カステラ屋の娘
あべせい
カステラ屋の娘
食堂のサンプルケースに鎮座する一切れのカステラ。最近、そのカステラを見るたびに思い出している。
学生時代、小さなカステラ屋の娘を袖にした。
おれは元来モテる男じゃない。そのとき、たまたま、とても大切な女性がいた。だから、つい、冷たくした。それに、どちらかといえば、彼女は好みのタイプではなかった。
しかし、いま、そのことをとても後悔している。
好きだった女と結婚することができたが、彼女は、結婚3年目で、おれよりはるかに稼ぎのいい男と浮気をして、去って行った。1年前のことだ。
で、この先どうしたら、いいのか。
先月から、そのカステラ屋の娘を追いかけている。
カステラ屋は、いまの職場から比較的近い距離にある。離婚してから、たまたまそのことを知った。だから、こんな気持ちになったのだろうか。
カステラ屋といっても、文明堂や長崎屋といった大手ではない。従業員7、8人だけでやっている小さな小さな菓子工房だ。
店も、工場に隣接する3階建て住居の一部、すなわち道路に面した1階部分の本店と、最寄駅にある駅前店舗の2つしかない。しかし、それでも、長年の信用と実績から、普及品はもちろん、大手並みに贈答用の高級品もよく売れている。
この1ヵ月、周辺をうろつき、聞き込んだ情報だ。
卒業から8年がたっている。彼女も、ことしで30才のはずだ。
おれが住むマンションからカステラ屋までは、30キロほど離れているが、いまの職場からは、電車に乗って4分、さらに徒歩で10数分……。
「もし、もし」
「……」
「あなた、何のご用ですか?」
警察官だ。びっくりした。しかし、驚いてはいられない。あの職質というやつに違いない。
「そこの下駄屋さんに下駄を買いに行くンです……」
若い警官は、警戒心をゆるめず、
「下駄屋というと、そこに見えるカステラ屋の右隣の、ですか?」
「左隣は、パン屋さんですね」
警官の目が吊りあがる。
おれは警官の扱いには慣れている。学生時代、何度か厄介になったことがある。
「下駄屋さんに何の用事があるンですか?」
「失礼ですが、あなたは私に何の用があるンですか?」
「あなたね、本官は何に見えますか?」
「私が質問しているンです。『私に何の用があるンですか?』って」
「自分は警察官です。不審尋問に決まっているでしょう」
「そうですか。不審人物を見たら、すぐに取り調べろ、っていう、あれですか」
「ずいぶん、落ち着いていますね。ふつう、警察官に声をかけられたら、慌てますよ」
「私は前に赤塚署にいたことがあります」
警官の顔色が変わる。ウソに決まっている。かわいそうに……。
「そうでしたか。赤塚署といえば、ここからはずいぶん遠い。失礼ですが、お名前は?」
「昔の話だから、いいでしょう。あまりいい噂はありません」
「ご事情はいろいろおありでしょうが……」
警官は思い直したらしい。
「下駄屋さんにどんな用事がおありだったンですか?」
「下駄を買うに決まっているでしょう」
「あの店は、下駄だけではなく、靴やサンダル、傘も置いています。下駄ですか?」
「鼻緒のついた、下駄。雨の日に、サンダルだと歩きにくいから、下駄が欲しくなったのです。しかし、いままで下駄なンか、買ったことがない。店の前を通ると、下駄は並んでいますが、あの店の下駄には値札が付いていません。どれくらいするのか、不安で、どうしようかと思案しながら、行ったり来たり、していたわけです」
これは用意して来た返事だ。警官は初めてホッとした顔になった。
「そうですか。では、本官がお連れします。あの店とは懇意にしていますから、安くなりますよ」
と言って、警官は先に立って行く。
こういうことまでは想定していなかった。
どうするか。成り行きで、必要もない下駄を買わされるのか。
警官を無視して立ち去ることもできるが、怪しまれてしまう。1時間近く、同じ道を行ったり来たりしていたのだから。
間口1間半の小さな下駄屋。警官が中に入って声を掛けると、若い娘が現れ、一段高い板の間に膝をついて、警官の顔を見上げる。なんだか、うれしそうだ。
