なくて」

「...なるほど 原因は私にはわからないです。 一つ言わせてほしいのは...」


少しナタリアさんは、間を置くと

「ナタリアさん...と呼ばないでほしいです ナタリアと呼んでください」

少し微笑みながら、言う


「じゃあ、そうします 俺はレオンでいいです あと、話し方とかももっと気軽な感じで」

「じゃあ、レオン よろしく」

「あぁ」

お互い、手を前に出し握手をする


「ナタリアは、ここの近くのセーフエリアで生活してるのか?」

「ううん、私は冒険者だよ 友達に会うためにプルソハを目指してる」

「へぇ...そうだったんだ、実は俺も───」


言いかけたところで、なんとか踏みとどまる

落ち着け、余計なことを言ったらナタリアを巻き込むことになってしまうかもしれない


「...? 今なんて言った? よく聞こえなくて...」

「い、いや なんでもないよ、気にしないで」


え、そう...?といいながら、ナタリアは少し考え込む

ギリギリ助かったか


「ちなみに、レオンはどこに行くの? さっき、大きなオークと戦ってたしやっぱり冒険者でしょ?」


あぁ、助かってませんでした

「あ、あぁ...俺は冒険者だけど...えっと」

「どこを目指してるの?」

ひっ...めっちゃ追い詰めてくるんだけど


どうするどうする...

ちょっと待てよ...確かルメルシェさんが幻惑魔法の話をしてたような

勇者とかに追われてるときはそれを使えば...

それに、プルソハにいる間は...たぶんナタリアが近くにいるだろうし、上手くいけば口裏合わせで捕まらずに済むかもしれない


事情は隠して、一緒に行くべきか

まぁ、幻惑魔法は使えるかわからないけど

プルソハで調べればいい


「俺も、一緒だよ プルソハに行こうと思ってたんだ」

「えっ! じゃあ、一緒に行こうよ 一人じゃ不安だったんだよね」

なんか、利用しようとしてる感じで気が引けるが....まぁ、一旦忘れよう


「わかった、じゃあこれからよろしくな」

「うん!」






ナタリアが仲間に加わりましたとさ...

だんだん無事に逃げられる自信がなくなってきたが、できる限りのことはしよう

そう、決意を固めナタリアとともに進んでいくのだった


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