第5話 16時35分


「うわぁああああああああああ!!」


「……!?」

 その時、突然叫び声が屋敷内に響き渡る。


「おい…なんだ今の叫び声!!」

 六角が眉間にしわを寄せ怪訝そうな顔で俺と宇治治を見る。


「因崎くんの…声だよね?」

「六角、因崎たちはどこにいるんだ?」

「2階に客室があって蛇九たちはそこにいるはずなんだが…」


 俺たち3人は応接室を出ると、ホールに出た。

 だだっ広いホールの中心にある階段を昇り、2階の客室へと走る。


 2階に上がると、客室の扉が6部屋ほど並んでいる。

 その一番右奥の扉の前に男が座っていた。


因崎いんざき!!?」

 俺は彼の名を叫ぶように呼び近づく。


「…あ、あぁ…、晴岩くん…っ」。

 因崎はドアの前で腰を抜かしている。

 こいつは、いつも青白い顔をしていて、メンバーの中でも一番大人しくびびりな奴だったけれど、こんなに憔悴した姿は初めて見た。


「さっきの叫び声はお前だろ!?どうしたんだ!?」

 俺は因崎に近寄りながら尋ねる。

 因崎はボロボロと涙を零し、震える声で話し始めた。


「じゃ、じゃ、蛇九じゃく君が…蛇九君が…」

 因崎は震える手でまっすぐに指差す。

 扉は開いており、部屋の中が丸見えになっている。

 部屋の前まで来た俺たちの視線は、自然とその指を伝って室内に向けられた。


「…じゃ、く…?」

「あ?蛇九がどうし……!?」

「蛇九クン…?」

 宇治治は背が小さく俺たちのせいで部屋が見えなかったようだ。

 俺と六角の横をすり抜けて因崎の部屋の中に入っていく。


「…やめろ宇治治!見るな!!!」

 俺はハっとして、目の前の宇治治に叫んだ。

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