「どうされたンですか。若槻さん」
若い警官は、おれとは比べものにならないほどの好男子。名前もいい。世の中は不公平だ。
「いえ、この方が……」
と言って、後ろに突っ立っているおれをアゴでしゃくる。
「下駄が欲しいとおっしゃるのでお連れしたのです。適当な品物を選んであげてください」
「はい……」
娘は、壁に並んだ下駄を見渡してから、鼻緒をすげる作業台がある半畳ほどのスペースに入り、その周囲に積み上げられている下駄を見ていく。
おれは、娘の愛くるしい表情を見ているうちに、この通りまで何をしに来たのか、わからなくなった。
「お嬢さん。ふだん使うものなので、なんでもいいです」
警官の横に並んで立ったまま、考えてもいないことを言ってしまう。
「はい、でも……そうですね。こちらなんか、お似合いだと思いますが、いかがでしょうか?」
そう言って、娘が示したのは、黒い鼻緒の、デパートなどで見かける桐下駄だ。値段は、高いだろう。
「ほかにありませんか」
警官が割って入る。
「出来るだけ、安くしてあげてください。ぼくが無理やりお連れしたようなものなので……」
娘は、この高槻という警官に好意を寄せているようだ。
「そうね。若槻さんのお客さんですから……3割引きにさせていただきます……」
娘がなおも下駄を探していると、表から、おれと同じ年恰好の婦人が慌しく駆けこんできた。
「キヌちゃん! タイヘン! お父さんが倒れちゃって」
キヌちゃんと呼ばれた娘は、手を休めて、婦人と警官を交互に見た。
「さよりさん、救急車は?」
さより!? おれは改めて婦人の顔を見た。
この1ヵ月、近くを徘徊していたのに、顔を合わせる機会がなかった。
8年ぶりだ。
「救急車は呼んだわ。でも、救急車がくるまでの間、AEDを使いたいンだけれど、使い方がわからなくて……」
すると警官が、勢いづいた。
「AEDなら、本官がやります」
「そうよ。若槻さんは何度もやっているから。行ってあげて」
「奥さん、行きましょう」
婦人は警官と出ていくとき、チラッとおれを見たが、何の反応もない。
「さより、おれだ、キミが恋した、高間だよ」
そう口から出かかったが、おれは無言で見送った。
「お客さん。すいません。こんな状態で、お相手できません」
「いいです。出直します。どうぞ、行ってあげてください。お隣の奥さんとは、お親しいのでしょうから」
キヌという娘は、首を横に振って、
「さよりさんは、結婚はなさっていません。いろいろ、お話はあるみたいですが……」
「しかし、警察官は『奥さんと』……」
「若槻さんは、ご存知ないのです。未亡人だと思っていらっしゃる。年上の女性がいいらしくて。困った方……」
娘は、心から腹立たしいという顔をする。
「では、また出直させていただきます」
踝を返して出ていきかけると、
「あのォ……」
「はッ」
おれは立ち止まって、振り返った。
娘がいい淀んでいる。
「何か?」
娘が意を決したように口を開く。
「若槻さんからうかがったのですが、最近、この辺りをうろついている怪しい男がいる、って。失礼ですが、あなたのこと……」
おれは、ドキンッとした。このことも想定外だ。
「私はこちらに来るのは初めてです」
「そうですか。失礼しました。私、前に別れた男性からストーカーされたことがあって。最近、被害妄想気味なンです」
「ストーカーのような卑劣なことをする男は、決して許してはいけません。失礼します」
おれはそれ以上、娘のそばにいることに耐えられなくなり外に出た。
さよりは、おれのことをすっかり忘れている。
8年の歳月は、長いということか。さよりとの最後は、卒業した年、繁華街の喫茶店で偶然、見かけた。
おれは、後に結婚して別れる女房と一緒だった。さよりは、女ともだちとおしゃべりに夢中だった。見通しのいいワンフロアの店で、2つのテーブルは10数メートル離れていた。
さよりはおれに気がついたようだったが、じっと見つめることはなかった。素知らぬ風をしていて、5、6分後、気がつくと、いなくなっていた。
