第11話 17時40分②
「ぎゃああああああ」
ガタッ
ドンッダンッ
ダンダンダンダンッ
「………!?」
「な、なに今の音!?」
応接室の外から、叫び声と何かが転がり落ちるような音が聞こえた。
俺と宇治治は慌てて応接室から飛び出し音の方向へ向かう。
あの叫び声は………。
「嘘だろ…、そんな」
「いやぁああああああ」
宇治治の叫び声がホールに響く。
廊下を抜け、ホールにつくと、ソレがそこにはあった。
応接室で聞いた叫び声は、六角のもので間違いないだろう。
そして、
なにかが転がり落ちるような音は、
「六角……どうして」
六角が、階段から落ちた音だったのだ。
今、階段の前に六角が寝転んでいる。
顔と背中はきれいに天井を向いていた。
首は大きくねじれ、ところどころに血肉と一緒に、白いものが飛び出している。
ぴゅーぴゅーと水のように血が流れ、六角の周りには真っ赤な水溜まりができつつあった。
でも何故。どうして、
六角の腹部は抉れているのだろう。
「ゔ、ぅう」
六角の口許が微かに動く。
「ろ、六角……」
六角は身体を魚のようにピクピクとさせる。
目はどこを見ているのか分からないほど濁っていた。
もう死んでもおかしくない状態なのに。まだ生きている。
俺はその様子が気持ち悪くて、近づくことができずに、ただ六角の名前を呼ぶしか出来なかった。
「ご、ナ、聞ィ…な…!化けモ…い、ぁ、あ、タ、す、〇ヾ∀∝∇☆&%…」
何を言っているのか分からない。
六角は最後に大きくがたがた震えるとそのまま動かなくなった。
ぱたりと動かなくなった六角を見て、俺は彼が絶命したのだと理解した。
「いや、いやよ…、なんでなんで…なんで…」
宇治治はその場に膝をつくと両手で頭を押さえ、うわ言のように呟く。
「………」
俺もその場に立ちすくしかなく、言葉を発することができなかった。
何も考えられない、いや、考えたくない。
全部夢だったら良いのに。
「…う、ろ、晴岩君……」
「因崎……」
階段上からか細い声がする。
見上げると、因崎が階段の上で立ち尽くしていた。
「ぼ、僕じゃない…、僕じゃないんだ…僕じゃ」
因崎は手を震わせ、何度も言葉を繰り返す。
「やっぱり…やっぱりそうだ」
「宇治治?」
宇治治は何かを呟きながら、ふらふらと階段を昇っていく。
階段前に六角の血だまりがあるせいで、宇治治が階段を上るたびに、赤黒い靴痕がベッタリとくっついていた。
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