「わたしじゃ、ダメなの?」
2人で最後に会ったとき、さよりが言ったことばが思い出される。
おれは彼女のその言葉を無視した。そのお返しが、昨日、来た。
カステラ屋の婿に納まって、ラクラクと生きる。そんなムシのいい計画が、早くも頓挫した。しかし、おれに、ほかにどんな生き方があるだろうか。
「高間さん、高間さん、って」
「……」
部下の餅田可奈だ。
妻子持ちの庭伊課長と不倫していたが、最近、捨てられたという噂だ。情緒不安定なのだろうが、まだ昼休み時間なのに、邪魔をするとは何事だ。
おれの顔付きに気がついたのか、可奈は戸籍課の相談窓口になっているカウンターを指差す。
「係長にお客さんです」
「客?」
おれは、椅子に腰掛けたまま、背伸びしてカウンターを見た。
さよりだ。信じられない。
「2階の応接室は空いているか?」
「空いていますが……」
不満そうな声だ。
「お客さんをそこに案内して。少し用事をすませてから行く」
可奈という女性は、内心おれを小バカにしている。
係長はロクに仕事もできないくせに、命令ばかりする、と。実際、そういう陰口を聞いたことがある。
去年の忘年会で、同僚どうし愚痴をこぼしあっているのを、たまたま耳にした。
恐らくは、彼女たちの後ろを通ったおれを眼の端でとらえ、わざと言ったのだといまは思っている。当たっているから、仕方ない。
おれは、彼女たちから見れば、給料ドロボウだ。役所だから、税金ドロボウか。
5分後。応接室が3室並んでいる真ん中の部屋に入った。
さよりは、和服姿で、ソファの片側にきちんと腰掛けていた。その背後から、彼女の正面に回り込む。
「お待たせしました」
一礼して、彼女を見た。
さよりは同時に立ち上がり、
「ご無沙汰しています」
会釈して、微笑んだ。
「エッ!」
わざとらしく驚いてみせた。
「さより、さんですか?」
「はい。カステラ屋の娘です」
「お久しぶりです。お元気そうで」
「なんとかやっています」
「で、どうされたンですか?」
さよりは、ちょっと意外だという顔付きをしてから、
「高間さんは、戸籍課ですよね?」
「そうです。さよりさんは戸籍課のカウンターに来られたのでしょう?」
「実は困っているンです。父が……」
さよりの話は、役所のなかでする話ではなかった。
さよりの父が、養子縁組を考えているという。さよりには、すでに結婚して家を出ている弟がいる。兄弟姉妹はほかにはいない。
彼女の父が3人目のこどもにと考えているのは、さよりより2つ年下の女性で、父と愛人関係にある。
「こんなこと、許されますか!」
さよりは、強い口調で訴える。しかし、おれには関係ない……と思ったが、婿養子まで考えた人間としては、無関心ではいけない。
「さよりさんは、どうしたいと……」
「ですから、父が養子縁組の申請に来ても、受けつけないで欲しいンです」
「それは……」
役所というところは、どんなに怪しくても書類さえ整っていれば、拒否することはできない。捜査機関や利害関係者からの正式な要請でもなければ、我々にはどうすることもできない。
「一時的に凍結扱いして欲しいンです」
「時間稼ぎをしろ、ということでしょうか?」
そのとき、ドアがノックされ、可奈がお茶をもって入ってきた。
さよりは、可奈をチラッと見てから、口を閉ざす。
おれも、可奈が出ていくのをじっと待った。
可奈は、「粗茶です、どうぞ」「失礼します」と言うと、静かに出て行った。
さよりは可奈が出て行ったのを見ると、
「時間稼ぎだなんて……父を説得したいンです。それまで、協力していただけませんか」
「養子縁組に、さよりさんの同意はいりませんが、その話は、どこから漏れたのでしょうか?」
さよりは、おれをにらむ。
「昨日、父が心臓発作を起こして、病院に救急搬送されたンです。発作のほうは大したことがなくて、1週間ほど入院してようすを見ることになったのですが、昨晩、病院のベッドで、わたしと弟に、ふと漏らしました。『おまえたちに、新しい妹ができる』って……」
「死期を感じとって、ということですか?」
「いいえ、あの女の入れ知恵です。あの女は、結婚だったら、私たちに猛反対されるから、こっそり養女になって、父の遺産にありつこうと……」
ことはカステラ屋の相続問題なのか。おれは、その騒ぎに巻き込まれようとしている。
「しかし、さよりさん、どうして、ぼくにその話を持ってきたンですか。大学を卒業して、8年近くたっているのに。ぼくがこの役所にいることは、ご存知だったのですか」
さよりは、つまらないことを尋ねるという表情をする。
「私、役所の用事はいつも近くの支所ですましているのですが、2、3年に一度はこちらに来ます。2年前だったか、初めて、こちらであなたを見かけました」
戸籍課に異動したのは、ことしに入ってからだが、2年前なら、1階の福祉課にいた。
1階にいると、いろんな人と顔を合わせる。しかし、おれには記憶がない。さよりのカステラ屋が、管轄区内だと気がついたのも、昨年女房と離婚してからだった。
さよりはここで初めておれを見かけたとき、おれに声はかけていない。ということは……。
「それと……」
さよりが、正面からおれをじっと見つめた。
昔同様、整った顔立ちをしている。どうして、結婚しないのだろうか。
「昨日、高間さん、あなた、お隣の下駄屋さんで……」
やはり、気がついていたのだ。
「ぼくも驚いた。花火見物に行くときの下駄が欲しくて、役所の帰り、立ち寄ったのだけれど、突然だったので、声をかける機会をなくした」
「わたくしも。それで、電話で確かめたンです。今朝、あなたが、どちらの課にいるかを……」
おれが前の福祉課のままだったら、同僚の戸籍課に頼んで欲しいと言ったのだろうか。
「さよりさん。お父さんが養女にとお考えの女性は、本当にお父さんと関係があるのですか?」
さよりは、眉を吊り上げる。
「もちろんです! 亡くなった母の一周忌の法要をしたとき、遅れてやって来た父の後から、こっそりついてきた女が、彼女でした。だれにも挨拶せずに焼香して。母が病床にいるときから、彼女の存在には、気がついていました。お店に来て、父が差し出すカステラをお金も払わずに持って帰る。母に似た美人だったことが、許せない。父は、ことしの誕生日が来れば還暦ですよ。汚らわしい!」
「60才なら……」
続きを言おうとしてやめた。どうせ、理解されない。
「あなたのお話はうかがいました」
「それで、ご返事は?」
「少し、考えさせてください。あまりにも急なお話ですから……」
困ったことになったと思った。
さよりの要求を受け入れて、おれにどんな利益がある。大学時代の友人というだけで、そんな義理はない。
「高間さん」
さよりは、おれを見つめる。
「はッ……」
怖い目だ。
「あなた、離婚なさったそうですね」
「どうして、それを……」
離婚は無論、結婚したことも知らせていない。知らせる義理もない。
「こちらの地下にある食堂と、うちは取引があるンです」
食堂のサンプルケースに、皿にのった一切れのカステラがあるが、あれはさよりの店のカステラだったのか。
「あの食堂は、この街のときわ食堂がやっているンですが、そこの女将の美砂は、わたしと幼なじみ。時々、一緒に食事をすると、彼女が役所のいろんな出来事を教えてくれるンです」
おれは、人妻とも知らず、その食堂のレジをやっている美砂を、一度だけ食事に誘ったことがある。
おれは恥ずかしさの余り、顔が赤くなった。おれがデートに誘ったことも、さよりは美砂から聞いているに違いない。
「高間さん。わたし、まだ、あなたのことは忘れていません。こんどのことでは、いろんな形でお礼ができると思っています」
おれの胸のなかに、急激に熱いものがこみあげてきた。
養子縁組は絶対に壊してやるッ。こんな高揚感は、久しぶりだ。
その日の夕刻。
役所を出てからバスに乗り、約束のホテルに行こうとしていると、混雑しているバスのなかを、他の乗客をおしのけ、強引にやってくる者がいる。
無視していると、小さな声で、
「係長……」
可奈だ。どうして、だ!
彼女も食事に誘ったことがある。一度だけだ。しかし、デートの間、終始、面白くなさそうな顔をしていた。おれにとっては高すぎる寿司を食べながら、おれの冗談にニコリともしなかった。
食事の後はホテルのバーに誘うつもりでいたが、結局寿司屋の外で別れた。
おれが、妙な顔をしていると、
「係長、きょうのことはよくないですよ」
「きょうのこと?」
おれはすぐに気がついた。
この日、退院したさよりの父が役所に来て、窓口で養子縁組届を提出したのだ。
おれは、不受理の申出があることを理由に、いまだ戸籍上の処理はしていない。
「何の話かわからないけれど、ぼくは次の停留所で降りる。よかったら、食事につきあわないか?」
可奈は、こっくりと頷いた。彼女の狙いは、何か。
あの日、役所の応接室でさよりと話していたことを、盗み聞きしていたに違いない。厄介だが、おれに金のないことは、彼女も承知している。
可奈はまだ失恋から立ち直っていない。その痛手を、おれで癒そうというのか。いや、不正を働く上司が許せず、鉄槌を下すつもりなのかもしれない。
さよりの父が申請した養子縁組の不受理を申し出たのは、さよりの父が養子にと申請している、当の愛人の女性だ。
不受理の申出は、当事者でなければできないのだから、当然のことだが、その不受理申出は、おれが、愛人の女性の名前を使い、不正に作成した。役所にバレれば、クビになる。
「今夜は、徹底的に飲むか。キミは、ぼくの味方なのだろう?」
すると可奈は、邪な目付きで、
「係長、もっといい方法があります」
「うム?」
「養子縁組の不受理申出なんかより、もっといい方法。係長ご自身がカステラ屋の養子になれるよう、養子縁組の申請をすればいいンです」
「キミ、何を言っているンだ」
「係長は、カステラ屋のお嬢さんと交際なさっていますね。結婚なさるンでしょう。結婚するなら、養子縁組までする必要はありませんね。ごめんなさい」
可奈は何がおもろしいのか、ひとりで先走っている。
「結婚はまだまだ先の話だ」
恐らく、不可能だ。おれには、まだその程度の理性はあるつもりだ。
「でも、不受理申出はすぐにバレてしまいますよ」
さよりは言った。もし、こんどの不正がバレても、カステラ屋で仕事は見つかると。
おれは、さよりのことばを信じている。役所がダメなら、カステラ屋がある、と。
「バレたら、そのときはきっばり辞めるつもりだ」
「係長。庭伊課長に、もみ消させればいいンです」
「キミ……」
「わたし、課長の秘密はいっぱい握っているから」
可奈は、おれの手をギュッと握った。
可奈は庭伊の弱みをふりかざして、庭伊をいじめたいだけなのか。しかし、同時に、それは、おれが可奈に弱みを握られることでもある。
ホテルで、さよりが待っている。
もし、さよりのことばがウソだったら、おれは……。どうすればいいンだ。
(了)
カステラ屋の娘 あべせい @abesei
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